またかよ・・・@プロローグ
とりあえず投稿した、って感じです。
まだまだ機能とか把握してないので、ご迷惑おかけするかも知れませんが、お赦しを。
(またか・・・7回目だなぁ)
俺は、今回の母であろう、満面の笑顔でこちらを覗き込んでいる妙齢の美女を見つめながら、心中で溜息をついた。
俺が記憶している最初の人生は、太陽系第三惑星日本国首都圏にて、17年で幕を閉じた。
その後、所謂ふぁんたじぃ世界に転生する事6度。
よく聞く神様の気まぐれとか、召還されたとか、そういう手順は一切無く、毎度新生児からのスタートである。
ただ、前世の記憶が鮮明である事と、能力が半端無く高い点を除けば、ただの赤ん坊として、新しい世界に登場するわけだ。
最初こそ戸惑ったものの、もう慣れた。
最初の転生では、ガキの頃から神童だの天才児だのと呼ばれるようなヘマをやった。
そりゃ前世の知識やらハイパーな能力やらを隠すような機転も経験も不足していたからだが。
当然の如くお偉いさん達に目を付けられ、魔王討伐とかやらされた。
まー、強制召還とかで無理やり連れて来られた異世界ってわけぢゃ無く、あの世界で普通に生まれちまったんで、救ってくれと言われりゃ救うしか無いわな。なんせ自分の居る世界なんだし。
まー王女GET(兄貴の王子が次期国王)して逆タマ乗って、名宰相とか讃えられて大往生したから、悪くない一生だったろう。
んでまた転生しちまって驚愕したわけだが・・・。
二回目以降も、大体似たようなもんだった。
前世の記憶、チートスペック。
だが違いも有ったのだよ、明智君。
まず世界が違う。ふぁんたじぃなのは一緒だが、前回とは完全に別の世界。
言うなれば、DQ世界からモンハン世界に行ったようなもんか。
まー基本ふぁんたじぃなんで大差は無いんだけどね。
もう一つ大きな違いが有った。
前世、つまり最初の転生世界で覚えた技術がそのまま使えるのだ。
前世で苦労して学んだ魔法とか剣術とか、そういった技術を持ったまま生まれたのだ。
まー流石に、成長するまで身体は赤ん坊やらガキンチョなんで、とてもじゃないが危な過ぎて使え無かったけど。
初回の失敗を踏まえ、二回目以降は極力目立たないように心掛けた。
能力は隠し、知識は披露せず、平々凡々たる小市民に成りきろうとした。
経験者は語るのだ。そして俺は基本面倒臭がりなのだ。
だが無情にも、面倒事は必ず起こり、そして俺は必ずソレに巻き込まれた・・・。
そして嫌々渋々成行きで面倒事を解決し、大往生を遂げると・・・また・・・である。
五回目を迎えたところで、能天気な俺も流石に考えた。
何故俺ばっかり?と。
そして一つ思い当たったのだ。
最初に倒した魔王。次にやっつけた邪神。その次の・・・etcetc。
あいつらは全部『死んで無い』。
そもそも『死ぬ』のかすら怪しい。
俺は確かに奴らに勝った。
だがそれは”その世界から叩き出した”に過ぎないのではないか?
そして、奴ら、いや、アイツはまた別の世界で顕現し、その世界に害を為そうとする。
そして、アイツが現れた世界には、アイツに対抗出来る手段が無い。
何故なら、それまでそんなモノは存在した事が無いからだ。
云わば免疫が無いようなモンだ。
新種のウイルスに侵された人間と同じく、徐々に蝕まれ衰え、やがて死を迎える。
だが、アイツに侵入された世界は、ただ為す術も無く死を迎えるほどバカでもヤワでも無い。
人類が、ペストや天然痘と闘って来たように、世界もアイツと闘おうとする。
ウイルスにはワクチンを-----
そう、俺をだ。
そんな俺の考えは、6回め、つまり前回の人生で肯定された。
宿敵であるアイツによって。
色々苦労っぽい事をして、俺がアイツの目の前に立った時、言ったのだ。
「またオメェか!今度こそぶっ殺す!!」
その台詞を聞いた途端、アイツが誰なのか判った。いや、名前は忘れたけどね。
そして、何故俺がコイツと追いかけっこしなければならないのか、も。
俺の最初の人生は17年で終わった。病死でも事故死でも無い。
アイツはストーカーだった。妹に付きまとい、しつこく言い寄り、拒絶されると嫌がらせ・・・
最低なヤツだった。
見た目は結構イケメンで、成績も悪くない。俺に比べりゃムカつくほどのリア充野郎だったのに。自分に自信も有ったんだろうなぁ。
だが俺の妹には拒絶された。取り付く島も無く。断固として。完膚無きまでに。
挫折を知らなかったであろうアイツには、恐らく理解出来なかったんだろうな。
自分より数段劣る(悔しいが、多分コッチが正解・・・)自分の兄のほうが遥かに良い、って断言する妹が。
あの日、またしても妹にちょっかいを出してるアイツを見て、俺が激怒したのは当然だろ?
俺は成績はアレだったけど、ケンカはそこそこだったのだ。
アイツをぶっ飛ばし、妹を背に庇った時、腹に何かが当たった。
ナイフだった。
アイツはもう何処か狂ってたのかも知れない。
いや、元々アレだったのかもな。今となっては知る由も無いが。
「オメェが!オメェが!・・・ぶっ殺してやる!!」
ナイフは刺さったままだった。
アイツは俺を刺した途端、ナイフを手放して、少し離れて立って居た。血走った眼で俺を睨みながら。
妹が何か叫んでいたが、俺には良く聞こえなかった。
アイツが何か喚きながら、俺に突進して来た。もう正常な思考を失っていたんだろう。
でもね、それはアイツだけじゃ無かったのさ。
俺は、ほとんど無意識に腹のナイフを引き抜くと、アイツの心臓に突き立てたのだから。躊躇いも無く、ね。
憎しみ以外何も感じられない眼で俺を睨んだまま、アイツはくず折れて逝った。
そして俺も、青い空から、妹の泣き顔へと変わる視界が暗くなっていくのを感じながら、憶えている最初の人生を終えた。
・・・どういう経緯でアイツがあんな存在になったのかは解らない。
だが、アイツがウイルスであるならば、俺がワクチンであるのも肯ける。
何故なら、俺にはアイツを最初に始末したという実績があるのだから。
アイツに免疫を持たない世界にとって、俺以上の対抗策は無いだろう?
(まーたアイツとガチるのか・・・良い加減決着付けたいもんだよなぁ)
「あらあら、たくちゃん出まちたね~♪」
現世の母に、オムツ替えという、文字通り汚物まみれの羞恥プレイを強いられ、心と身体の両方で泣き叫びながら、俺はそんな事を考えていた。