アマリの花
ミミールの街に着くとソウは私を街から少し外れたアマリの花畑に残し、
ソウにかわるライダーを探しに行った。
ソウが帰って来るまで寝ていよう。そう思って花畑に寝そべり眠りについた。
「・・・いよ・・・でしょ・・・ど・・ってば・・・・・ってば!」
しばらく眠ると声が聞こえてきて寝ぼけまなこを開けてみると
少女が私の足をポカポカと叩いている
「私に何か用かい?」
少女を怖がらせないようにやさしく声をかけた
「何か用かい?じゃないっ!アマリの花が潰れているわ!かわいそうよ!どきなさい!!」
片方の前足を上げてみると潰れたアマリの花があった
「これは気づかなかった、すまないことをした」
しょうがないやつね!と言わんばかりに両手を腰に当てている
私が花畑から退くまで少女は私を睨み続けた。
「まったく!花にも命があることを知らないの!?」
「本当に悪かったよ」
「あなた名前は!?」
「アイテールだ」
「名前だけ立派だなんて恥ずかしくないの!?」
少女の怒りは冷める兆しがない、ソウはまだだろうか。
ミミールの街の方を見ると花火が上がり始めたところだった。
中、大規模の街になってくるとたいていの街にはライダーを育成する教習所のようなものがある。
ソウはそこで特に成績のいい者を連れてくると言っていた。
空から見た教習所はちょうどあの花火の方角だ。
「ちょっと聞いてるの!?」
はっと少女の存在を思い出す
「今聞いてなかったでしょ!罰よ!あたしを乗せて!!」
「なんだって!?私には何人ものライダーが乗ろうとしたがだめだった!君のような小さな子に
乗れるはずがない!」
聞く耳も持たず、少女は羽にしがみつき警告する私の鼻先を踏み台にして背中に乗ってしまった
「なんて横暴な、落ちても知らないぞ!」
「いいから飛んで!!!」
少女は強く私の背中を叩いた、まるでソウじゃないか。
私は翼を大きく広げて力いっぱいに羽ばたいた。
アマリの花弁が雪のように舞い上がる。
「すごいすごい!!たかーーい!!!」
少女はばんざいをして風を浴びた
「手を離したら危ないよ」
「大丈夫よこのくらい!」
危なっかしくてたまらないがなんだか久々にわくわくする。
こんな気持ちで飛ぶのはいつ以来だろうか、
雲ひとつない空に煌々を降り注ぐ太陽の陽。
「右よ!!!」
油断していた。
声を聞いてすぐ私のアーレウスの血が騒いだ
体をぐっと傾けて右に旋回してすぐ、私たちの左側でドーンと花火が開いた。
「何ぼっとしてんのよ!あたしまで死んじゃうところだったわ!!」
「・・・・・・」
「ちょっとまた!?聞いてんの!?」
私のアーレウスの血が知らせるより速くこの少女は上がってくる花火に気づいたのか、
パラパラと散っていく花火を見ながらそんなことを考えずにはいられなかった
「おーーい、アイテールー!」
私たちの飛び立った花畑から3人の若い男を連れたソウが手を振っていた
「すまない、用事があるんだ」
「・・・そう、わかった」
私についた少女の手からさびしそうな気持ちが伝わってきた
「君の名前は?」
「エルダよ」
「両親は何をしているんだい?」
「お父さんは造船職人、お母さんは医者よ」
「そうか」
それからゆくっり降下して花畑に戻った私は、またね!と手を振りながら去ってゆく
少女を見送りそのあとでソウの連れてきたライダー達と一人ずつテスト飛行をした。
それはなんだかとても退屈な空だった。