82話 第2部エピローグ 奉仕国家クローン施設
奉仕種族・ペアリング後変化報告書
作成者:奉仕国家科学局
担当者:リーヴ
調査対象:奉仕種族(女性)と地球人男性のペアリング
調査期間:ペアリング成立~第二世代誕生まで
1. ペアリングによる身体能力・認知能力の向上
調査の結果、ペアリングによる能力向上は事実であることが確認された。
筋力:平均 +15%
持久力:平均 +15%
認知反応速度:平均 +15%
備考:個体差あり。能力上昇のメカニズムは未解明。引き続き調査継続。
2. 喪失感・飢餓感の緩和
従来、奉仕種族は常に「喪失感」や「飢餓感」を抱えていたが、ペアリングによりこれらが著しく緩和されたことが報告される。
ご主人様からの感謝の言葉、
身体的・精神的・性的要求に喜びや快感を感じる個体多数
喪失感・飢餓感は消失し、男性に仕えたい・役立ちたいという欲求が強化
ご主人様の愛情が直接、精神安定に影響することを確認
考察:過去の奉仕種族の反乱は、
ご主人様からの愛情の喪失が原因だった可能性が高い。
この心理的満足感を司る器官は存在しないが、便宜上
「見えない胃(第二の胃)」と命名する。
3. ペアリング解除後の経過
不慮の事故、寿命、病によってご主人様が他界した場合、ペアリングは解除される。
喪失感・飢餓感は再発するが、以前のように精神崩壊することはない
再ペアリングは希望すれば可能だが、多くの奉仕種族は一人のご主人様に仕えることを望む
ご主人様に家族がいれば世話を、いなければ奉仕国家に戻り若い奉仕種族の教育や国家運営に協力
4. 奉仕種族と地球人男性との子供
自然繁殖の場合、第二世代は男児・女児ともに生まれる。
男児:Y染色体を継ぐため、ほぼ地球人と変わらない
女児:母親の奉仕種族能力を継ぐ傾向
父親を遺伝子やY染色体で識別
祖父母の匂いや特性で父親との血縁を認識
母親より父親の愛情を強く求める
知的発達
女児は男児の約1.2倍の速度で成長
クローン生成の奉仕種族の子供に比べて早熟であり、地球人との交配により強化された可能性あり
メモ:我々はサ〇ヤ人なのかもしれない(笑)
5. 教育上の考察
女児は母親の奉仕種族能力を継ぐため、早期に家庭内での力の使い方や奉仕種族の教育を行う必要あり
民族教育や価値観の指導を怠ると問題発生の可能性大
民族教育の放棄した手前強制はできない。
各国に委ねるしかない。
各国と情報を共有し、
奉仕種族専用教育プログラムの導入を要請したほうがよい。
フリーの奉仕種族への教育派遣も考慮すべき
備考:ペアリング能力の遺伝は思春期まで観察しなければ判定不可。要観察。
6.総括
ペアリングは身体能力・精神状態・社会的適応能力を大幅に向上
第二の胃による“愛の摂取”が奉仕種族の幸福感に直結
再ペアリングは個体の意志に依存
次世代への能力継承は男児は父親型、女児は母親型
長期観察とDNAレベルでの追跡が今後の重要課題
「リーヴさん、この子たち……本当にご主人様の愛で変わるんですね」
「ええ。見えない胃が満たされるって、文字通りこういうことなんですよ」
「第二世代の女の子たちも……将来どうなるのかしら」
「焦らず見守るしかないわ。でも……
スーパー奉仕種族の誕生も夢じゃないかもね」
■クローン生成所の静寂
クローン生成所の機械音がゆっくりと止まり、施設内は静寂に包まれた。
アリスは深く息をつき、そっと手を組む。
「とうとう、この施設も停止するときが来たのですね……」
セイラは静かに頷いた。
「地球人達と間に繁殖も可能だとわかった以上、もう生成する必要もないだろう」
マーヤは肩をすくめ、少し笑う。
「今でもぎょうさんうちらはおるんやし、しゃあないやろ?」
アリスの瞳には、ほんの少しの寂しさが浮かぶ。
「長い間、私たちを生き延びさせるために働いて頂いたのに……やっぱり、寂しいです……」
その時、アーシグマ・プライムが柔らかく微笑んだ。
「やっと悲願のご主人様を見つけたんだもの。リアスちゃん達も喜んでるわよ~」
アリスはコールドスリープの装置を見つめ、ひそやかに呟く。
「コールドスリープから目覚めることは……できないのでしょうか……」
アーシグマ・ノワールが肩をすくめる。
「セラちゃんが万が一にも目覚めたら、安定したクローン生成に支障が出るから解除コードを作らなかったのよねぇ……」
プライムも微笑みながら続ける。
「セラちゃんも頑固な子だったしね~? 目覚めるのは明日か、100年後か……まさに神のみぞ知るってことね~?」
クローン生成所の最後のライトが消え、空調音だけが微かに残る。
アリスは深く頭を下げた。
「始祖様……長い間お疲れさまでした」
プライムがふと顔を上げ、微笑む。
「あら……?」
セイラが首をかしげる。
「どうした? プライム」
プライムはにっこり笑って言った。
「なんとなく、リアスちゃんの顔が笑ってるように見えたのよ~」
マーヤが首を振る。
「んなわけないやろ? 眠ってるんやろ?」
プライムは少し笑って、目を細める。
「そうよね~? でも、きっと喜んでるに違いないわ~」
静寂の中、施設の奥に眠る数千のクローンたちが、未来への希望と共に安らかに眠る。
人間と奉仕種族、そしてクローンたち。
新しい世界は、今、静かに動き出そうとしていた。
終わりではなく、これから始まる物語の序章として――。




