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66話 ご祝儀爆弾、世界を駆ける!(改)

――奉仕国家による「半年分の債務帳消し」と「子育て全額支援」発表から、

一週間。


 地球は、静かに狂喜していた。


 いや、“狂喜乱舞”と言っていい。

 久しぶりに、一般人が「景気がいい」と感じていた。


 スーパーのレジで主婦が笑い、

 通勤電車でサラリーマンがスマホを見て小さくガッツポーズ。


 ――「なんか最近、仕事の依頼が増えてきたな」

 ――「新卒の求人、“増員募集”って久しぶりに見たよ!」


 財布の中身よりも、空気が軽い。

 街には笑顔が増え、ニュースサイトのコメント欄には

 《生まれて初めて好景気を実感してる》《これが“本物”か》

 の文字が躍った。


 ――久々の“庶民の好景気”だった。


 そして、各国の政治家と官僚たちは真っ青になっていた。


 ――奉仕国家が、やってしまったのだ。

 貿易債務の半年分を帳消し。

 教育・子育て支援の全額援助。

 さらに高齢・障碍男性の移住支援まで。


 世界中の財務官僚が頭を抱える中、

 街の喫茶店では主婦たちがコーヒー片手に笑っていた。


 「ねぇ、税金安くなるって本当?」

 「知らんけど、議員さんが“緊急減税会議”って騒いでたわよ」


 ――政治は単純だ。

 国民が笑顔になれば、議員は動く。

 動かなければ、次の選挙で死ぬ。


 各国は次々と“減税議論”を開始。

 日本も例外ではなかった。


 財務省の会議室では、いつものようなヤジも言い訳もない。

 なぜなら――議員にも官僚にも、奉仕種族のパートナーがついている。


 ペアリングした彼女たちは、

 夜な夜な主人の相談に乗り、

 翌朝には、反論不能な数字を叩き出していた。


 金髪ツインテールのギャル少女・ナナが、資料を指差す。


「この前ご主人が言ってたこの案ね~三年でアゲアゲ黒字化オッケー♡」


 ピンクのショートカットのアヤが続く。


「ここ、ご主人君が悩んでたとこ!

 削っても影響軽いよ~やっちゃえやっちゃえ♡」」

 

 薄桃色の髪に、ぴょこんと揺れるアホ毛のルルナが元気よく言った。


「そっちは無駄ですね!

 バッサリ切っちゃいましょう!!」


 官僚側についている奉仕種族の少女たちも、負けていない。


「ナナさんたちの言う通り、かなり甘く見積もっても五年で黒字化できます」


 別の少女が、淡々と付け加える。


「反論してあげてもいいけど……天下り先のため、だよね?」


「まさかまさか!!そんなダサい理由でやるわけないでしょー?」


 官僚にも、プライドはある。

 ペアリングした彼女の前で、

 情けない大人でいるわけにはいかない。


 柵も、忖度も、しがらみも切り捨て、

 彼らは“圧力に立ち向かう側”に回った。


 結果、罵倒も空転もなく――

 議場は現実的で建設的な議論の場へと変わっていた。


 与党議員が頭をかきながら呟く。

 「昔は予算委員会って地獄だったけど、今じゃ仕事が進む進む……」


 テレビ中継を見たアナウンサーがぽつり。

 「……なにこれ。議会が機能してる」

 コメンテーターが苦笑して言う。

 「つまり彼女たち――“奥さんたち”の内助の功ですね」


 国会中継のコメント欄が賑わう。

 《今日の国会、やたら静かじゃね?》

 《いや、穏やかで見やすい。てか全員デキる男に見える》

 《奉仕種族がいると国会が回るってどういうことだよ……》


 街もまた、変わり始めていた。


 教育・子育て支援の無償化により、閉校していた学校が再開。

 子育て支援金の余裕で、マイホームを検討する家庭も増えた。


 特に奉仕種族とペアリングした男性たちは、

 「家族が増える前に、もう少し広い家を」と決断するケースが急増。


 建築業界は息を吹き返し、社長の怒号が飛び交う。

 「人手が足りねぇ! 給料に糸目つけるな!」

 「三食付き・寮完備・ボーナス3回!でどうだ?兄ちゃん来い!」


 現場の親方たちは、まるでバブル期の再来に沸いていた。


 そして波は、意外なところにも――ブライダル業界。


 「奉仕種族特別法」により、重婚が合法化。

 ブライダル業界が、復活の鐘を鳴らした。


 「もう一回、式やりましょう!!」

 「え、二人分?」

 「三人です♡」


「またウェディングドレス着れるなんて最高!!」

「そっちが本音だろ!!」


 ――そんな会話が日常になり、

 “ウェディング三段重ね”現象が各地で報告された。


 白いドレスが二着、三着並ぶ結婚式。

 新郎一人、花嫁二人。

 新郎一人、花嫁三人。


 司会「それでは誓いのキスを」

 新郎「……順番どうしよう?」

 会場「はははははっ!!」


 「これ、放送できるの?」とざわつくCMスタッフ。

 だが放送された。

 再生回数は億単位。世界は笑って祝福した。


 夜、カフェのテラス。

 街の明かりが反射して、ヴィオラの髪が紫色に光る。


「ヴィオラ、話があるんだ……」


「なによ?」ツン気味の声。


「えっと……その……」


「相変わらずはっきりしないわね!! 早く言いなさいよ!!」


「ご、ごめん……あのさ、僕たち、子ども、生まれるだろ?

 お腹も大きくなるから……」


「だから! 何よ!!」


「ぼ、ぼ……僕と、結婚してください!!」


 沈黙。


「……だ、だめかな……?」


「ダメなわけないでしょ!! バカ!!」


 ヴィオラが勢いよく抱きつく。

 「や、やったぁ!!」と慎が叫ぶ。

 周囲の客が拍手。


「アンタ……ここ数日そんなこと考えて、

 顔青くしたり赤くしたりしてたの?」


「だ、だってヴィオラ、派手なの嫌いでしょ!?

 断られるかと思って……」


「ほんっと、バカ慎ね!」

 そのまま頬を押し当てて笑う。

「断るわけないでしょ!!」


 ――二人の未来は、まぶしいほどに明るかった。


 雇用増加。賃金上昇。消費拡大。

 経済学者が口を揃えて言う。


 「これは、戦後最大の好景気だ」


 一方、スタジオの評論家たちは分析する。


 「奉仕種族は長い間、男性とのペアリングができず寿命を縮めてきた。

  繁殖もできず、滅びを恐れていた。

  ――でも今、彼女たちは“救われた”んだ。

  喜びが爆発して当然だろう」


「……でも、爆発しすぎじゃない?」


 スタジオ内が笑いに包まれる。

 コメンテーターが肩をすくめて言う。


 「まぁ、“幸福の暴走”ってやつですよ」


 司会者が微笑む。

 「でも、それくらい嬉しかったんですよ。

  “生きててよかった”って、心から思えたんです」


 奉仕国家のご祝儀とお礼の爆弾――

 それは、世界を一気に“未来へ押し出した祝砲”でもあった。


 夜の街を歩く慎とヴィオラ。

 ビルのネオンには、奉仕国家のニュースが流れている。


「……ねぇ慎。世界って、思ったより優しいのかもね」


「うん。だって、君がいるから」


 空を見上げれば、広告ドローンが漂っていた。

 【#ありがとうで世界が変わる】


 二人は笑い合い、夜風に包まれて歩き出す。


 ――笑顔と景気が、同時に爆発した夜だった。

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