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第99話:大きな冒険?小さな冒険? 後篇


――安全地帯。


 逃走一つにしても、ちゃんと作戦を立てなければならない。


 とはいえ今回のクエストは道程が最適化されており、こういった安全地帯もちゃんと用意されているから、そこから逆算していけばいいので楽だ。


 安全地帯とは、魔物が襲ってこない及び襲ってきたとしても対処が容易である場所を、先人冒険者たちが発見して作り上げたものだ。


「はあ、はあ、はあ」


 大家さんは息切れしている。


 打ち合わせどおり荷物は全て置いてきた。


 ギリアンさんが今も交戦しているか分からないが、今のところギリアンさんも魔物も追いかけてくる気配はない。


 なお、逃げる時は、合流を待たずに帰還一手でいく計画だ。


 俺は大家さんの回復を待って、再び逃げて、別の安全地帯に逃げ込み、大家さんの回復を待って逃げる、それを何回か繰り返して。



 無事にゼカナ都市に到着した。



「ふぅ」


 思わず息を吐いてしまう。帰還時に魔物も出現せず運が良かった。


 大家さんは疲労のみ怪我無しだ。


 つまりこの時点で「三番確定」だ。


「大家さんは、そのまま自宅に戻ってください、無事でよかった、お疲れ様でした」


「あ、ああ」


「私は、このまま世界ギルド支部へ報告しに行ってきます」


「な、なあ、テックさん」


「はい」


「……ギリアンさんはどうなるんだい?」


「私達が無事に逃げたと判断したら交戦を解除し帰還すると思いますよ」


「一応聞くけど、こういう時に、救援部隊は組まれるのかい?」


「公的な救援部隊が組まれる可能性は限りなく低いです、なので救援部隊は私費で編成するしかないですね」


「……テックさん、アンタは」



「助けに行きません」



 ときっぱりと断言する。


「…………」


 大家さんは何も言わずギュッと口と目を閉じるが……。



「よく断言したぞテック、冷静さを失って助けに行こうとしたらどうしようかと思った」



「「ギリアンさん!」」


 とリュックを背負ったギリアンさんがいた。


「ど、ど、どうやって!?」


「ぷはは、怪我の有無とかではなく「どうやって」か、うんうん、ちゃんと冒険者として成長しているようでオジサン嬉しいよ」


「えっと、その」


「はいはい、ちゃんと説明するよ。なに、あの魔物はパワーと防御力は凄いがスピ-ドとスタミナの無さが欠点。だから適当におびき寄せて、充分に距離を取ったところで草むらに隠れる。すると相手は俺をすぐに見失って、どこかへ消えて行ったよ。ぶっちゃけると逃げるだけなら滅茶苦茶簡単な魔物なんだよね」


 とこともなげに言うが、、、、。


 それを冷静に出来るだけ十分に凄いと思う。


 これが、クラスD上位の戦闘職か。


 ここで、ギリアンさんはリュックを顎で指し示す。


「大家さん、ちゃんと野菜も全部入っていますよ~。という訳で、クエストは無事「最良」で終わりましたね。このままお店に持っていけばいいですか?」


「ああ、ありがとう、無事でなによりだよ、あのさ、ギリアンさん」


「なんですか?」


「えっと報酬についてなんだけど、これだけ野菜があればかなりの利益になるし、色を付けて」



「インセンティブはありがとうございます。でも契約書は絶対、お気持ちだけでいいんです」



「っ、でも……」



「お金の問題は潔癖でなければなりません、特に大家さんみたいに個人でも付き合いがある場合は」



 と毅然としたギリアンさんの言葉に大家さんは二の句が継げなくなる。


「わかった、既定の報酬だけ払うよ、金の問題は潔癖にか、アンタは時々、言葉に重みというか凄みを感じるけど……」



「家賃滞納しているアンタが言うなって感じなんだけどさ」



(´・ω・`)デスヨネ、スミマセン ←ギリアン


「…………」


「ご、ごほん! ま、まあ、今回のクエストはクラスCの魔物はあくまで「イレギュラー」で査定対象外なので、どの道難易度はDです。なので報酬額は元より問題ありません、それよりも今後も平に平に~」


「はいはい、言っておくけどこれで滞納しても大丈夫とは考えないように」


「もちろんであります!!(`・ω・´)ゞビシッ!」


「全く調子がいい、また頼むね、ありがとね」


「またよろしくおねがいします~」


 と店で野菜を卸してギルドへと帰ったのであった。



――ギルド:ジョー・ギリアン



「…………」


 ギルドに到着した後、俺はふらふらと自分のスペースに行くと、そのまま倒れ込むように座った。


 ずっと気が張りっぱなしだった、護衛ってこんなに心労が凄いのか。


「どうだった? クラスCの魔物は? 初めてだったろ?」


 とギリアンさんが聞いてくる。


「…………」



 クラスCの魔物、初めての邂逅、絶望に似た圧倒的な死への現実感。



 俺は学校の教官の言葉を思い出す。


 死へ恐怖の耐性って気質みたいなのがあるそうで、それこそ凄腕の戦闘職の冒険者が突然恐怖で戦えなくなるとか普通にあるそうだ。


 そう言ってくれた教官がまさにその例だったそうだ。


 クラスCの魔物と交戦して瀕死の重傷を負い、それがトラウマとなり戦えなくってしまって一線の冒険者を引退したと言っていた。


 だから臆病者とバカにする生徒もいたが、そういう事をちゃんと言える勇気も凄いと思ったし、あの教官の指導能力は一流だったなぁ。


「ギリアンさん」


「なんだい?」


「俺、冒険者になって初めて良かったって思ったかもしれないです」


「へぇ」


「今までどこかずっと落ちこぼたって思っていたんですけど、クラスCは、全然歯が立たないですし戦ったら絶対死ぬなって思って、交戦もギリアンさんに任せっきりだったのに、でも臆する気持ちは無かったことが、それが、こう、誇らしいというか、やるじゃん自分みたいな感じもあって」


 自分での変な感じ、全然大したことしてないし逃げただけなのに、なんでだろう、達成感がある。


 俺の言葉にギリアンさんは笑顔で頷く。


「間違っていないよ、死の恐怖に対面してパニックになる奴も多い、ちゃんと指示を守れるだけでも上等なものだ、よく大家さんを無事に帰したな、見事だったよ」


「ありがとうございます、頑張ります、いずれは戦力になれるように、ってそろそろご飯作らないと」


 とエプロンを取った時だった。


「ふっふっふ、ふが3つ、その必要はないぞよ」


「?」


「いや、疲れているだろうと思ってな、出前を頼んだ。もちろん俺のおごりだよ」


「あ、ありがとうございます」


「それとだ、実は別にお客さんが1人来るんだよ、そろそろかな~」


 と言い終わった時だった。


「こんにちは~! ギリアンさん!」


 と明るい声と現れたのは。



 ルアだった。



 ルアは俺を見つけると。


「久しぶり~ってのは、おかしいか、いやあってるのかな?」


 といつもの笑顔で見せてくれた。


「え? え? え? どうして? 久しぶりというか、い、いや、俺のこと、覚えていてくれてたんだ!」


「いやいや! あったりまえでしょ! クラン組んでた仲じゃない!」


 と、冒険を終えた俺は、こんな形で旧友(?)と再会したのであった。




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