おまけ 若い奉仕種族たちの騒動(改)
若い奉仕種族たちのほうも、同じような状況だった。
同じ人工島の控室では、若い奉仕種族たちがバラエティ班とともに、地球文化交流の“特別番組”に参加していた。
最初のうちは和やかだった。
「好きな食べ物は何ですか?」
「趣味は?」
「地球の言葉、どれくらい覚えましたか?」
質問は穏やかで、微笑ましい雰囲気が漂っていた。
しかし、番組の女性アナがうっかり禁断の質問をしてしまった。
「……では、男性のタイプは?」
空気が一瞬、凍る。
ルルナは指を立てて得意げに答える。
「ビビッとくるY遺伝子のご主人様です!! 特にあそこにいる男性がいい感じです!!」
指さす先には、三白眼でダルそうに座る男性AD。
女子アナが口をパクパクさせながら、
「え、あの方ですか……?」と確認しようとするが、言葉が出ない。
すると、ミントたちも次々と発言し始める。
「わたし、かわいいY遺伝子の人がいい〜♡」
「渋いY遺伝子とか、悪くないじゃん!」
「あの……少し辛味があるY遺伝子がいいです!!」
一気に広がる“Y遺伝子談義”。
バラエティ班は困惑の表情を隠せない。
どんな男性が好みか尋ねても返ってくるのは、
「この人の遺伝子、甘い香りがしていい!!」
「ここの遺伝子、渋みが効いてるわ〜」
……意味不明すぎる。
地球の女性たちは眉をひそめ、男性たちは唖然とする。
「遺伝子に甘いとか渋いとか、マジであるんか……?」
「俺の香り……なんかするんか……?」
しかし、場の盛り上がりは止まらない。
2828動画対応のアーシグマ・プライムが、各国のコメントを瞬時に翻訳・字幕化するという超技術で、会場は大騒ぎだ。
「I’m rooting for Mint!」
(ミントを応援してるよ!)
「Sono tutti carini e tutti fantastici!! Non combattere!!」
(みんな可愛くて素晴らしい!! 争わないで!!)
「いつの間に翻訳対応したんだこれ!!」
「2828最強で草」
SNSも爆発していた。
――そして最後の質問が、ヴィオラ・エッジに向けられた。
「ヴィオラちゃんはどんな男性が好みですか~?」
ヴィオラは腕を組み、鋭い目で会場を見渡す。
「そうね……この中なら、こいつかしら?」
指さされたのは、線の細い気弱なAD青年。
「えっ!? 僕!?」
「そうよ!」
女子アナが思わず地声で叫ぶ。
「はぁ!? こいつ!?」
「何か問題あるの?」ヴィオラが鋭く睨む。
「だ、だって……頼りなさそうで……」
「あら、それがいいのよ。育てがいがあって♡」
にっこり笑って肩をすくめる。
「冴えない男を立派なご主人様に育てる——それ、最高に萌えるでしょ?」
男性報道陣:「おぉぉぉ!!!」
SNS:「ヴィオラちゃん最高!」「ツンデレ嫁降臨!」
マーヤがマイクを取り、まとめに入る。
「まぁ、うちら奉仕種族は“ビビッとくるY遺伝子”で選ぶからなぁ。見た目とか関係あらへんのや」
ニヤリと笑い、会場を見渡す。
「地球人の感覚とちゃうかもしれへんけど——これが、うちらの“恋”やねん♡」
――歓声。笑い。熱狂。
その夜、地球のネットは“Y遺伝子まつり”で埋め尽くされた。
そして誰もが悟った。
**「奉仕種族、推しの基準がバグってる」**と。




