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51話 奇跡の狙い――レオナの秘密

会議が終わり、ノア・プレート本部の廊下は静まり返っていた。

昼間の喧騒が嘘のように消え、遠くの機械音だけが規則正しく響いている。


そんな中を、レオナは上機嫌で口笛を吹きながら歩いていた。

まるで何かいいことでもあったかのように、軽やかにステップを刻む。

廊下の光が彼の笑顔を反射し、まるでそこだけ空気が暖かくなるようだった。


――そのとき。


廊下の先、壁にもたれかかり、腕を組む影が一つ。


「やぁ、リュナ。こんな時間にデートの誘いかな?」

レオナの冗談に、リュナは短く返す。

「よぉ。」

いつもの気だるげな声が、静かな廊下に響いた。


「で、何してるんだい? もしかして僕のこと、待ってた?」

「……ああ。おめーに聞きたいことがあったからな。」


その一言に、レオナの口元がにやりと歪む。

“面倒くさい質問”の匂いを感じたらしい。


「ハハハ、聞きたいことって何かな?」

「僕の秘蔵HENTAIコレクションのことかな?」


「とぼけんなよ。」

リュナの眉がピクリと動く。

「“奇跡”って言葉、あれが狙いなんだろ? 本当の意味を教えろよ。」


レオナは肩をすくめて、困ったように笑う。

「リュナ、君は僕がまた適当なこと言ってるとは思わないんだね?」


「思うわけねーだろ。俺はガキの頃からおめーを見てきたんだ。」


「アリスたちを煙に巻けても、俺は巻けねえぞ。」


「ハハハ、なんのことかな〜?」

レオナはおどけてみせるが、リュナの目は笑っていない。


「おめーは“神童”って呼ばれてたんだろ? 昔の話だがな。」


「そんなやつが、思いつきであんな発言するわけねぇ。」


「全部、狙ってやってるんだろ。」


――“神童”。


その言葉に、レオナの笑みが一瞬止まった。


「ハハハ、それは子供の頃の話じゃないか。」

「そうだな。」

「でもいつからだ? おめーは“バカ王子”なんて仮面を被るようになっちまった。」


「……気づいていたのかい?」

「たりめーだろ。」


しばしの沈黙。

そして、レオナはまた笑う。だが、さっきのような軽さはない。


「ハハハ……まったく、君には敵わないな。」


「派遣の件もそうだ。あれ、全部仕込みだろ?」

「“偶然の奇跡”に見せかけて、狙って起こした流れ……違うか?」


レオナの笑顔が、すっと消える。

深夜の照明の下で、瞳だけが異様に光って見えた。


「……さすがだね、リュナ。君の勘の良さは昔から変わらない。」


「で? 教えろよ。おめーの言う“奇跡”ってのは、何のつもりだ?」


レオナは少し肩を落とし、ため息をつく。

「ハハハ……しょうがないなぁ。少し話が長くなるけど、いいかい?」


「かまわねぇよ。どうせ暇だしな。」


レオナは壁に背中を預け、ゆっくりと語り始めた。


「僕たち奉仕種族が“子供を作れない”って話、知ってるよね?」

「支配種族の連中と子供を作っちまって、男が全部抹消された。」

「で、女は子供を産めないように改造された――そう聞いてる。」


「そう、奉仕種族の間ではそう言われてる。」

「でもね……それ、本当に“完全に封じられてる”と思うかい?」


「どういう意味だ?」


レオナの目が細くなる。

「僕たちは子宮があるし、生理もある。」

「母体の構造は完全なんだ。」

「なのに“子供だけ”作れない。……おかしくないかい?」


「はぁ? いや、女なんだから生理くらい――」


「違うんだよリュナ。僕たちは“造られた存在”なんだ。」

「奴ら――支配種族は、僕たちを“自分たちに似せて作った”。」


レオナの声が低くなる。


「けど、全ては似せなかった。奴らは永遠に若く、老いなかった。

 僕たちはゆっくり老いて、やがて死ぬ。

 彼らは神を気取って、僕たちに“知恵の実”だけを与えた。

 ……その結果、彼らの一部が僕らに恋をした。」


「……まさか。」


「そう、奉仕種族の“男”が、奴らの“女”を孕ませたのさ。」


「!!」


「奴らは恐れた。自分たちが創った“おもちゃ”が、創造主の女を孕ませたことをね。

 だから二度とそんなことが起きないように、僕たちを改造した。

 DNAが“絶対にマッチングしないように”――徹底的に。」


リュナは無言でレオナを見つめる。

レオナはゆっくりと手を開き、笑った。


「だけどね、そこに奴らの油断があった。」


「……油断?」


「母体の機能は残したまま、僕たちを“女だけの種族”にした。

 つまり、“いつか別の相手と結びつく可能性”を、完全には消せなかったんだ。」


リュナの眉が動く。


「おい、まさか――」


「そうさ。」

レオナは満面の笑みを浮かべた。


「地球のご主人様となら、僕たち奉仕種族にも“子供”ができるってことさ。」


静まり返った廊下に、彼女の笑い声が響いた。

それは冗談のようでいて、どこか神々しさすら感じさせる笑みだった。

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