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25話 「模擬試合、開幕前!」(改)

奉仕種族と地球の軍人・SPたちによる「模擬試合」は、もはや誰にも止められない段階へ突入していた。


「落ち着きなさい! これは正式な会談の場ですよ!

 子供じみた真似はやめなさい!!」


イギリス首相オリヴァー・ハリソン・ベネットが、眼鏡をずらしながら声を張り上げる。

だが、その声はすでに熱を帯びた空気にかき消されていた。


各国首脳も慌てて制止に入る。


「ここで衝突など論外だ!」

「国際問題になりますぞ!」


――しかし、当の軍人やSPたちは、完全に火が付いていた。


「我々も舐められたままではいられません!」

「名誉にかけて、負けるわけにはいかない!」


拳を握り、視線を交錯させる男たち。

そこに、場の空気をさらに煽る人物が現れる。


アメリカ大統領ドナルドが、腹の底から豪快に笑った。


「HAHAHA!! ヘイ!! ヴィクトル!

 うちとお前のところ、どっちの military man が勝つか賭けるか?」


ロシア大統領ヴィクトルは腕を組んだまま、鼻で笑う。


「……くだらん」


そう言って視線を逸らすが、口元がわずかに歪んでいるのを、誰も見逃さなかった。


そこへイタリア首相ルカが、椅子から身を乗り出して叫ぶ。


「Meraviglioso!!

 つまらん会議で眠たくなってたんだ!

 やれ!! やれ!!」


完全に火に油だった。


佐藤総理は青ざめた顔で、背後の高橋と藤原に小声で尋ねる。


「……なんとか、止められんのか?」


二人は一瞬だけ視線を合わせ、同時に首を横に振った。


「……無理です」

「止まりません」


一方、フランス大統領エミリーは事態を眺めながら、頬に手を当てて微笑む。


「あらあら……どっちを応援しようかしらぁ?

 ねぇ、GOHKI?」


場の緊張感とは真逆の、のほほんとした空気だった。


ついに、ドイツ首相マティアスが限界を悟り、アリスへと助けを求める。


「アリス殿……今からでも中止にできませんか?」


その問いに、アリスは一瞬だけ首脳陣を見渡し、にっこりと微笑んだ。


「大丈夫ですよ?

 奉仕種族も“手加減”は心得ていますので」


その笑顔に、首脳陣は同時に悟った。

――もう、止まらない。


中国国家主席の李が、低い声で尋ねる。


「それで……試合はどこでやるつもりだ?」


アリスは軽く指を上げた。


「ここで大丈夫ですよ。ノワール、準備を」


「はぁ~い♡ おまっかせえ~!

 みなさ~ん、危ないからこちらに移動してくださ~い!」


アーシグマの声が響いた瞬間、床が震え、椅子や机がスルスルと収納されていく。


次の瞬間――

会議場の中央が変形し、巨大なリングがせり上がった。


「な、なんだこれは……!」

「武道館か!? いや、もっとSFだぞこれ!」


地球人たちは目を丸くする。


「うわ、なんか昔見たことあるなこれ!」

「絶対無敵ライジンオーだろ!」

「あーそれだ! 学校が基地になるやつ!」

「リアルで見られるとか感動なんだが!」


その光景は即座にSNSへ流れ、コメントが弾けた。


『#異星人リング出現』

『会議場がトランスフォームした件ww』

『テンション上がるおじさんたち可愛い』


盛り上がる男性陣をよそに、女性たちは呆れ顔だ。


「男子ってほんと、こういうの好きね……」


そんなざわめきの中、三人の少女がリング脇に現れた。

金髪ツインテールのナナ・スカーレット、

ピンク髪ショートのアヤ・ブロッサム、

そして無表情気味のヴィオラ・エッジ。


「はろはろ~♡

 なに? おにーさんたちが、あたしたちと遊びたいって?」


ナナとアヤは軽いノリで手を振る。


一方のヴィオラは腕を組み、


「アリスが頼むから来てあげたけど……

 何の用よ?」


と、面倒くさそうにため息をついた。


――どう見ても、地球にいる高校生の女の子たちだった。


ロシア大統領ヴィクトルは、呆れたように呟く。


「……まさか、彼女たちが戦うのか?」


中国国家主席の李も、静かに首を振る。


「勝てるわけがないだろう……」


フランス大統領エミリーだけが、目を輝かせて声を上げた。


「あの子たち、とっても可愛いわ♡

 一緒にお茶できないかしらぁ?」


一方その頃、会議場の奥ではマーヤがニヤニヤと眺めていた。


「また、おもろいことやっとるなぁ~」


そのとき、報道陣が慌てて手を挙げる。


「ちょ、ちょっと待ってください!!」


アリスが振り返る。


「どうしました?」


報道陣の代表が勢いよく言った。


「こんな重要イベント、中継しないなんてもったいないです!!」


「……はあ?」


「ぜひ、我々に準備の時間をください!

 一時間――いや、三十分で結構です!」


アリスは首を傾げつつ、


「私たちは構いませんが……どうしますか?」


と首脳陣に視線を向ける。


「余計なことを……」と言いかけた首脳たちの声は、


「臨むところだ!!」


と燃え上がる軍人たちの声にかき消された。


「では、三十分後にここで試合ということで」


アリスが宣言する。


「ありがとうございます!!」


報道陣も一斉に動き出した。


「アイドルの結婚報道? 後だ後!!」

「俳優の不倫? どうでもいい! 特番差し替えだ!!」

「ネット枠全部使え!

 世界初・異星人との模擬試合だぞ!」


――瞬く間に、地球中が

「異星人 VS 軍人」の話題一色に染まった。


『#奉仕種族VS地球防衛軍 トレンド1位』

『実況席にオタク系YouTuber参戦決定w』

『コメント欄「勝ったら告白していい?」で埋まる』


セイラが腕を組みながら言う。


「一対一だとすぐ終わる。

 こちらは一対五でいいぞ」


「な、なんだと!? 舐めるな!!」


SPや軍関係者がどよめき、ネット上でもコメントが飛び交う。


『煽りきたあああ!!』

『セイラ姐さん、挑発のプロすぎるwww』

『SP隊長の顔、テレビでも真っ赤w』


アリスはため息をついた。


「セイラさん……煽りすぎですよ……」


「これくらいやらんと、盛り上がらんだろう?」


セイラは肩をすくめる。


アリスはその背中を見つめながら、心の中で小さく呟いた。


(やっぱり……鉄でできてるんだな……)


――こうして、


歴史に残る

「最も平和で、最も頭のおかしい模擬試合」


の幕が、静かに、しかし確実に上がろうとしていた。

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