35話 飛び立つ若き力
ノア・プレート空港。奉仕種族の少女たちは、笑顔を弾ませながら輸送船に乗り込む。
アーシグマ隊は発進の準備を着々と進め、ミントたちはきゃいきゃいと楽しそうだ。
「皆さん、良い出会いがありますように」
アリスの声は穏やかに響く。
「くれぐれも迷惑をかけて愛想をつかされんようにな」
セイラは毅然とした口調で付け加えた。
「大丈夫だよーねっ?ルナちゃん!!」
「うん!!私のご主人様、絶対見つけて離れないもん!!」
「あたしは帰ってくる気ないわよ!返品効かないって言ったしね」
「するわけないよ、僕もずっとヴィオラといたいよ」
頬を赤くしたヴィオラが「ばか!!」とそっぽを向き、慎はおろおろする。
そのやり取りを見たルビーは、微笑みを浮かべた。
「若いっていいわね~」
周囲の奉仕種族たちも、羨ましそうに目を細める。
「さあ、みんな乗って。ルビーも早く発信の準備してよ」
「はいはい、わかったわよ~うるさいわね~」
ルビーはそう言うと搭乗していった。
「行ってきまーす!!」
ミントたちも元気に手を振り、輸送船は滑るように離陸していく。
飛び去る船を見つめながら、アリスはぽつりとつぶやいた。
「寂しくなりますね…」
「そうね~。アンドロイドだけど、少し泣きたくなっちゃうわぁ」
プライムが肩をすくめる。
「ふん……やかましいのがいなくなって清々する」
セイラは上を向き、すぐにいつもの表情に戻す。
「これからは移住者の受け入れも始まる。感傷に浸ってる暇はないぞ!!」
踵を返し、背筋を伸ばして歩き去った。
「あらあら、強がっちゃって、ねぇアリスちゃん?」
「ええ、そうですね」
アリスの瞳はわずかに潤み、笑みを浮かべていた。
――宇宙。母船内の暗い部屋。
宇宙に浮かぶ母船の暗い一室。
マーヤと数人の奉仕種族たちが、淡いランプの光に照らされて集まっている。
「うまくいってよかったなぁ。例の強硬手段も使わずに済んだし、めでたしめでたしやなぁ」
マーヤがにこりと笑う。
「そうどすなぁ、無事に事運んでよかったわぁ」
小柄な奉仕種族のひとりが、控えめに頷く。
「だけどすべての国が受け入れたわけじゃねーしな。とても俺達全員を賄うには足りねーぞ?」
別の奉仕種族が冷静に指摘する。
「そないに急いでもうまくいかへんよぉ?まず第一歩がうまくいったことを喜ばんと」
マーヤは肩をすくめ、軽く笑う。
「マーヤちゃんの言う通りよぉ。奉仕種族にとっては大きな一歩よぉ。地球の偉い人も言ってたわぁ」
さらにもうひとりが穏やかに付け加える。
「まぁ、後のことはいくらでも抜け道はあるさ。蛇の道は蛇ってね♪」
最後のひとりが、くすくすと笑う。
「…あんたらもだいぶ地球文化に毒されてるなぁ?」
マーヤがにやりと笑い、薄暗い部屋の奥へと視線を滑らせる。
光が揺れる中、奉仕種族たちの影がゆっくりと消えていき、室内は静寂に包まれた。




