第87話:彼女が見た夢と憧れは
「採用おめでとうございます、ルア」
面接の帰り道、クォイラは馬車の中でルアに話しかける。
カグツチから採用意向を聞いたクォイラはルーテと連絡を取り面接を実施、特にトラブルなく傘下クランに無事に採用が決まった。
ヒュレンお抱えの法律家が書類を作成しサイン、これで彼女は正式にギルド・ジョーギリアンからヒュレンが所属するギルド「ルーテ」に所属する冒険者となった。
「ふう、ちょっと緊張しました。迫力ありますね、ルーテさん」
「まあ公国の女性の頂点冒険者ですからね、まったく、あのバカは」
あのバカとは当然にカグツチの事、先日の「トップ会談」の後、交渉人を急遽自分にしてきて、訳を聞いたが「何だが分からないけど出禁食らった感じ」と言っていた。
まあ多分やらかしたんだろう。
「あの、クォイラ嬢、今回の件って、やっぱり」
「はい、カグツチより、それとなく見てくれと言われていまして」
「そう、だったんですか」
以前カグツチがギリアンとしてルアに対して聞いた「ギルドマスターの責任ではない半分」についての本心、それは。
――現在この状態で、もし有力冒険者から誘いがあった場合、君はどうするのか
というものだった。その問いにルアはこう答えた。
――「はい、私は憧れの人に少しでも近づきたいんです」
と。
その意志を聞いて今回の場が実現したのだ。
「カグツチさんは私の為に、どうしてそこまでしてくれるんでしょうか」
「セクハラのお詫びじゃないですか?」
というクォイラの言葉に吹き出すルアだったが。
「…………」
何やら神妙な面持ちになる。
「……ひょっとして、余計なお世話でしたか?」
「いえ! まさか! あの、ギリアンさんとか、商会長さん達とか、ホヴァンさん、ルードさん、短い間でしたけど、楽しかったなぁって思っていて」
「快く送り出してくれたのでしょう?」
「はい、皆さん祝福してくれました……」
再びルアは言葉を切り黙っていたが、何かを決意した表情で話しかける。
「クォイラ嬢、その、変な話、というか、私が見た夢の話をしていいですか?」
「……夢?」
「あの時、グパハーに襲われた時の夢の話です」
「…………」
●
ルアの夢の話。
あの時、突然意識を失ったと思ったのに何故か半覚醒状態で、崩れ落ちる自分を抱きとめて、地面に優しく寝かせてくれるのは。
ジウノアだった。
「へぇ、中々やるじゃない、クラスBの魔族に手傷を負わせるなんてね、ふむ、怪我は無し、よかったよかった、カグツチもちゃんと守ったね~」
「守ると言っても俺は特段何もしてないけどな、言っただろ、才能があると」
とカグツチに対して言葉を発したジウノアに言葉を返すのは、、、、。
ギリアンだった。
一方で視線を移すと、ギリアンを前にしてグパハーは震えて縮こまっている。
「その様子を見ると俺を知っているのか? クラスBの魔族如きがなぜ俺を知っている?」
「%’&%%#$様の」
「ああ、なんだ、取り巻きか、生き残りがいたのか、俺も詰めが甘いな」
「っ!」
「おっと」
と逃げ出そうとしたグパハーの片腕をギリアンが掴むとボキリと折る。
「ギャアアア!!」
と悲鳴を上げるグパハーだったが。
「おっと、手加減してくれたまえよ、貴重なサンプルなんだ」
横からギリアンを止めるのはティンパファルラだった。
「骨を折ったところで後で治せば問題ないだろう」
「その治る過程も研究材料なのさ、いやはや、まさか魔族が出現するとは、マントガレに続き貴重なサンプルゲットだぜ♬」
「何故そのフレーズを……」
「まあまあ」
とティンパファルラは、グパハーに近づく。
「た、助けテ」
「あっはっは! 魔族にしては洒落が利いていない! 君は知性ある魔族ならこれからの境遇に考えが及ばないのかい? ほらよっと」
とぶすりと薬を注入すると、グパハーは意識を失った。
「ファル、運ぶ準備が出来ましたよ」
とアルスフェルド子爵家紋章入りの馬車が到着し、クォイラが発言する。
「いつもすまないねぇ、てなわけでボクはこれから公国研究所につめるからね~、クォイラ、護衛よろちくび」
「はいはい、ジウノア、世界ギルド支部への報告を」
「了解、その名目で救急馬車は既に要請してある。フェノー教へも報告しておかないとね、カグツチ」
「分かってる、俺が一緒に乗って病院に行くさ」
とその横でウキウキしながら馬車にグパハーを放り込むティンパファルラ。
「いやぁ興味深い、君達は雄しかないにもかかわらず、いや雄しかないからこそ破壊的な手段でツガイを得ようとするのかな~、実験結果が今から楽しみだ♬」
「…………」
ルアはそんなアマテラスの4人をぼんやりと見て思った。
魔族と遭遇する事は事故と称される。
だったらクラスSを襲ってしまったことは、グパハーにとって魔族としての生を終わらせる事故なんだろう。
そんなことをぼんやりと考えていた。
●
「これが私が見た夢の内容です」
「…………」
「クォイラ嬢」
「なんです?」
「あの時、私を助けてくれたとき、カグツチさんはいたんですか?」
「いいえ」
断言して、それ以上語ろうとしないクォイラ。それをみたルアは察する。
「そうですね、やっぱり夢だったんですね。でも憧れの人が助けてくれる夢を見るなんて、私って結構少女趣味かもしれません」
「別にいいでしょう、女の子なんですから」
とここで会話が終わり、クォイラは外の景色を見ているルアを見る。
(魔法耐性まであるのか……)
ジウノアなら睡眠魔法をかける力をしくじったりはしないだろう。つまり想像以上に彼女に力があったという事だ。
――「バレてるわけないだろう? ルアを誤魔化すなんて朝飯前なのだぜ?」
これはカグツチの言葉。
今のタイミングでこの探りを入れたという事は、相当にやらかしているな。まあアンポンタンが肩入れした時点で、分かっていたが、、、。
「ルア」
「はい」
「何処で下ろせばいいですか?」
「中央通りまで、ギリアンさん達が今日は私の為に送迎会をしてくれるみたいなんです」
「そうですか、楽しんでください」
――同時刻・ギルド・ジョーギリアン
「ひがしむらやまぁ~、いっちょめいっちょめワオ! いっちょめいっちょめワオ!」←カグツチ
と全裸で踊り狂っている俺に。
「「「「「「だーっはっは!!」」」」」」
と半裸で笑い転げるホヴァンとルードと商会の爺様達。
なぜ俺が全裸で踊っているのかというと脱衣賭けカードで全裸になったからなのだ!
何で脱衣賭けカードなんてやる事になったかというと。
ルアと脱衣賭けカードゲームしたい
↓
でも実際に提案したら殺されるし、犯罪やん
↓
男同士なら犯罪にならなくね?
↓
よしルアが来るまでやろう!
↓
カグツチが最下位、全裸で踊り狂っている ←今ここ
「ちょっとだけよ~、アンタも好きねぇ~」
と全裸のままカトちゃんの真似をしていると……。
「ん?」
と視線を感じてそちらに向けた先。
いつの間にか来ていたルアと目が合った。
「きゃああああ!!!!」←カグツチ
●
「もう! エッチで目で見てたんでしょう! 知ってるんだからね! 私の裸を舐めまわすような目で見ていたの! 許さないんだからね! ぷんぷん!!」
「あはは、エッチな目で見てなんてないですよ~」
というルアに。
「うおおおん! うおおおん! ルアちゃーーん!!」
と脚に縋りついて号泣するホヴァン。
「傘下とはいえヒュレンとは凄いな、流石首席殿、また何かあれば協力を頼むよ」
と激励するルード。
「息子の嫁(ノД`)シクシク」
「脚(ノД`)シクシク」
「おっぱい(ノД`)シクシク」
「妾(ノД`)シクシク」
と悲嘆に暮れている爺様達。
ちなみに今回の送迎会の費用は爺様達が持ってくれたのだ。
そんな面々を笑顔で見ていたルアだったが。
「あの、ギリアンさん」
と話しかけてきた。
「ん? どうしたの? また俺の裸みたいの? しょうがない、他ならぬルアの頼みなら文字通り一肌脱ぎましょう、ちょっと向こうむいててくれる? 恥ずかしいの(/ω\)イヤン」
「ちょっと外で話しませんか?」
――ギルド・屋上
ギルドジョーギリアンは、裏通りにあって夜はちょっぴり物騒なんだけど、この大家さんの父親が建てた秘密基地には屋上がある。
俺とルアは2人で屋上の縁に寄りかかって立っている。
「そういえば、話していなかったなと思って」
「え?」
「以前、海外活動を薦めてくれたじゃないですか、その時、私が海外ではなくルザアット公国で冒険者活動を続けたいと言った時です」
「ああ、あったな」
「私、あの時、キコ王国にいたんです
「え?」
「私はあの時、ドラゴンの姿を見ました、もっと言えば「彼女」と話しました」




