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クラスS冒険者なんて辞めてやる! ~やりなおしの元世界最高位冒険者の異色冒険譚~  作者: GIYANA
冒険者として生きることは夢ではなく現実であること
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第91話:第二次温泉補完計画・Q


「ど、どうして、だれもいないんだよぉ」


 半泣き状態で、旅館の中を歩き回る。


 あの後、身の危険を感じて宿屋の中に戻り対策を練ろうと思ったが、旅館の中に誰もいなかったのだ。


 当然、寝静まるには早すぎる時間、静かすぎる旅館は客だけではなく従業員もまた1人もいない。


 つまり、、、。



 今の俺は正気じゃないってことだ。



 いつから正気を失っていたんだろう。


 ちょっと前まであんなに楽しかったのに。


 本当に楽しい冒険になる、ってウキウキだったのに。


 どうしてこんな目に、、、。


「ヒック、グスッ、みんなぁ、どこにいるのぉ」


 半泣き状態になりながら歩いていると。


「おいしい~」


「ひっ!!!」


 と目の前の部屋から聞きなれた声が聞こえてきた。


「あれ? 俺いつの間に」


 気が付けば旅館の中の別荘的な感じで建てられている明らかに豪華な客室の前にいた。


 ここがおそらくテドンさんが言っていた特等客室で。


 その中から何故かルアの声が聞こえてきた。


「へぇ、これ美味しい」

「ホリアさんのところにも卸している野菜ですからね」

「ん-、野菜から旨味が出ている、素晴らしいね」

「美容にもよさそうだ」


 ルアだけじゃない、他の3人の声も、、、。


 その時の俺は、不思議と吸い寄せられるように客室に入り、そっと少しだけ引き戸を明けて隙間から部屋の中を伺うと。



 全員横並びに背を向ける形で座っていた。



 話し声が聞こえているのに、俺が見た瞬間にまるで話した事実がなかったように静まり返る。


 耳鳴りがするほどの静けさ。



 そして4人の首がギギギギギと首が180度回転して……。



「つ、ぎ、は、お、ま、え」



「だあああああああ!!!!!!!!!!!!!!」



 と首だけが一斉に飛んできた。







「ひぃ! はぁ! ひぃ! はぁ!」


 俺は一目散に自分の部屋に戻ってガチャリと鍵をかけて、窓も全部閉める。


 気配を探る。


 気配なし、付近に気配なし。


「ふ、ふひっ! ふひひ、ふははは!! あははは!!!」


 嗤いがこぼれてくる。


「そ、そうだ! 何を恐れているんだ! 俺は持っているじゃないか! 無敵の戦闘能力を! チートを!!」


 俺はチートをもって異世界に転生した。


 確かに俺の無敵の戦闘能力は万能でもないし、不死身ではあるが不老も不死も伴わない。


 だが、、。


 すっと、軽く息を吸うと。


「はっ!!」


 俺は気を張る。


 これでこの部屋の全ての俺の攻撃をする全てに対処する事が出来る。


 ハンターハンターでいうところの「円」だ。


 しかも念能力と違って、一度気を張ってしまえば、俺が解除するまで眠っていても攻撃に対して自動的に体が反応してくれるのだ。


 つまり、、、。


「はは! ははははは!! これで完璧だ!! 何処からでもかかってこい!!!」


 俺は両手をバンと広げる。



「俺は!! 世界で9人しかいない世界最高位冒険者!!! クラスS!! カグツチ・ミナトだあああぁぁぁ!!!!」





「ん……」


 はっと目が覚めて、慌てて辺りを見る。


 部屋の中の何の変化もなかった、よかった、誰もいない


 やばいな、緊張で疲れたのか眠ってしまったか、俺がこんなミスをするとは。


 しかし眠る前と同様ちゃんと外敵に備えて体も動くように構えていた、本当に戦闘には便利な能力だよな。


 あれ、、。


 そう、部屋の中には何もないし、誰もいない。


 だが違和感に気が付く、それは、、、。



 部屋が明るくなっている。



「木漏れ日……?」


 そう、部屋の閉め切った窓からの木漏れ日。


 これ……朝日?


「おーい、ギリアンさん」


「ひっ!」


 と扉の向こうから声が聞こえてびっくりするが、、。


「え? え? テドンさん?」


 そう、テドンさんの声だ、そして。


「つーか、何してんだよ、折角いい所だったのに、部屋に戻るのなら一言ぐらい言えよ」


 とホヴァンの声も聞こえてきた。


「ホヴァン!? お前無事だったのか!?」


「はぁ? 無事って、お前昨日からなんか変だぞ」


 という声にテドンさんがとりなす。


「まあまあホヴァンさん、色々と気を張っていたんだろう。クエストでは常に我々を守ってくれていたからな、なあギリアンさん」


「は、はい」


 と、テドンさんとホヴァンのやりとりで、徐々に実感がわいてくる。


「あ、あの」


「どうした?」


「朝、なんですよね?」


「はっはっは、ギリアンさんは飲まないのに酔うのかい? ちょうど今日が昇っている時だよ、というか日の光が見えるだろうに」


 つまり夜が明けて、、、。


 ホヴァンもテドンさんも無事、おそらく他の3人も。


 つまり、つまりだ。


 勝った、、、。


 勝ったんだ!!!


 つまり俺は、、。


 生き残った!!


「? ギリアンさんどうした? 大丈夫かい?」


「だ、大丈夫です! ちょっと、まだ寝ぼけていたかも」


「なら丁度いい、俺達が朝早く来たのは、朝風呂に誘いに来たんだよ。眠気覚ましに酔い覚まし、日の出を見ながらの風情、一緒に楽しまないか?」


 朝風呂、、、。


 朝風呂!!


 やばい涙が出てくる!!


「わーいわーい! よっしゃ! 行きましょう!!」


 緊張して疲れた身体に日の出を見ながらの温泉!!


 考えるだけで幸せしかない!!


 日本人に生まれて本当に良かった!!


 俺は、戦闘態勢を解除して速攻で風呂の準備を終えて。


「お待たせしました!!」


 と扉を開けた先。




















 まだ夜は明けていなかった。
















 カグツチはすさまじい力で部屋に外に連れ出されて……。













 誰もいなくなった。




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