27話 第一試合:ナナ・スカーレット vs SPチーム(改)
会議場は熱気に包まれ、テレビやネット中継のコメント欄も盛り上がりを見せていた。首脳陣たちは、現実逃避気味に呟く。
「なあ……」
佐藤総理が、背後に控える高橋と藤原に声を落とす。
「俺たち、地球の未来を決めに来てるんだよな?」
「ん? 何言ってるんですか」
高橋が即答した。
「今日は“筋肉王座争奪戦”の観戦ですよ?」
「違いますよ」
藤原も真顔で続ける。
「“暗黒武術会”の観戦です」
――バンッ!
女性首脳陣が一斉に机を叩いた。
「全部違うから!!」
首脳たちは咳払いをし、慌てて背筋を伸ばした。
少し離れた場所では、
ロシア大統領ヴィクトルと、中国国家主席の李が静かに言葉を交わしていた。
「この試合……ある意味で、我らの野望の試金石になるな」
ヴィクトルの低い声に、
「継続するにせよ、先送りにするにせよ」
李が静かに頷く。
「重要な一戦であることに違いはない」
その様子を横目で見ながら、
イタリア首相ルカは目を細め、小さく呟いた。
「……古だぬきどもが、動き出したか」
「ルカ!! 今、なんて言った!?」
ハンバーガーを頬張っていたアメリカ大統領ドナルドが、
口の端にケチャップをつけたまま聞き返す。
「いやいや、なんでもないさ!!」
ルカは即座に、いつものだらしない笑顔に戻る。
「さあ!! 楽しもうじゃないか!!」
「そうだな!! HAHAHA!!」
ドナルドも豪快に笑った。
フランス大統領エミリーは、両手を振って朗らかに声援を送る。
「みんなぁ~、ケガしないでねぇ~」
場違いなほど朗らかな声でエールを送った。
「第一試合、始めるわよぉ~!」
アーシグマの声が響き渡り、リング脇に整列した軍人・SP連合軍の面々が登場する。
真面目そうなSPたちは、普段の冷静さを忘れ、少し戸惑ったように雄たけびを上げる。声は小さく、ネットのコメント欄はちょっと笑いに包まれる。
「そして~ナナちゃんの登場よ~ん!」
ナナは飛び上がるようにリングへ駆け込む。
「ナナ・スカーレット! 身長165cm、体重114ポンド、スリーサイズ90・80・86。元気で明るいツインテールがとってもかわいい女の子よ~!」
ネット上では『スタイル良すぎw』『めっちゃ可愛い!』とコメントが飛び交う。
実況席の古田がマイクを握る。
「軍人・SP連合軍の情報は、残念ながら時間もなく用意できませんでした。申し訳ありません! ですがナナ選手の情報は、マーヤさんどうですか?」
マーヤはポリポリとお菓子をかじりながら答える。
「そうやなぁ。ナナは体も柔らかいしスピードも速いでぇ。連合軍がナナを捕まえられるかどうか、それが勝負の鍵やなぁ。」
「ありがとうございます。それでは試合開始です!」
アーシグマの声にゴングが鳴り響く。
その瞬間――
イタリアのSPが前に出る。
リングに一歩前に出たSPが挑発する。
「女相手に数で勝負などできるか? まず僕から行かせてもらいますよ。」
「おい!!」
日本のSPが叫ぶ。
「さっき油断するなって――」
しかし、止まらない。
ナナは軽く首をかしげ、挑発的に笑う。
「あれー? おにーさんたち、全員で相手してくれるんじゃないのぉ?」
ネットやテレビのカメラはその表情を逃さず、コメント欄は興奮に包まれる。
『ナナかわええwww』
『これは惚れるわww』
『強気な表情が尊い…!』
SPが飛びかかるが、ナナの身のこなしは軽やかそのもの。
一瞬で側面を避け、軽く体をかわす。手首を捕まえ、関節を極めるとSPは「うっ!」と呻き、すぐに動けなくなる。
「おにーさん、情熱的でいいね~♡ あたしとペ・ア・リ・ン・グしちゃう?」
セイラが立ち上がって叫ぶ。
「真面目にやれッ!」
ナナは元気よく「は~い!」と返す。その間に、SPはタップを打ち、負けを認めそそくさとリングを降りる。
残る4人のSPが一斉に突撃する。
拳、蹴り、タックル。
しかし、ナナはそのすべてを紙一重で避ける。
「いいねいいね~♡ちょっと濡れちゃった♡」
ナナが、妖艶に唇を舐めた。
重戦車のようなSPたちが猛攻しているにもかかわらず、
まるでナナの周囲だけ、重力が軽くなったかのようだ。
「ほら! もっと!! もっと!!あーしをビショビショに濡らしてよぉ♡」
という叫びに、
「な……なんて破廉恥な女だ!!」
ドイツ首相マティアスが、顔を赤くする。
イギリス首相オリヴァーは鼻血を押さえ、
「いかん……いかん……」
と、自分の頬を叩いた。
実況席で、古田が呆然と尋ねる。
「マーヤさん……ナナ選手、とても十代とは思えない色っぽさですが……」
マーヤは、苦笑いする。
「多分、ナナはよーわかっとらんと思うで?
どうせ好きなキャラのセリフ、真似しとるだけやろぉ」
「つまり……“ビショビショに濡らして”とは……」
「汗やと思っとるんちゃう?」
その間にも、試合は進む。
一人が右ジャブ、もう一人が膝蹴りを放つ。
だがナナが体をひねった瞬間、二人は互いにぶつかり合い「うわっ!」と転倒。
さらに残る二人もナナのフェイントに引っかかり、互いの蹴りと拳をまともに食らって同時に沈む。
「な、なんだ、今の……」
「こ、こんな……四人が同時に……?」
首脳陣が呆然とする。
最後に残った一人が震えつつ構えを取り直す。しかしナナの姿が一瞬ふっと消えた。
次の瞬間、背後から回し蹴りの軌跡が迫る。
避けようとしたその腕をナナが掴み、またも美しいフォームで関節を極めた。
「……降参……します……」
シーン。
観客席も実況席も、一瞬だけ静まり返る。
そして――爆発するように歓声。
【ネットコメント】
『ナナ、速すぎwww』
『4対1で全部勝つとか無理ゲーすぎる』
『あの華奢な体でどうやって……!?』
各国首脳陣も、ついに笑うしかなかった。
「……これが、奉仕種族の力か……」
アーシグマが満足げにアナウンスする。
「第一試合、勝者――ナナ・スカーレットちゃ~~ん♡」
ナナはピースしながら客席に手を振る。
ツインテールは相変わらず元気に跳ねていた。
第一試合終了 第二試合へつづく




