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53話 奉仕国家、国連加盟す――そして「神の特許」時代へ(改)

大量派遣による混乱が、ようやく世界から薄れ始めた、

ある日のことだった。


太平洋に浮かぶ人工島――

奉仕国家ノア・プレート


その国が、この日、正式に国連への加盟を発表した。


記者たちが詰めかけた会場の空気が、ひと瞬で凍りつく。

扉が開き、二つの影が現れた。


黒髪を優雅に結い上げた和風美人、シズク。

そして、金色の長髪に柔らかな笑みを浮かべるマリナ。


二人が並んで歩み出ると、照明が彼女たちの輪郭を縁取る。

その姿はまるで、異星の神話から抜け出してきた女神のようだった。


カメラのフラッシュが嵐のように降り注ぐ中、

マリナが胸に手を当てて微笑む。


「地球の皆さま、わたくしたちを受け入れてくださって――ほんとうに、

 ありがとうございます」

 柔らかく、それでいて凛とした声。

 その一言で、会場全体が静まり返った。

 言葉ではなく“心”で伝わる何かがあった。


 会場が、自然と静まり返る。


「ここに、奉仕国家ノア・プレートの設立を宣言いたします」


 拍手が巻き起こる。

 やがてそれは嵐のような歓声となり、

 世界中のニュースが同時にその瞬間を伝えた。


 ――“地球と奉仕国家、友好の幕開け”。


 加盟を機に、《ノア・プレート》は科学技術の特許輸出を解禁。

 だが、マリナが微笑みながら言い添える。


 「軍事関連技術の提供は、お断りさせてもらうわねぇ?ウフフ」

 一瞬の沈黙。


 続いて、シズクが肩をすくめる。


 「だってあんたら、すぐ“戦争や”言うやろ?」

 シズクが肩をすくめる。

 「せっかくの大事なY遺伝子、減らされるんは堪忍やからねぇ」


 軍関係者は沈黙した。

 だが一般人の拍手は鳴り止まない。


 医療・農業・環境・エネルギー。

 平和的な技術の提供を受けた国々は、まるで夜明けを見たように歓喜した。


 一方で、軍事転用を狙う勢力も動き始める。

 しかし――奉仕国家の技術はすべてブラックボックス化されていた。


 分解しても、中身は謎の物質。

 模倣しても、起動すれば爆発、融解、沈黙。


 やがて各国の研究者たちは同じ言葉を漏らす。


 > 「神の工学には、手を出すな……」


 その裏で、医療分野では歴史的な革命が起きていた。


 クローン技術を応用した再生医療。

 失われた四肢を再結合し、神経まで再構築する技術。


 それが難しい場合は、機械義肢の移植。

 金属と生体が完全に融合し、まるで生まれ持った手足のように動く。


 ただし。


 それが“完全”に機能するのは、奉仕国家の内部だけだった。

 科学レベルの差は、あまりにも大きい。


 それでも希望はあった。


 奉仕国家は、男性患者を無償で受け入れ、治療を施した。

 当然、女性たちの反発は起きた。


 だが各国は、

 女性向けの新医療技術を保険適用・優先受診とすることで、

 なんとか均衡を取った。


 「女性にも恩恵がある」


 その事実が、社会を落ち着かせていった。


 医療機関は、必死に研究を重ねる。


 特許料を支払えば、誰でも学べる。

 奉仕国家は、知を惜しまなかった。


 ――医療の新時代。


 それは、確かに始まっていた。


 さらに、彼女たちが公開した“長い旅の記録”は、

 宇宙・古生物学の学会を揺るがせた。


 奉仕国家の「航行記録データ」。

 そこには、未知の星々と生命のいる惑星、

 資源に満ちた衛星群の記録が詰まっていた。


 「宇宙の進化の地図が手に入った!」

 「これは……地球の失われた系統と一致している!」

 「いや、神話の生物そのものだ!」


 映像に映るのは、恐竜を思わせる巨大生物、

 翼を持つ昆虫、見たこともない森の景色。

 研究者たちは歓喜と混乱の中で叫んだ。


 だがその頃、ノア・プレート本部では――。


 「いやぁ、儲かりまんなぁ~」

 マーヤが、満面の笑みで言う。

 「ほんまやねぇ~。もう笑い止まらんわぁ」

 アーシグマ・プライムが、うんうんと頷く。


 「もうちょっと真面目にしてください」


 呆れたようにため息をつくアリスが、ホログラム画面を軽く叩く。

 そこには“宇宙考古学チームからの謝礼データ”がずらりと並んでいた。


 「これ、全部“研究支援金”って名目ですけど……実質チップですよね?」


 「ええやんかぁ~。文化交流やで?」


 「……はぁ。ここだけは、いつも通りですね」

 アリスは肩を落とす。


 アリスのぼやきに、マーヤとアーシグマは顔を見合わせて笑った。


 「そらそうやろ! 平和な証拠やで♡」


 ノア・プレートの空に、穏やかな笑い声が響く。

 異星と地球が、ようやく並んで歩き出した証。

 “平和の音”でもあった。

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