第3話 Sクラス
「みなさんはじめまして、Sクラスの担任となりました。淡井麗子と申します。よろしくお願いいたします」
入学式が終わり、私はSクラスの教室に来ていた。
クラスは成績ごとに決められており、下からEクラス、Dクラス、Cクラス、Bクラス、Aクラス、Sクラスだ。
いくら力の調子が悪いとはいえ、【漆黒】は【漆黒】。他と比べると段違いの強さだ。座学は盲目のため免除されていて、ギリギリSクラスだった。気配を感じられるとはいっても、文字が読めるわけではないからね。
「早速ですが、自己紹介をしてもらおうかと思います。ではまず……令条さん」
「はい」
そう返事をして立ち上がる。私が最初ということは、レベルが高い人からなのだろうか。
「令条奈乃羽と申します。【漆黒】で【完全治癒】です。よろしくお願いします」
そう言った途端、教室内がザワザワとし始める。
異能は、おとぎ話の中の魔法と違い、一人ひとり使える能力が違う。私は、【完全治癒】だった。不治の病でも、持病でも、盲目や難聴でさえも治せる、伝説級の能力だ。たが………自分に向けては使えない。これを知ったとき、絶望した。それはもう、文字では表しきれないほどに。他の人が授かったなら。そんなことを何度思っただろう。
「お静かに」
ざわめきは、先生の1言で消え去った。
「では次……」
能力は、【占い】の能力を持つ異能術者から授かる。【占い】の能力は希少ではあるが、必ず1人は存在し、1人亡くなれば1人生まれるといったようななんとも都合のいい能力である。
「東雲さん」
「はい」
またもや教室内がザワザワとし始めた。東雲家は、令条家ほどではないが強力な異能術者を多数排出しており、令条家の次に権力を握る家だ。
「令条家の令嬢に東雲家の令息が揃ってるって……」
「今年の1年はどうなってるんだよ……」
「お静かに。彼の番です」
「……東雲蓮と言います。【菖蒲】で【聖剣使い】です。よろしくお願いいたします」
(……【聖剣使い】!?)
【聖剣使い】など、それこそ神話に出てくるような能力ではないか。【完全治癒】とは比にならない。それに、【菖蒲】だって珍しいのだ。私がいるために目立っていないだけで。
「では次……柊さん」
「はい」
柊か……たしか前回の【漆黒】術者は柊家出身だったっけ。柊家はそれをきっかけに勢力を広げていったのだ。
「柊玲奈です。【瑠璃】で【弓使い】です。よろしくお願いします」
そう言って柊さんは丁寧にお辞儀をする。礼儀正しい子なのだろうか。
「では次…………」
「……ふう」
やっぱり人が多いところは疲れる。
「帰りましょうか」
お母様が言う。
「うん」
そう返事をして車に乗る。
____これから、楽しくなりそうだ。
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