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第4話「実地訓練♡」 地球人と初コンタクト大作戦!(改)

人工島の建設が完了して三日。

空はどこまでも青く澄み、白い波が規則正しく岸を叩く。

海は静かだった。風も穏やかだった。


太平洋上に突如出現した巨大な人工島――。

原因も目的もわからず、各国の政府とメディアが頭を抱えているその裏側で、

当の奉仕種族たちはというと。


奉仕種族の面々は、島の名前をどうするかという、空気の抜けた会議で大盛り上がりしていた。


「人工島の名前、どうする〜?」


平和そのものの空気が船団中枢に漂っていた。

若い奉仕種族ルルナたちが端末を囲んで、好き放題にアイデアを出している。


「青いお茶の間とかどう? 可愛くない?」

「パラダイスステーション! 響きが良くない?」

「それ宇宙船っぽい〜♡」


人類が混乱の渦中にあるとは思えないほどののんきさだった。


その混沌をまとめたのは、いつも通りアリスだった。


「地球の旧約聖書に“ノアの箱舟”という物語があります。

それを拝借して……“ノア・プレート”というのはいかがでしょう?」


「「「なんかカッコいい〜! 可愛いかも〜♡」」」


一斉に盛り上がる若い個体たち。

単語の扱いは雑だが、どうやら気に入ったらしい。


満場一致。人工島の名称は一瞬で決まった。


「……島の名前よりも、先にやることがあるだろう!」


セイラが額に青筋を浮かべて怒鳴った。

人工島名の会議だというのに、ただの遠足前テンションで騒いでいる若い個体たちを叱咤する。


「地球言語と文化の習得に集中しろ! わかったのか!」


「は〜い♡」


元気よく返事する若い奉仕種族たち。

だがその目はキラキラ輝きすぎており、セイラは深い不安に襲われる。


(本当にわかってるのかコイツらは……)


アリスが笑顔でフォローする。


「心配する必要はありませんよ、セイラさん。

 この子たちも、やる時はちゃんとやりますから」


「……お前のその楽観が不安なんだがな」


セイラはアーシグマへ鋭い視線を向けた。


「管理は任せたぞ。しっかり見張れよ」


「大丈夫よ〜もう〜、セイラちゃんってば過保護なんだから〜」


その軽すぎる返事に、セイラはますます眉間を押さえた。


「……だからその軽さが心配なんだと言っている……」


噛み合わない。


しかし、アリスがセイラの背中を優しく押すと、

「まあまあ。アーシグマ、後は任せましたよ」

セイラは渋々ながらも退出していった。


「さて、と」


アーシグマが両手を叩き、若い奉仕種族たちへ声を上げる。


「アリスちゃんにも頼まれちゃったし、言語習得、がんばるわよ〜♡」


「は〜い♡」


――こうして太平洋人工島〈ノア・プレート〉は正式に命名され、

若い奉仕種族たちは、まるで遊びの延長かのように元気にはねながら、学習端末へ向かっていく。


こうして若い奉仕種族たちは、地球の言語・文化学習へと突入する。


この学習が、後に地球側へ新たな大混乱を巻き起こすことになるとは、

この場の誰もまだ知らなかった。


人工島ノア・プレートの学習区画は、今日も椅子の上で足をぶらぶらさせる奉仕種族の少女たちでいっぱいだった。


教科書なんていらない。

彼女たちはただ画面を見せれば勝手に覚える。

むしろ遊んでいるだけで習得してしまう。


「えへへ~地球の言語っていっぱいあっておもしろ~い♡

ほらミント、これ“サンキュー”でも“ありがとう”でも通じるらしいよ!」


「すご~い! 地球語って自由なんだね!」


あちこちからキャッキャした声が飛ぶ。

さすが規格外の知能。

あらゆる地球言語が、まるでリズムゲームでもしているかのように次々頭へ吸収されていく。


さらに――やはり全員“女の子”だけあって、興味の方向はハッキリしていた。


かわいいもの。

きれいな服。

美味しそうな食べ物。


そして――


「に、日本のアニメ……めっちゃおもしろーーーーーい♡♡♡」


そこへ現れたのは、ショートボブでエメラルドグリーンの髪をしたミント。

漫画雑誌を目を輝かせながら抱えている。


「ねえねえみんな! 地球人ってさ!!」


「手からエネルギー弾出したり! ゴムみたいに腕伸ばしたり! 空飛んだりするんだね!!すごすぎない!?」


「えええ!? マジでぇ!?」「やばーい!!」


学習ブースは一瞬で大騒ぎ。


そこへ、おネエ系アンドロイド・アーシグマが顔をのぞかせた。


「ちょっとぉ? それは“架空の物語”よ? 本気にしないの~」


「えっ……ち、違うの……?」


ミントはしょんぼり肩を落とす。


そこに、銀髪のルナ・ヴァレンタインが首をかしげて言った。


「ねぇ……私たち、一応こうして勉強してるけどさ……

本当に地球人と“ちゃんと”会話できるのかな~? って思わない?」


「それわかる~!」とミントも同意。


その瞬間、紫髪を揺らすヴィオラ・エッジがニヤァッ……と悪い笑顔を浮かべた。


「通じるか気になるなら……試してみればいいじゃない?

セイラもいつも言ってるでしょ? “実地が大事”って」


「えっ……えええ……!」

「ど、どうやって試すの!?」


少女たちがこそこそ話していると――


「おーいアーシグマ、進捗状況を報告しろ。主力艦隊にも送る」


セイラが姿を見せた。


「はぁ~い♡ 今行くわよ~」


そう言ってアーシグマはセイラと共に部屋を出ていく。


出かける直前、セイラが鋭く振り向いた。


「ルルナ! ミント! ヴィオラ! ルナ!

 サボるなよ!!」


「は~~~い♡♡♡」


満面の笑みで返す若い奉仕種族たち。


セイラが去った瞬間――

ヴィオラは、ずるいほど綺麗な笑顔を浮かべた。


「…………チャ~~~~ンス♡」


「え、え、なにするつもり……?」とミント。


「決まってるでしょ?」


ヴィオラは指をくいっと立てた。


「みんな――行くわよ!!」


「えええええ!? どこに!?」


「通信室に決まってるじゃない!

 地球人と“直接”会話して、実地訓練よ!!」


「え、怒られるよ~~!!」


「バレなきゃ問題ないわ♡」


勝気な笑みで言い切ると、

ルルナ、ミント、ルナ、ヴィオラたちは一斉に立ち上がり、

わちゃわちゃ言い合いながら通信室へ向かって駆けていった。

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