「あの日」の夜
静まりかえる庭。星がキラキラと、私を嘲笑うかのように輝く。
(あぁ………)
この目で、世界を見てみたかった。両親や、親しい者たちの顔を、見てみたかった。でも………
それももう、叶わぬことなのだと、分かってしまった。
「………だよなぁ」
(………!?)
咄嗟に物陰に隠れる。誰か来たようだ。私はここから立ち去ろうとした。
「な、まさか俺が生きている間に【漆黒】術者が現れるとは」
(………私のこと?)
足を止める。
「俺も驚いたよ、それにあの奈乃羽様がだなんて」
「そうだよな〜、奈乃羽様って、盲目なんだろ?いつも引きこもってるしさ、あの力、本当に奈乃羽様に扱えるのか?」
(………)
悔しいけど、本当のことだった。私は盲目ということを盾にして、いつも引きこもってばかりいた。そうやって好きなことをしていると、ほとんど希望を失っていた心が紛れる気がした。
「確かにな〜、あの力の代償が盲目だったりして」
(………!?)
その言葉は、深く絶望していた心に、深く深く、突き刺さった。咄嗟にその場から逃げ出す。
そんなわけはないと、分かっている。だが………
(本当にそうなら、この力なんていらない)
そう、心から思ってしまった。それが、言霊になってしまったのだろうか。それから、私が前回の【漆黒】術者に匹敵するような力を扱うことはなかった。
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