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第23話 『報道の嵐!アリス様、初インタビューです!』

会議ホールの控え室。アリスは深く息を吐いた。

「ふぅ……一日目が、ようやく終わりましたね……」


隣でセイラは腕を組み、淡々と短く答える。

「ああ、終わったな。」


――そこへ、ニヤニヤ顔のマーヤが乱入。

「そない簡単には終わらへんで~?」


「……マーヤさん、毎回出てくるタイミングが絶妙ですね……」

アリスは思わずため息をつく。


さらに、アーシグマが慌ただしく駆け込む。

「アリスちゃ~ん、セイラちゃ~ん、緊急事態よぉ~~!

 報道陣のみなさんがねぇ、“取材はまだか!”って大騒ぎしてるのよぉ~!

 もう廊下で押しかけ寸前っ!」


アリスは頭を押さえた。

「……まだ、仕事が残っていたのですね」


セイラは眉一つ動かさず言った。

「ああ、そんな話もしていたな。ふむ、もう一仕事か。アリス、行くぞ。」


「……セイラさんは元気そうで何よりです……」


「私は後ろで見てただけだ。疲れはない!」

セイラは胸を張る。


――アリスは心の中で呟いた。

(この人、鉄でできてるんじゃないかしら……)


「それで、アーシグマ。どのような取材希望ですか?」


「え~っとねぇ、『報道班』と『バラエティ班』の二組に分かれてるの♡

 報道班はまじめにインタビューしたいって言ってて、バラエティ班は……“ミントちゃんたちを呼んで!”って♡」


「……ミントたちを野放しにするのは危険だな」

セイラの声がわずかに低くなる。


「ならうちが見といたるわ!」

マーヤが胸を叩く。

「うち、現場監督やるわ! アーシグマ、何体か貸してな!」


「了解~♡ 可愛いカメラアシスタントモードにしておくわねぇ♪」


「ま、待ってくださいマーヤさん、勝手に――」


「大丈夫や大丈夫♡ おねーさんにまかせとき!」


「おい、勝手に決めるな!」と言いかけたセイラだが、マーヤは手をひらひらさせながら颯爽と退室。

アリスは天を仰ぐ。


セイラは少し唸りながらも、最後に軽く言った。

「まあ、大丈夫だろう」


「セイラさん、マーヤさんが相手のときは、いつもこうなんですね……」

アリスはジト目で見つめる。

「そうか?」

「そうですよ」

セイラは全く気にする様子もなく、涼しい顔で笑う。


「早くしてよぉ~! 抑えるのも大変なんだから!」

アーシグマが焦った様子で手を振る。


「はいはい、今行きますよ」とアリスは立ち上がる。


報道取材会場(人工島・メインホール)


扉が開いた瞬間、眩い光とシャッター音の嵐。

フラッシュが連続し、歓声が爆発する。


「――っ!? な、なんですかこの熱気は……!」


「ふむ。うるさいな」

セイラは涼しい顔で立ち尽くす。

アリスは小さく心の中で呟いた。

(やっぱり、この人、鉄でできてるんじゃないかしら……)


「は~い皆さ~ん!」

アーシグマがマイクを持って進み出る。

「奉仕種族代表アリスちゃんとセイラちゃんが、取材に応じま~す♡

 あ、男性の方はペアリング防止のため、なるべく距離をとってくださ~い!」


「おお、そうだそうだ!」「既婚者は前に出るなよ~!」

スタッフたちの冗談に男性記者たちは爆笑。

女性記者たちは「ちっ」と舌打ちした。


「先ほど倒れられましたが、大丈夫ですか!?」

アリスが柔らかく微笑む。

「ええ、大丈夫です。ご心配をおかけしました」


――その瞬間、報道陣の男性たちは一斉に胸を撃ち抜かれた。


「な、なんて健気なんだ……!」「尊い……!」

女性記者たちは舌打ち。

「ちっ……」


女子アナが鋭く質問。

「先ほど、男性としかペアリングできないとおっしゃいましたが、本当ですか?」


アリスは頷く。

「ええ、その通りです。奉仕種族同士でも無理でしたから、地球の女性とはまず無理でしょうね。何なら試してみますか?」


「えっ!?」

動揺するアナウンサー。

しかし隣の“目立ちたがり女子アナ”が前へ出た。


「ぜひ! わ、私と試してください!」


「体液を媒介としますが……何を?」


「こ、興奮と期待で手が汗まみれなので、握手でお願いします!!」


報道陣から「おいおい」と笑い声が上がる。

アリスは嫌そうな顔一つせず、微笑みながら手を差し出す。

「では握手をしましょう。資料では、ペアリングが成立すると私の手の甲に紋章が浮かぶと聞いています」


――が、何も起きなかった。

アリスは少し残念そうに肩を落とす。

「やはり地球人の女性とは無理のようですね……」


女子アナも涙目で小さく呟く。

「残念ですぅ……」


その場に割り込む新たな女子アナ。

「女性とペアリングできないのはわかりましたが、男性とできる保証はあるのですか?」


アリスはにこりと笑う。

「ええ、確信があります」


「どうして、そう言い切れるんですか?」


「――地球の男性を見ると、“仕えたい”という感情が自然と湧き上がるんです。

 体が……彼らの遺伝子に共鳴しているような感覚です。

 これは、ここに来て初めて感じました」


会場が一瞬静まり返る。


男性アナが勢いよく手を挙げた。

「それはどんな男性がいいんですか!? 私とかどうですか!」


「ええ、とても良い遺伝子の輝きを感じます。」

アリスの答えに、会場がどよめいた。


「俺も!俺も!!」


「みなさんからとても良い輝きを感じて……誰にお仕えするか、迷ってしまいます……」

頬を染めるアリス。


男性陣:「尊い!!!」

女性陣:「ちっ!!」


SNSのコメント欄は一瞬で沸騰。

『アリス様ああああ!!』『アリス尊い!』『嫁に来てくれ!』

『地球に舞い降りた天使!』『俺のY遺伝子見てくれ!』


◆ 男性記者A(小声)

「……なぁ、“遺伝子”って結局なんだ?」

男性記者Bぼそり

「さぁ……社交辞令だろ、多分。」

◆ 男性記者C(ため息)

「だよなぁ……俺らみたいな弱男に縁なんてねぇよな……」


――その時。


「そんなことはない。」

セイラが不意に口を開いた。


「お前たちも、なかなかいい遺伝子を持っている。

 私は――好きだぞ。そういう素朴な輝き。」


「す、すき……!?」「おれ……セイラ様に“好き”って言われた……!?」


「はぁあああ!! 尊死とうしる!!!」

SNSコメント欄が爆発。


『セイラ様尊い!』

『弱男にも優しい……慈悲深き女神!!』

『推します一生!!』

『セイラ様かっこいいいいい』

『セイラ様の下僕になりたい』

『セイラ様あああああ』


――その熱狂の最中、女子アナがマイクを持ちながらぼそっと皮肉を吐いた。


「……なんか、うまいこと言ってるけど。結局“見た目”で選んでるんじゃないですか?

 遺伝子とか言いながら、やっぱりイケメンが好きなんでしょ?」


アリスは首をかしげ、穏やかな声で答えた。

「よく言っている意味が分かりませんが……私たち奉仕種族は、地球人の方々の“美や醜”に、あまり価値を感じないようです。申し訳ありません」


女子アナの笑みがピクリとひきつる。

「……それって、つまり私たち人間の“感性”が理解できないってこと?」


「いえ。理解できないわけではありません。ただ――私たちは人工生命体です。恐らくそのせいもあるでしょう。

 奉仕種族は、Y遺伝子の輝きや匂い、性質などを感じ取って男性を評価しているようなのです。抽象的かもしれませんが……確かに、私たちはここにいる男性たちの中に“感じ取れる輝き”を見ています」


「Y遺伝子の……輝き?」

女子アナが鼻で笑う。

「なんか、スピリチュアルっていうか……宗教っぽい話ですね」


「そう感じるのも無理はありません。でも、私たちにとっては現実なんです」

アリスは優しく微笑み、会場の端に視線を向けた。


その先には――ケーブルを巻いていた地味な男性スタッフ。

薄毛、小太り、シャツが少しよれている。だが、アリスの瞳はきらめいた。


「例えば、あの方。とても穏やかで、誠実な輝きを感じます。

 ああいうY遺伝子は、きっと優しく、家族を守るでしょう。とても魅力的です」


スタッフ「えっ!? ぼ、僕!?」

会場大爆笑。男性記者たちは「マジか!?」とざわめき、女性陣はあからさまに舌打ち。


「……そんなの、ただの勘違いですよ。見た目も冴えないし」

女子アナが冷たく返す。


「ですが、“見た目”と“価値”は違います」

アリスは真っ直ぐな目で言った。

「私たちにとって魅力的なのは、“整った顔”ではなく、“生きる力そのもの”。

 自然な体毛や、少し丸い体型――それは、原始的で純粋なY遺伝子の証。とても、素敵です」


会場が静まり返る。

次の瞬間――男性陣が総立ち。


「俺たちの時代キターーー!!!」

「はげ野郎ども勝利宣言!!!」

「アリス様ぁぁぁぁ!!」


SNSも炎上。

『ハゲこそロマン』『薄毛こそ進化』『女子アナ撃沈』がトレンド入り。


――こうして、“奉仕種族”と地球人の初めての本格的な接触は、

予想外に熱狂的な“推し祭り”として幕を開けたのだった。

母船内は、熱気と笑いと騒ぎで包まれた。


――こうして、奉仕種族たちの夜は更けていく。

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