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第17話―初対面、世界が息を呑んだ日―(改)

ついに首脳団や報道陣の前へ――奉仕種族の面々が姿を現した。


先頭を歩くのはアリス。そのすぐ後ろにセイラ、マーヤが続き、そしてミントをはじめとした若い奉仕種族たちが整然と列を成している。


その瞬間、会場の空気は明らかに変わった。


ざわめきが波紋のように広がり、無数のフラッシュが白い嵐となって吹き荒れる。


「……す、すごい……」「まるで映画のワンシーンだ……」


誰かの呟きが集音マイクに拾われ、そのまま世界中へ流れた。


彼女たちの美しさ、可憐さ、そして神秘的な雰囲気に、地球人たちは言葉を失う。

カメラマンも記者も、ほとんど本能のようにシャッターを切り続けた。


アリスが一歩前へ進み、柔らかな笑みを浮かべる。


「ようこそ、人工島〈ノア・プレート〉へ。地球代表の皆さん――奉仕種族を代表して、心よりお礼申し上げます」


その声は澄み渡り、音楽の一節のように耳へ染み渡った。


ロシア大統領ヴィクトルは息を呑み、胸元を思わず正す。


「……う、美しい……はっ!」


イギリス首相オリヴァー・ハリソン・ベネットがメガネを押し上げながら小さく呟く。


「どこの妖星さんだよ……」


横の補佐官は噴き出し、慌てて口を押さえた。


各国の首脳たちはただ圧倒され、返す言葉すら忘れていた。


その静寂を破ったのは、アメリカ大統領のドナルド・J・ブレイクリーだった。


彼は隣の佐藤総理を肘で小突く。


「GOHKI!! こちらの可憐なお嬢さんに早く挨拶しろよ!」


「GOHKIがしないなら俺がしようじゃないか!」


イタリア首相ルカ・ベルナルディーニが派手なネクタイを揺らしながら前に出ようとする。


「だ〜めよ〜。今はGOHKIの番なんだから、ルカは大人しくしてなきゃ♡」


フランス大統領エミリーがのんびりと背中を押さえつけ、場がざわりと笑いに包まれた。


緊張で固まっていた佐藤総理は、背中を押されるように前へ進み、なんとか声を絞り出す。


「え、ええ……ええ、こちらこそ……ようこそ、地球へ」


会場のあちこちから、くすくすと小さな笑いが起こった。


世界中でも同じように笑いと興奮が巻き起こっていた。


SNSは瞬時に爆発し、


「かわいすぎる!」「なんなのあのスタイル!?」「うちにも一人ほしい!」「奉仕されたい!!」


トレンドは秒速で奉仕種族一色となった。


下世話なコメントやコラ画像まで飛び交い、ネットは混沌の坩堝となった。


――そんな中。


報道陣の男性スタッフが、レンズ越しのアリスたちを見ながら呟く。


「……地球の女、終わったな……」


「だよな。あんなのが大量に移住してきたら勝てる要素ねえよ……」


横にいた女性スタッフが眉をピクッと上げ、ゆっくりと殺意を帯びた目で睨みつける。


「はぁ?」


「お、おー……怖い怖い……」


男たちは揃って黙り込んだ。


その横で別の女性スタッフが肩をすくめる。


「……まぁ、正直、勝てる気しないですけどね」


一瞬の静寂。

現場に微妙な空気が落ちた。


女子アナがぼそりと呟く。


「結構、あたし……女の中では上澄みのほうだと思ってたんだけどな……自信なくなったわ……」


「おい、落ち込むな! オンエア中だぞ!」


カメラマンが焦って注意した、そのとき――


列の中から小柄な金髪少女がぴょこんと顔を出した。


奉仕種族の一人、フィオナ・ハートだ。


「どうしたの? おなか痛いの? お薬いるー?」


突然の接近に女子アナは「ひゃっ!?」と妙な声を上げた。


報道陣にどよめきが走る。


すぐにアーシグマ隊の一人が駆け寄ってきた。


「こらぁ!! お行儀よくしなきゃダメでしょう、もうっ!!」


叱る声は妙にセクシーなオネエ口調で、報道陣は逆に安心する。


アーシグマは報道陣に向かってにっこりと笑った。


「ごめんあそばせぇ。まだまだ若いからお転婆なのよぉ。驚かせてしまってごめんなさいねぇ?


 もし気分が悪いようなら、医務室も医療施設もありますから、いつでも言ってくださいねぇ?」


そのままフィオナを連れて下がろうとするが、フィオナは首をかしげながら尋ねる。


「ねぇねぇ、あの人、大丈夫かなぁ? 顔色悪かったよ?」


アーシグマは苦笑した。


「あれは“アイデンティティ・クライシス”って言うのよぉ。まあ、大人の事情ってやつぅ~」


女子アナは肩をがっくり落とした。


「……なんか、人としても負けた気がする……」


「気持ちはわかるけどさ」女性スタッフが慰めるように肩を叩く。


「でも本番中だから、ミジンコ並みのプライドは捨てて仕事して?」


「ひどくない!?」


女子アナは涙目で遠ざかるフィオナの背を見送った。


「……あの子に慰められたい……」


そんな様子を横目にセイラが眉間に皺を寄せる。


「やっぱり、こうなったか……」


「まぁまぁ」アリスは苦笑した。


マーヤは肩をすくめる。


「おもろいことになったなぁ? うちはミント達のフォローに回るで。後は頼んだで〜」


そう言ってミントたちを連れ、アーシグマ隊と共に控室へ向かっていく。


報道陣はさらに押し寄せ、もっと撮影させろ、取材させろと混乱は拡大。


その中でアーシグマが舞台進行役のように両手を広げ、見事に仕切っていった。


「報道陣の皆さまぁ~、取材は会合が終わってからになりますので、どうか落ち着いてくださいねぇ?


 会談を中継される方や傍聴の方はこちらへ~。


 取材ツアーをご希望なら、あたしの姉妹機がご案内しますからねぇ~。


 控室でお休みになりたい方も、どうぞどうぞ~」


やがて、アリスは各国首脳に向かって一礼する。


「では――会議場にアーシグマたちがご案内しますので、どうぞこちらへ」


デレデレになった首脳たちは、夢見心地の表情で従い、次々と会議場へ入っていく。


セイラが小さく息を吐いた。


「さあ、始まるな」


「そうですね。いい結果になるといいですね」


「結果を出してもらわなくては困るぞ」


「はいはい、任せてください。だからそんな怖い顔しないでくださいね?」


アリスが微笑むと、セイラは小さく肩をすくめた。


そして――人工島〈ノア・プレート〉の巨大な会議場の扉が、静かに閉じられた。


ついに、地球と奉仕種族の歴史的な交渉が始まる。

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