26話 世界が見てる! 模擬試合、開幕直前!
もうテレビもネット中継も、完全に“世界戦”の様相を呈していた。
各国の放送局は急ごしらえの実況席を設置し、
カメラの向こう――数十億の視聴者に向けて、異様な高揚感を隠そうともしない。
「実況の古田です!!
さあ皆さん、ついにこの瞬間がやってまいりました!!
歴史上初――異星人と地球の軍人による模擬試合!!」
歓声と拍手、そしてざわめきが重なり合う。
「そして今回の特別ゲストはこちら!」
画面が切り替わる。
映し出されたのは――実況席で堂々と足を組み、お菓子をかじっている奉仕種族の女性だった。
「奉仕種族のマーヤやでぇ~。
今日はよろしゅうたのむでぇ~♡」
ひらひらと手を振り、そのままポテトチップスを口に放り込む。
【ネット】
『え、もうゲスト座ってるw』
『マーヤさん自由すぎwww』
『お菓子食ってる異星人初めて見た』
アリスは額を押さえた。
「探しても見つからないと思ったら……
あんなところにいたんですか……」
「まあ、あいつはいつもあんなもんだ」
セイラは、すでに達観している。
(ほんと……マーヤさんにだけ放任すぎます……)
アリスは小さくため息をついた。
その横では、ミントたちが観客席から身を乗り出して叫んでいる。
「がんばれー!!」
「負けないでー!!」
手を振るたび、会場からさらに大きな歓声が上がった。
――一方その頃。
地球の軍人・SP連合の控室は、
異様な、しかし確かな一体感に包まれていた。
国籍も、言語も、立場も違う男たち。
壁際に貼られた各国の国旗は、今この瞬間だけは意味を失っている。
「今日は俺たちの名誉が掛かっている!!」
アメリカ軍の大尉が拳を握り、吠えた。
「国のことなんか忘れろ!!
これは――人類の意地だ!!」
「その通りだ!」
ロシア軍の将校が低く唸る。
「この勝負、絶対に勝つぞ!!
地球の軍人が飾りじゃないってことを、見せてやる!!」
「……ふん、珍しく意見が一致したな」
ドイツのSPが腕を組み、短く鼻を鳴らす。
「異星人相手に様子見など通用しない。
勝つか、恥をかくかだ」
「まあまあ、肩に力入れすぎだって」
イタリアの隊員が軽口を叩きながら、装備を締め直す。
「でも嫌いじゃないぜ。
こういう“全員本気”の空気」
日本のSPたちは無言だった。
だが、その視線は誰よりも鋭い。
「……正直に言う」
一人が静かに口を開く。
「相手が女子供に見えるってだけで油断する奴がいたら……
俺はそいつを先に殴る」
誰も反論しなかった。
沈黙の中、ふと誰かが呟く。
「……レーガンの言う通りになったな」
「ん? なんだそれ?」
「『もし地球が異星人の脅威にさらされたら、人類は瞬時に団結する』ってやつだよ」
一瞬の静寂。
そして――誰かが笑った。
「皮肉な話だな」
「だが、今はそれでいい」
「相手は異星人だ」
アメリカの大尉が言う。
「だが俺たちは――地球代表だ」
拳が合わされる。
「負けられるかよ」
「負けるわけがない」
「……終わったら、飲みに行こうぜ」
「生きて帰れたらな」
笑いが起きる。
それは恐怖を誤魔化すためのものでもあり――
同時に、覚悟の証でもあった。
――こうして、地球の軍人・SP連合は、
史上最も奇妙で、そして最も“人類らしい”戦いへと向かう。
そんな感動的な光景が裏で繰り広げられていることなど、露知らず。
会場は、完全にお祭りだった。
「さぁ~て、それでは始めましょうか♡」
リングアナとして現れたのは――あの男(?)。
そこへ、アーシグマ・ノワールが颯爽と登場する。
「レディイイイイイイイス、エンドジェントルマアアアアアアアアアアアン!!
そして全国のオカマの皆様ぁぁぁ~♡」
大げさに手を広げ、観客とカメラに向かってウインク。
その瞬間、観衆もネットも一気に釘付けになった。
「審判と進行を担当するアーシグマ・ノワールよぉん♡
よろしくねぇ~♡」
【ネットコメント】
『出たwwwアーシグマ姐さん!』
『実況より目立ってるじゃん!』
『テンションの圧がすごいw』
実況席の古田が、恐る恐るマイクを取る。
「えっと……汗とかで“ペアリング”とか、発動しないんですよね?」
アーシグマは手を振って笑った。
「大丈夫よぉん♡
今回はみんな専用スーツとヘルメットつけてるから、ご安心♡
思いっきり戦ってちょうだ~い♡」
会場が暗転し、入場用の効果音とスポットライトが煌めく。
光と影が複雑に入り混じり、リングは神秘的に輝いた。
「まずは挑戦者ぁぁっ!
軍人・SP連合軍の入場よぉっ!!」
ドガアァァンッ!!
爆音のロックが鳴り響き、筋骨隆々の軍人・SPたちが咆哮しながら登場する。
「うおおおおおおお!!!」
「いっくぞおお!!」
まるでボクシングか、プロレス。
もはや外交イベントではなく、“祭り”の空気だった。
【ネット】
『なんだこれwプロレス番組?』
『軍人の人ノリノリで草』
『日本代表がサングラスして出てきたぞwww』
観覧席の首脳陣は、青ざめていた。
「……本当にこれ、全世界放送していいのか?」
ロシア大統領ヴィクトルが呟く。
「いや……もう手遅れだ……」
ドイツ首相マティアスは、諦めたように肩を落とした。
「それでは皆さぁん、お・ま・た・せ♡」
アーシグマが、身をくねらせて叫ぶ。
「奉仕種族代表っ!
ナナちゃんたちの入場よーん♡」
可愛らしいポップチューンが流れ、スポットライトの中に現れた三人の少女。
光が当たるたび、戦闘スーツの光沢が際立つ。
金髪ツインテールのナナ・スカーレット。
ピンクショートのアヤ・ブロッサム。
そして無表情で腕を組む、ヴィオラ・エッジ。
三人は体のラインが浮き立つ戦闘スーツ姿。
ナナとアヤは笑顔で手を振り、観客やカメラに向かって愛嬌を振りまく。
ヴィオラは「面倒くさい」と言わんばかりの無関心な表情で、二人の後ろを歩いていた。
「はろはろ~♡
お兄さんたち、準備できてるぅ?」
「負けたら泣かないでね♡」
【ネット】
『やば、アイドルのライブかな?』
『スーツやばすぎる……!』
『ヴィオラちゃんの塩対応が尊い』
「Mamma mia!!」
イタリア首相ルカが叫ぶ。
「早く! ハンバーガーとコーラを持ってこい!!
観戦には外せん!!」
ドナルドは完全に観戦モードだった。
「……少し煽情的すぎませんか?
彼女たちの戦闘服は……」
オリヴァーは鼻血を押さえながら呟く。
「確かに……」
佐藤総理も、思わず頷く。
「エロい!!
È fantastico!!(最高だ!!)」
ルカが追撃した。
だが次の瞬間、
スウェーデンの女性閣僚イングリッドたちの冷たい視線に気づき、
首脳陣は一斉に姿勢を正す。
「え、ええ! ぜひ頑張ってもらいたいですな!」
「そ、そうです! 怪我がないことを祈りますよ!」
女性陣の視線は一言。
「……白々しい」
ネットとテレビ中継のコメントは最高潮に達していた。
『うおおおおお入場かわいすぎwwww』
『ヴィオラ無表情ツンデレ最高www』
『ナナとアヤ、戦闘スーツなのに笑顔で手振るとか反則www』
『実況wwwテンション振り切ってるwwwww』
会場の照明が変化し、リングが幻想的に輝く。
緊張と期待が入り混じる中――
次回、
試合開始へ。




