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クラスS冒険者なんて辞めてやる! ~やりなおしの元世界最高位冒険者の異色冒険譚~  作者: GIYANA
冒険者として生きることは夢ではなく現実であること
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第84話:事故に対しての覚悟を


「さて、今日もクリコの花なんだが、今回はいつもと違って長く険しい道で行くぞ、そして一泊二日の道程でいく」


「ふっ、任せろカグツチ、ルアちゃん、君が水浴びしている時は俺が護衛するからね(キラッ!)」


「いや、ちょっと待ってくれ、今回は俺とルアの2人だけで行く」


「えーー!! お前覗くつもりだろ!!」


「のぞかねーよ! 今回の長く険しい道は育成を兼ねているの!」


「育成? ルアちゃん既にクラスDでも中位レベルじゃん、しかもまだ伸びしろあるし」


「(こいつ意外としっかり見てるんだよな)んな事は俺だって分かっとるわ、実際の一泊二日でのキャンプ能力を見たいんだよ」


「? 別にいらなくね? 冒険者学校でさんざんやっただろうに、それにノバルティス冒険者学校のパンフ見たんだが、このレベルの道程はちゃんとカリキュラムに入っていたぞ、中には7日間の長期工程で食料は現地調達とかあったな」


「お前のそういうところ凄いマメだよな……って俺はルアに話しているの! ルア、冒険者学校で教わったのは分かる、だが直接見せてくれ、わかったかい?」


「はい! 分かりました!」


「よろしい!」


「ルアちゃん、水浴び覗かれたら言ってね」


「はい、頼りにしています(にっこり)」


「えへへぇ~(デレデレ)」


 と鼻の下を伸ばしているホヴァン。


「言っておくが、覗きの第一候補はお前だからな」





「長く険しい道は、クラスF程度のゴブリンより強いぐらいの魔物しか出ない。それでも油断は禁物だけどな」


「はい」


 と言いつつ歩みを進める。


 油断禁物と言いつつも緊張感はない、長閑と言っていい程の行程だ。


「このクリコの花のクエストはさ、中には彼女に自分が摘んだのをあげたいからと護衛クエストみたいなこともしたりするんだよ、その分割高になるけど、いつか護衛クエストもやれたらいいな、また全然違う緊張感があるんだ」


「へー」


「ルアは、花束なんか貰ったことあるのか?」


「はい、ホヴァンさんから」


「…………」


 あいつめ。


「って、ちょっと待った、今朝見たギルドに飾ってあるクリコの花って」


「はい、そうですよ」


「そっか……」


 な、なんだろう、まあいいや、深くは突っ込むまい。


 と景色を眺めながら、雑談をしてテクテク歩いていく。


 道中魔物には遭遇したけど、もうルアなら難なく倒し、コアを回収しつつ、今日のキャンプ地に到着する。


「ほれ、ここがキャンプ場所だ」


「わあ」


 少し開けたところにあるところから見える山々の景色に感嘆するルア。


「俺はここからの景色が好きでね、んで、ここから歩いて10分ぐらいのところに、群生地がある。ほれちょっと下覗いてみな」


 とルアは人がぎりぎり登れる急斜面の覗くと20メートル下に洞窟が見えた。


「アレは先人たちが作った人口の洞窟でな、ここがみんなが使う安全地帯だ、ここら辺に出没する魔物が忌避する草木で入口が覆われている」


 と2人でざざーッと滑る形で入口に辿り着く。


「っと、結構枯れているな、こういう時は、気づいた冒険者が現地で補充するのがマナーだ、この草木は、下にたくさんあるから持ってくるぞ~」


「どうして、この草木を忌避するんです?」


「単純にここら辺に出没する魔物にとってこの草木って毒なんだそうだ。人間にとっては別に毒でも何でもないから安心しな」


 と更に斜面を下るとそこがその草木の群生地だから、2人で回収して整える。


「よし、こんなものだな、これがあるからこそ一泊二日であるにも関わらず、小さな寝袋と簡易食料だけでいいのさ、リュック一つで事足りるのは素晴らしき事よ」


 こうして俺とルアは、そこで簡易食料を食べる。


 食料。


 当たり前であるが、人は食べないと死ぬ、そしてただ栄養補給できれば良いという話ではない、味も大事である。


 実際の戦時行動中でも支給された食料が余りにも不味くて投棄したと記録に残っているぐらいだ。


 だからクォイラの生活魔法使いの重要性が活きるし、トライアウトでは安い、保存性抜群、携帯性抜群、だが不味くて有名な簡易食料をコスパを抑えて美味く仕上げるノバルティス冒険者学校の特別枠の生徒は引く手数多だった。


 まあとはいえ。


「不味いですね~」


 簡易食料とは簡単に言うと滅茶苦茶不味いカロリーメイトの親分みたいなと思ってもらえれば分かりやすいか。


「人間に必要な栄養価だけを安価に簡単に味を度外視にってコンセプトだからねぇ、確かに安いんだよなぁ」


 ともぐもぐと食べる、まあ一泊ならこれで我慢だ。





 そんな訳で2人で寝袋で寝て翌朝起きる。


「さて、クリコの花を採集して、我がホームへ帰りますか。と、その前にちゃんと片付けしないとね! 着た時よりも美しく! 分かるかね?」


「ギリアンさん掃除下手だから私がやりますよ」


(´・ω・`) ←俺


 まあこんな感じで遠慮もなくなり大分打ち解けてきたのである。


 そんな感じで掃除をしていざ出発、クリコの花の群生地は、歩いて10分程度。


 道は変わらず平坦で、ハイキング気分でノンビリ歩ける。


 そんな道を歩いていた時に、人影が見えた、それは道の真ん中に立ち、こちらをじっと見ていた。


「…………」


 その姿が目に入った時、ルアはよく分からなかった。


 その姿が実像を結んだ時。



「ギリアンさん!!!!! 逃げてクォイラ嬢に報告を!!!!! ぐあぁ!!」



 絶叫に近いルアの声を塞ぐように触手の様なものが伸びて首に巻き付く。


「うるさいなァ、あらラ、やっぱりソうだ、女ダ、ラッキーだネ」


 そう、姿は人に似ている、


 そして人間の言葉を話せる。


 だが首元から伸びている歪な10本の触手のようなものが、それが人ではないことを物語る。



 その名はグパハー。



 クラスBの「魔族」である。





 クラスB以上は「魔族」と称される。


 それは何故かというと知性と教養を兼ね備えるからだ。


 その知性は、例えばクラスAの魔族ともなれば人知を超えた「リターン」を提供する事が出来る。


 だがそれは悪魔の取引、過去不老不死の薬を対価に一国が滅んだこともある程だ。


 だからこそ程度の差関係なく、魔族との取引が発覚した場合は、ほとんどの国で極刑に処される。ジウノアと一緒に担当した植物型の魔族、マントガレと対戦した時もエリクシールを対価に公国の枢機卿が取引し、国外追放(魔物による殺処分)となっている。


 その魔族たちの生態は分かっておらず、魔族の検体確保は世界で過去20例程度、未だに何処に住んでいるのかすらも分からないが、稀に人里に現れて、被害をもたらす。


 その中でグパハーは割と生態は知られている。


 特徴的なのは雄しか生まれない種族であること。


 そして繁殖方法であるが、首元から伸びている触手のようなものは実は生殖器。


 首元から生えている10本を使い、種族を問わず10体の「雌」をツガイに選ぶ。その方法は破壊的で妊娠するもほとんどが耐えきれずに死ぬ。


 稀に生き残る幼体がおり、それで繁殖している、これが10本必要な理由。


 そしてその生殖器はルアの首を絞めているように、その攻撃にも使える程に狂暴な武器。


 そしてこれだけ生態が判明しているのは人間の女も毒牙にかかったことがあるからだ。



 そしてクラスBの魔物は例外なく戦闘能力は桁外れ、故に遭遇は「事故」と称される。



「おヤ、いいネ、気に入ったヨ、お前ガ、1人目ダな」


 ニヤリと嗤うグパハーだったが。


「ギ、ギリアンさん! 何しているんです、ぼーっとしないでください!」


「…………」


「冒険者の鉄則、教えてくれたじゃないですか! せ、戦闘職は消耗品であると! すぐに私をおいて逃げてください! ギリアンさんの方が強いから逃げ切れる可能性が高いです、顔役はクォイラ嬢でしたよね?」


「ルア、このクラスBの魔物の生態は」


「し、知ってますよ!」


「…………」


「私、こう見えても、身持ちは固いんです、いざとなったら自害用の毒を飲み込みますよ!」


「……そうか」


「早くしてください!」


 とその瞬間、もう一本の生殖器が俺に向かって伸びたところで。


「ギャアアアァァァ!!」


 と叫んだのはグパハーだった。


 生殖器を軸にして、逆上がりの要領で靴に仕込んでいたナイフで生殖器を切りつけたのだ。


「流石商会長さん推薦の刀屋のナイフ! ってそれにしてもいたなぁ! アンタみたいに女をステータスとか物としか扱ってない顔だけの男! 騙される女も多かったっけ! 私は全然好みじゃないけど……ってあれ?」


 とジロジログパハーを見る。


「うわぁ! よく見ると無茶苦茶醜男じゃん! 救いようなしね!」


 そうやってルアは挑発することでヘイトを自分に集めている。


「ねえ、ギリアンさん、クォイラ嬢に伝えれば! そ、そのままカグツチさんに伝わって! ひょっとしたら私のピンチ直前にカグツチさんが助けに来てくれたりするかもですね!」


「…………」


「ク、クラスSだったら、こんな奴雑魚ですよね? ほら、憧れの人が! 自分のピンチで助けてくれるとか女の浪漫じゃないですか!」


「…………」


 ルアは独り言のように言うと、グパハーを睨むとうんうんと頷く。


「ああ、なるほど、一つ生態の謎が解けたわ、顔も頭も悪いからそんな手段でしか女を手に入れられないんだ、可哀そうに……」


 ここでルアは言葉が止める。



 グパハーの動きが止まっているのだ。



 生殖器を庇う訳でもない。



 切り付けられた生殖器に対して、ダラダラと青い血が流れているのに、流れたままだ。



「な、なに? 直前でヘタレになった?」



 と挑発を続けるが、その文句が自分で言っていて空々しく響くことが彼女は不思議だった。



 なに、どうしたんだろうとルアは考える。



 あれ? え?



 グパハーが震えてる……。



 いやいや、なんでよ、そんな生態聞いてないし、ひょっとして異常行動……。



 いや、ちがう、やっぱり、震えていて……。



 恐怖……。



 恐怖?



 え? え? 恐怖? なんで?



 いや、あれはどう見ても恐怖だ。



 恐怖? 恐怖ってなに?



























 私の後ろの、何を見ているの?




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