表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/69

31話 「世界中が祝福した日」(改)

リング中央は、異様な光景になっていた。


さっきまで武力デモンストレーションの余韻が残っていたはずの場所が、今や――どう見ても、結婚披露宴の空気だ。


歓声。拍手。祝福の叫び。 国籍も思想も関係なく、人類は今、ひとつの方向に盛り上がっている。


その中心で、セイラはマイクを手に、いつも通り淡々と告げた。


「約束通りペアリングするといい。これだけ大々的に宣言したんだ、止める人間もいないだろう」


一瞬の静寂。


そして――爆発。


『やれやれー!!』 『おめでとー!!』 『世界初だぞー!!』


ネットも報道陣も、完全にお祭り状態だった。 実況席ではアナウンサーが声を張り上げ、カメラはリングを逃さない。


「ちょ、ちょっと待ってください!!」


アリスが必死に割って入ろうとするが、両腕に絡みつく存在があった。


「やったねー! よかったね、ヴィオラちゃん!!」 「羨ましー!!」


ミントとルルナだ。完全に祝福側である。


物理的にも精神的にも包囲され、アリスは頭を抱えた。


「……誰か止める人はいないんですか……」


実況席からも熱い声が飛ぶ。


「古田です!! 私は今、猛烈に感動しております!! 若い二人が幸せになってくれることを願っております!!」


場内の熱気はさらに上がる。


マーヤが力いっぱい叫ぶ。


「地球人初のご主人様や!! ヴィオラー!! 幸せになるんやでー!!」


首脳席の女性たちも、もはや遠慮はなかった。


イタリアのソフィアが立ち上がる。


「早くペアリングしろー!!」


オーストラリアのゾーイが続く。


「幸せにしなさいよー!!」


スウェーデンのイングリッドは両手を広げた。


「あたしも恋がしたーい!!」


隣で見ていたイギリス首相オリヴァーは、困惑気味に小声で言う。


「……君たち、彼女たちに批判的だったのでは……?」


返答は、容赦なかった。


「それとこれとは別です!!」 「男のくせに野暮なこと言ってんじゃないわよ!! だからモテないのよ!!」 「恋する乙女は無敵です!!」


男性陣は一斉に黙り込む。 リング上を見ることしか、許されなかった。。


そして、ペアリングの瞬間が近づく。


ヴィオラは三浦慎を真っ直ぐに見つめ、声を低くする。


「じゃあ、ペアリングするからあんたの体液よこしなさいよ」


慎は一瞬ひるみ、赤くなりながらもぎこちなく手を差し出す。


「じゃあ……握手で……」


ヴィオラは眉をひそめて、不満そうに問い返す。


「キスしてくれないの?」


ネットのコメント欄は大騒ぎだ。


「キスしろ!」 「世界的瞬間だ!」


といった書き込みが飛び交い、報道陣もシャッターを切り、マイク越しに声を上げる。


慎は照れくさそうに笑い、真面目に答える。


「うん、もっとゆっくりヴィオラとは進んでいきたいからさ。まずは握手で」


ヴィオラは、


「はぁ、締まらないわね!!」


そう言いながらも、自然と笑みが零れていた。


その目には、隠しきれない嬉しさが宿っている。


慎は深呼吸し、力強く言った。


「これからよろしくね? ヴィオラ」


ヴィオラも応じ、手を伸ばして慎の手を取る。


「ええ。一生奉仕してあげるから覚悟しなさい? 返品は効かないんだからね!!」


二人の手が触れ合った瞬間――


指先から柔らかい光が流れ込み、二人の間に小さな紋章が浮かび上がった。


紋章は淡く輝き、掌にじんわりと温かさが広がる。


カメラはその光を逃さず捕らえ、世界中のモニターに映し出された。


会場中が息を呑み、続いて歓声と拍手が湧き起こる。


報道陣のキャスターも声を震わせる。


「歴史的瞬間です……! ペアリングが成立しました!」


アリスは目を細め、静かに呟く。


「やはり、地球の男性ともペアリングができるのですね……」


セイラは、わずかに口角を上げて答える。


「色々あったが、奉仕種族の希望が見えたな」


リング上の二人は目を合わせる。


紋章の光はやがて落ち着き、掌に小さな痕跡を残す――確かな証として、二人の間に宿った印。


外の世界では祝福の嵐が吹き荒れる。


SNSではハッシュタグがトレンド入りし、ニュースでは特集が組まれる。


軍の参謀たちは興奮冷めやらぬ中、真剣に意見を交わす。


文化人も、この出来事の意味を論じ始めた。


だがこの瞬間だけは、ただ――未来を誓う二人のものだった。。


その笑顔は、討論や憶測とは無縁の、純粋な「これから」を誓う笑顔だった。


小さな紋章の光が、二人の手の中でまだ淡く揺れている。


世界中の視線が注がれたこの瞬間は、やがて人々の記憶に残る一幕として刻まれるだろう。


こうして、奉仕種族と地球人の新たな関係は、


ひとつの小さな光とともに、幸福の中で静かに幕を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ