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62話 地球、ご祝儀騒動 ― 債務帳消しで世界が回り出す日

翌朝、世界はいつもよりずっと騒がしかった。

奉仕国家ノア・プレートが“半年分の貿易債務を帳消し”という、

前代未聞のご祝儀をぶっ放したからだ。


テレビもネットもSNSも、その話題一色。

誰かが「神様が財布を落とした」と言い、

別の誰かは「これは人類版・お年玉」とつぶやく。

だが経済番組のアナウンサーだけは、青ざめた顔で叫んでいた。


「えーっと……全世界で換算すると、約七京ドルが吹っ飛びました!

 え、これホントにやるんですか!?」


財務省の廊下では、朝からコーヒーが足りなくなっていた。

課長がデスクに書類を叩きつける。

「半年分の債務帳消し? 冗談だろ!?

国家予算が丸ごと浮くってことじゃないか!」

部下が真顔で言う。

「……浮いた分、保育所建てましょうか?」

「お前、頭いいな。採用!」


そんな漫才みたいな会議が、

地球上のあらゆる省庁で同時に繰り広げられていた。


──ニュース速報。各国財務相、全員笑顔で緊急会談。

アメリカ財務長官「こんなの拒否する国があったら見てみたいね」

EU代表「神は存在した」

日本「……まぁ、前向きに検討する(※ほぼ決まり)」


地球が一斉に“臨時ボーナス”を貰ったかのような、空前の熱狂だった。


街も浮き足立っていた。

SNSでは《#奉仕国家ありがとう》《#神嫁国家》《#うちの孫宇宙産》など、

混沌のトレンド祭り。

昼のワイドショーでは、真面目なコメンテーターが力説する。

「奉仕国家はね、経済的には完全自己完結型。

つまり、金を使うしかないんですよ!」

隣のタレントが笑う。

 「えー! じゃあ私も奉仕国家行きたい〜!」

スタジオ全員「行けるかー!」


一方、各国政府は頭を抱えていた。

重婚、国籍、教育権――どれも今の法律では扱いきれない。

だが、“半年分の債務帳消し”という札束の神威には、

誰も逆らえなかった。


官僚の一人がつぶやく。

「……結婚相手が宇宙人って、戸籍どう書くんだ?」

「“奉仕種族(仮)”でいいんじゃないっすか」

「雑ぅ!!」


だが現場はもっとリアルだ。

奉仕種族とペアリングしていた男性たちは、

すでに“新しい家族”の準備に追われていた。

あるおじさんはインタビューで嬉しそうに言う。

「俺の息子のところに来てる奉仕種族の子が妊娠したって言うんだよ。

 いやあ、涙出たね。まさか宇宙から孫ができるとはな!」

記者が笑いながら返す。

「おじいちゃん、宇宙からの贈り物ですね!」


その頃、奉仕国家ではマーヤが腕を組んで豪快に笑っていた。

「使わんかったら金なんか腐るだけやで! どーんとご祝儀じゃ!」

隣でアリスが苦笑する。

「……まあ、確かに通貨の循環は大事ですね」

レオナがうなずく。

「ハハハ! 地球人の政治家たち、今ごろテンパってるよ!」


テンパっているのは事実だった。

国会では夜通しの緊急討論が続いていたが、

野党議員が言葉に詰まった。

「だが倫理的に問題が――」

「半年分の債務帳消し」

「……賛成です」

拍手。


翌日、各国議会は一斉に“奉仕種族特別法”の審議を開始。

内容は、

・奉仕種族との婚姻の法的承認

・奉仕種族との子供の国籍付与

・教育および医療の無償化

――まるで人類が急遽アップデートされたかのようなスピード感だった。


宗教界だけは抵抗を見せた。

ある中東の聖職者が言う。

「人が造った存在と人が子をなすなど、神への挑戦だ!」

しかし翌日、その国の財務大臣がにっこり会見した。

「……挑戦、受け入れます」


街角では、若い女性の間にも複雑な空気が流れていた。

「ねぇ、奉仕種族ってスタイルいいんでしょ?」

「てか、子供産めるってマジ? もう勝ち組じゃん」

「……てか、あの子ら全員“奥さん”だよね? 男ってほんとちょろい」

笑いながらも、どこか引っかかるような視線。


奉仕国家のニュース映像で、マリナが微笑みながら言う。

「ご主人様たちは、私たちを家族として受け入れてくれたわぁ。

 これからもよろしくお願いねぇ。ウフフ」

その声が、妙に人間臭く、温かかった。


世界経済は即座に反応した。

「奉仕関連株」――教育、言語AI、医療、住宅、ベビー用品。

どの市場も上がりっぱなし。

記者が叫ぶ。

「新しい時代の幕開けです! 人類史上初、“宇宙嫁特需”です!」


だが、そんな中で一部の政治家だけが冷静だった。

「半年分の債務帳消し……それは経済的救済じゃなく、

  “恩義”の契約だ。地球は、奉仕国家に借りを作った」

その警告を、ほとんどの者は聞き流した。

なにせ、笑顔と金が同時に届いたのだ。


そして、国連臨時総会。

議題は「奉仕種族との子供の国籍承認および婚姻法改正」。

採決は――賛成149、反対3、棄権ゼロ。

拍手が鳴り響く中、アーシグマ・プライムが報道席でひと言。

「地球の皆さん、ご祝儀、ちゃんと受け取ってくれたのね~♡」


その瞬間、ノア・プレートの上空を巨大な光の帯が横切った。

まるで世界に向かってウインクするように。


――地球は今日、宇宙から“ご祝儀”をもらった。

混乱も、笑いも、感謝も、全部ひっくるめて。

新しい時代の、幕が上がる。


リュナがその様子を見て、小さくつぶやく。

「……結局、人間ってやつは、愛より金に正直だな」

レオナは肩をすくめて笑った。

「でも、その金が“愛”に変わる瞬間を、僕は信じたいね」

マーヤがニヤリと笑う。

「せやなぁ。ほな次は“七五三ご祝儀”でも企画しよか?」


ノア・プレートの空は、笑い声で満ちていた。

地球の未来は、もしかすると――意外と明るいのかもしれない。

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