表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/19

008 ライバル(?)

「この依頼書は私が先に見つけたんだから、手を離しなさいよ、このちんちくりん!」

「いえ、私のほうが先に手をつけたので、これは私たちのクエストですっ!」


 リンチェが依頼書を引っ張ると、相手も負けじと引っ張り返した。

 おいおい、あんまり強く引っ張って(やぶ)くなよ?


「はんっ、あんたたちみたいな三流クラブには、もっと安くて地味できつーい仕事のほうがお似合いよ! ギルドに仕事をもらって外の草でもむしったら?」

「ぬぬぬ……それを言うなら、アムルのクラブだって同じようなものでしょう」

「なっ……! そんなことないわよ、この間だって井戸に潜むお化けカエルを退治したんだから!」

「ほう、中々やりますね……ですが、炭鉱荒らしモグラを倒した私たちに勝てるとでも?」


 二人の間にバチバチと火花が散る。

 なんだこの低レベルな言い争いは。


「なぁ、誰なんだこいつら? 知り合いか?」


 隣にいるユルナに小声で(たず)ねる。


「あはは……まあ一応、わたしたちのライバルって設定だよ」

「そこ、設定とか言うな! ……ん?」


 赤髪の女が、ふいに俺へ視線を向けた。


「うん? んん……?」


 なんだ?

 人のことをじろじろ見てきやがって。


「あんたたち、いつの間に仲間なんか増やしたの?」


 すると赤髪の女はふっと髪を払った。


「ま、いいけど。私はアムル、このスカーレット団を率いる冒険者よ!」


 どんっ、と胸を張る。

 その瞬間、彼女の胸がたゆんと揺れた。


「いい? 私の名前をよーく覚えておきなさい! ゆくゆくは世界を股にかける超有名人になるつもりなんだから!」

「さすがですキャプテン!」

「俺たち一生付いていくっす!」


 背後にいた男二人が囃し立てた。

 たった3人しかいないクラブで姫気取りとは。ずいぶん大物ぶるじゃないか。


「ところであなた、名前は?」


 赤髪の女、アムルが()いてくる。

 仕方なしに、俺は名を名乗った。


「ふーん」


 すると彼女はにやっと笑う。


「ついでに冒険者ランクも聞いていいかしら? ブロンズ? シルバー? まさかゴールドなんてことはないかしら?」


 俺はさきほど受け取ったライセンスを見せた。


「一応、プラチナランカーなんだが」


「…………」「…………」「…………」


 沈黙(ちんもく)

 一瞬、周囲の空気が止まった。


「「 えぇぇぇぇっ〜〜〜!!?? 」」


 ギルド中に響きそうな勢いで声が上がった。

 近くで酒を飲んでいた冒険者たちが、ぴたりとジョッキを止めた。

 アムルに至っては、口を半開きにして固まっている。

 そんなに驚かれるようなこと言ったか?


「あ、ああああなたそれ、王都クラスの大冒険者じゃない! そんな実力者だったの!?」

「ライノさんっ、ライノさんっ、プラチナランカーだったんですかー!」

「すごい先輩! お嫁さんにして! うそうそ半分冗談だって♪」

「…… 意外」

「いや、プラチナぐらい探せばそれなりにいるだろ」


 正直な感想を口にする。

 すると、アムルの肩が震え始めた。


「ふっ……ふふっ……そう、プラチナランカーまで雇ってくるなんて、やっぱりあなた、私たちを本気で潰そうって魂胆(こんたん)だったのね……。いいわ、たしかに勝率は低くなったけれど、受けて立とうじゃないの!」

「キャプテン! しっかりしてください! 威勢(いせい)はいいですが、脚が子鹿みたいに震えてます!」

「だが、そんな(おび)えてるキャプテンも可愛い!」


 なんかすごく誤解されてる気がするんだが……


邪推(じゃすい)しすぎだ。俺はべつに何もしない」

「ほ、ほんとぅ……?」

「ああ。それにプラチナランクって言っても、最近まで休職してたからな。ランクなんてただの肩書きでしかない」


 しばらく実戦もなかったし、腕も多少は落ちてはいるだろう。

 ここで経歴をひけらかして威張(いば)る気にもなれない。


「そうなの……?」


 すると、アムルの表情がみるみるうちに上機嫌(じょうきげん)に変わった。


「ふっ、ふふっ……あははっ! なんだ、そうなんだ。やっぱり見せかけだけなのね! やーいこのへぼ剣士! ランク詐欺師! 見かけ倒し! やっぱりあんたなんか怖くないわ!」


 さっきまでのしおらしい態度はどこへやら。

 周囲に高笑いが響く。


「あのー」


 ふと、横から声が飛んできた。

 さっきの受付嬢だった。


「依頼をどちらが受けるのか揉めているようでしたので、一応確認ですが、こちらのクエスト、人数制限はありませんよ?」


 それを聞いたアムルがこちらを見て、そして不敵に笑った。


「ちょうどいいわ。この『ネズミ捕り』で勝負しましょう!」

「勝負?」

「そう、クラブ対抗戦よ。一匹でも多くネズミを狩った方が勝ちね」


 有無を言わさない勢いでアムルは言い放った。


「ちなみに勝った場合はどうなるんだ?」

「そうね……勝者は負けた方から何でも言うことを一つ聞いてもらえる、とかでいいんじゃない?」


 だとよ。

 俺はちらっと、リンチェの方を見た。


「あいつはあんなこと言ってるが、どうする? こんな安い挑発に乗る必要なんてない気がするが」

「いいでしょう、その勝負受けて立ちます!」


 やるのかよ。

 バチバチバチッ――!

 リンチェとアムルの間に、再び熱い火花が散った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ