表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/68

33話「我々に――奉仕させろ!!」(改)

会議場。 今日は本来、地球の命運を決める――

人類史に刻まれるはずの重大会議だった。


……少なくとも、議事録の表紙にはそう書かれる予定である。


「――だから言ってるでしょ! そんな存在を受け入れたら、女性の権利が脅かされるのよ!!」


最初に声を張り上げたのは、反対派の女性閣僚だった。


「脅かされる女性の権利って何よ。ほら、言ってみなさいよ!」


即座に、別の女性が噛みつく。


「女性の社会的価値や役割が奪われるでしょ!!」


「はぁ? 何言ってんの? むしろ私たち、楽になるじゃん。 介護も育児も一人で背負わなくてよくなるし、 彼女たちのおかげで女もガンガンキャリア積めるでしょ?」


「楽になるって何!? それって男に媚びるような真似を――!」


「媚びる? 彼女たち、自分の本能で奉仕したいって言ってたじゃん。 選択の自由、奪わないでもらえますか~?」


「それとこれとは別でしょ!!」


「何が別なの? また得意の論点すり替え? 要は彼女たちに嫉妬してるだけでしょ!! 顔もスタイルも勝てないもんね!!」


「そんなことありません!! 私たちは女性の立ち居場を守るための、 高尚な意見を言っているだけです!!」


「半べそで言っても説得力ないんですけどー?」


――完全に火に油だった。


怒号、嘲笑、ため息。 言葉は刃物のように飛び交い、 論理はとっくに机の下に落ちている。


もはや話題は、


社会構造


法制度


倫理


人類の未来


などではない。


誰が正しいかでもなければ、 何が最善かでもない。


「どっちがムカつくか」 「どっちが許せないか」


世界で最も高度な外交会議場は、


**ただの「女同士の喧嘩の現場」**へと成り下がっていた。


そのときだった。


イギリス首相のオリヴァーが、 ずれ落ちかけた眼鏡を慌てて押し上げながら立ち上がる。


「き、君たち、やめなさい! ここは落ち着いて話し合いを――」


言い終わる前だった。


「うるさい!!」


鋭い一喝。


「はぁ? あんたらの味方してあげてるのに、何文句言ってんの!?」


完全な流れ弾だった。男たちは即座に沈黙。 議場は女性たちの舌戦で揺れ、怒号が飛び交う。 テレビクルーもネット中継班も、息を飲むしかなかった。


そんな中―― ただ一人だけ、場の温度と無縁の涼しい声が響いた。


「あらあら、元気があってよろしいわねぇ」


フランス大統領、エミリーは、 騒然とする議場をよそに、優雅に紅茶を傾けていた。


「奥様ぁ、この紅茶どうかしら~? 地球に来てから、自家栽培した茶葉なのよ~♡」


声をかけたのは、アンドロイド――ノワール。


「あら、これ……あなたが栽培しているの?」

エミリーはカップを鼻先に寄せ、ふっと目を細める。

「香りも味も上品で、素敵ねぇ。お土産に、少しいただけないかしら?」


「いいわよぉ。色々育ててるから、好みの茶葉があったらプレゼントしちゃう~」


「あら嬉しい。ノワールちゃん、いい子ね?」


「奥様、あたしアンドロイドだから人間じゃないのよぉ?」


「あらあたしとしたことが失礼なこと言ってごめんなさいねぇ?」


「奥様とあたしの仲じゃなぁい♡」


――議場の修羅場とは、完全に別世界。


その様子は当然、世界中に配信されていた。

『大統領仲良くなりすぎwww』

『空気違いすぎて草』

『オカマとママ友感すごいwww』


バラエティ班では、ミントたちや慎、ヴィオラが和やかに取材に応じる。

マーヤはベンチに座り、彼らを監視しつつ、イライラするセイラを観察していた。


「セイラ……そろそろ動きそうやなぁ」

思わずニヤつくマーヤ。


そして―― 場面は、再び会議場へ。


「うちはねぇ、アリスちゃんみたいな方に来てほしいわぁ」

エミリーが、のんびりと言う。

「うち、子供いないから。娘ができたみたいで、楽しそうですもの」


「ご希望に添えるかは分かりませんが……」

アリスは丁寧に微笑んだ。

「奉仕種族は、みんな良い子ですから」


「良い子だけど、元気すぎるのが困るところよね~?」

ノワールが肩をすくめる。


「あら、元気なのはいいことよぉ? アリスちゃんも、ヴィオラさんも、とっても良い子だもの」

エミリーは朗らかに笑う。

「うちの旦那に来てくれる子も、きっと良い子よ」


会議場の混乱は、 彼女たちの間には一切届いていなかった。


アリスは、ふと違和感を覚え、

セイラへ視線を送ろうとした――その瞬間。


「――黙れ!!!」


一喝。会議場が瞬時に静まり返る。

セイラの瞳は氷のように光っていた。


「いつまでもダラダラと、くだらん議論を続けおって……」

低く、鋭い声。


「私は、飽きた!」


「く……くだらないですって!?」

「飽きったって……」

「確かに飽きたけども……」

「同調するなよ……」


ざわめきが広がる中、 セイラは一歩前に出る。


「議論はここまでだ! 地球人たちよ! 我々を受け入れるか拒否するか、今決めろ!」


「聞け! 我々は拒否されれば、この島を撤収してすぐに出て行く!」


エミリーが小さく呟く。


「あらあら、それは困るわね…… せっかく仲良くなれたのに、お別れなんてつらいわぁ」


首脳陣も女性陣も、アリスもセイラも互いに顔を見合わせる。

だがセイラはすぐに表情を引き締め、さらに告げた。


「だが貴様ら、よく考えろ! 我々が地球に来た時、いかなる攻撃も通じなかったことを!」


「ど、どういうことだ!?」

「何かするつもりなのか?」


「決まっているだろう?」


セイラは、にやりと笑った。


「拒否されれば――我々は、地球人の男性を全て貰っていく」


各国首脳陣の抗議が嵐のように飛ぶ。 だが、セイラは一切動じない。


「地球の男どもよ、聞け!!」

一拍。


「いや――」


その声は、甘く、冷たい。


「ご主人様たちよ、聞け!!」


――画面いっぱいに、セイラの顔が映し出される。


「我々に……奉仕させろ!!」


全国中継。ネットもテレビも、一瞬で固まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ