第83話:マスコミ取材を受けることになる件で
――マスコミ
色々叩かれる存在であり「マスゴミ」なんて表現もされたりする。
ただ視点を変えるとある程度事情が見えてくる。
まずマスコミは公的機関ではなく純然たる民間企業であること。
民間企業は経済的利益を追求する組織であるということ。
そしてマスコミにとって経済的利益を追求するための方法は「情報提供」であること。
つまり「情報は商品」であり、商品をいかに高く売る手腕が「一流のマスコミ」という事だ。
だからマスコミが民間企業叩きは必要最低限にして、政治家を含めた公務員叩きに躍起になるのは、商品として高く売れるという事に加えスポンサーではない為不利益を被らないだからだ。
つまり民間叩きは、社会的正義の建前が達成できるかもしれないが、今後、多大な損失が出るリスクがある、
一方で政治家と公務員叩きをしておけば社会正義の建前が達成できる上に、利益の損失が出るリスクがゼロ。
となれば後者を採用するのがプロだ。
んで冒険者新聞は、NHKと民放を足して2で割ったような感じと言えばわかりやすいだろうか。
冒険者新聞は、まず運営元が世界ギルドであること。
そして運営資金は冒険者ギルドや冒険者から徴収した、NHKでいう「受信料」で運営されている、つまりスポンサーが存在しないから公平な報道ができる。
ただし、もといた世界で不倫やら迷惑ユーチューバー等の下世話で下劣な情報が売れるのも事実。
そこで登場するのが、その手の情報を扱う三面記事だ。
更に公国に多大なる影響を及ぼすセシルのスキャンダルがあれだけ公然と報道できるのは、公平という建前に加えて冒険者新聞が「上級国民相手にもひるまずスキャンダルを報道できる」という大義を掲げることが出来るという事情もある。
更に冒険者新聞の取材に対して、ギルド側は協力する義務を負うのだ、それがどんな下世話な取材であっても。
無論それだと、もといた世界と同じくマスコミが暴走するので、世界ギルドが厳格に報道規定を定めており、違反した場合は投獄されるなど苛烈な処罰が来る。
要は冒険者新聞記者にとって取材は「クエスト」なのである。
と語ってきたものの、確かにさ、提供する情報の質は高いんだけどさ、世界情勢も扱うから冒険者以外の購読者も多いのも事実なんだけどさ。
クラスSにとっては迷惑極まりない存在であることに変わりはないんだけどね。
::取材の一部抜粋
――ルア・リームは何処へ?
「クエスト中です、責任者は私ですので代わりに私が取材を受けます」
――ルアについて、知っていましたか?
「冒険者新聞で存在を知りました」
――彼女がここに来た経緯は知っていますか?
「他のギルドに断られてウチに流れ着いたとだけ聞きました」
――ノバルティス財閥についての忖度が理由で他のギルドに断られたのですか?
「それはそのギルドに聞いて下さい」
――ルアを冒険者として契約した理由を教えてください。
「そりゃあ公国最高峰のノバルティス冒険者学校の首席ですよ? 逆に採用しない理由があれば聞きたいですね、私にとっては他のギルドが断ってくれてラッキーでした」
――ギルドマスターは冒険者ですか?
「はい、現役でやってますよ、兼業ですね」
――ランクを教えてください
「クラスDです」
――クラスDの冒険者としてそして、ギルドマスターから見てルアの才能はありますか?
「間違いなくあります、私が越えられるのは時間の問題ですかね」
――ルアは普段どんなクエストをこなしているのですか?
「色々ですけど、都市役所さんにはお世話になっていますね」
――都市役所を選定した理由はなんですか?
「理由も何も、ウチみたいなギルドが斡旋できるクエストなんて都市役所さんが依頼する公共クエストぐらいしかないでしょ、それで何とか糊口をしのいでいます」
――ルアの冒険者活動に順調ですか?
「それは正直どうなんですかね」
――それはクエストを達成するにあたり障害があるということですか?
「クエストへの障害なんてありませんよ、繰り返すとおり都市役所さんの公共クエストなんで。私が言っているのは彼女の冒険者人生としてという話です」
――もう少し具体的にお願いします。
「才能がある人材に対して良いクエストを彼女が挑戦できない状況そのものについてです、まあこれは「半分」は私の責任なんですけどね」
――責任ではない半分とは?
「さっきも述べた公国最高峰首席を取っておきながらギルドに門前払いされた状況です」
――それは遠回しにセシルを非難しているのですか?
「? セシルの話なんてしていませんよ。というよりもただの新人冒険者ですよ? どうしてセシルが彼女を気にかけるんです? そんなに器は小さくないでしょう」
――ここのギルドはカグツチ派であるということですか?
「? ですからカグツチの話なんてしていませんよ。彼女が目標とする冒険者であるという事は知っていますけど、私は知り合いでもなんでもないので、というかカグツチ派ってなんですか?」
――憧れるのを辞めましょう、この言葉に裏があると考える人も多いので
「グハァ!!」
――どうされました?
「グハァ! ゲホッ! ゴホッ! 失礼、気管にちょっと、いや、別に、裏も何もないんじゃないすかね、いや、憶測ですけどね、もういい加減よくないすかね、しつこいってそれこそカグツチ思ってそうだなぁ、そもそも憧れるのを辞めましょうのくだりさ、裏も何もないですよ、だってあれパクリですよ、俺にはわかるんです、あれ絶対パクッてます。いやパクリ元は凄いんですよ、それこそね、昨シーズンは史上初の50‐50達成した時に6打数6安打3本塁打10打点とか、その時も散々宇宙人とか言われて人間扱いされなくて、今シーズンは流石にそんな伝説は作れないだろうMLBは甘くはないだろうと思いきや地区優勝決めた試合で6回無失点10奪三振にホームラン3本とかやって、ヒット作飛ばした漫画家から「馬鹿が書く漫画」とか言われて、試合後のコメントがホームラン3本がついでみたいに打ったとかインタビューで答えていて、チームメイトからも機械で出来ているか確かめないととか言われたり、バスケの神様に例えられたり、凄すぎて解説者が放送事故レベルの無言かましたりとかして、しかもその先のワールドシリーズでは、そんな伝説の試合はもうないだろうと思ったんですけど、まさかの長打2本本塁打2本の後は4回連続申告敬遠というワールドシリーズ記録を叩きだして、更に四球の加えての一試合9連続出塁とか、いやさ、両方リアタイしてたんだけど、嬉しいとか凄いとかって、活躍が凄すぎると感情飛んで無になるんだなとか新しい発見があって、しかもそのワールドシリーズはその大谷を超えて山本が凄すぎたんですよ、完投した試合はもう面白かった、それであの最後のゲッツーは本当に声が出た、凄かった、ワールドシリーズMVPですよ、三勝って凄いですよ、ブルージェイズファンのリアクションの動画とか漁ってみてたんですけど、なんというか、贔屓チームへの愛って、日本もアメリカも変わらないんだなってのがちょっと嬉しく思ったり、何気に相手チームに対してのリスペクトもあったり、いやぁ、それにしても世界最高峰の野球リーグで世界一を決めるシリーズで日本人大活躍過ぎて、とあるアメリカ人は「ロサンゼルス・ジャパニーズってチーム名変えろ」って、もう最高、更に試合全部が劇的な試合展開も含めてもう面白過ぎるし、大満足過ぎる、そう思いませんか?」
――何の話をしているんですか?
「っとごほん! 失礼! ともかくルアの現状には、ギルドマスターとして憤りを覚えているのは確かですね」
――ルアと今後も契約を続けるのか
「もちろんです。ただ繰り返すとおり、彼女の冒険者生活の「半分」をどうにかできないかと思っているので、その半分が解決できることを祈っています」
とそんな感じで取材を終えた。
「あの最後にいいですか、ギリアンさん」
「なんです?」
「我々の取材を受けるのは初めてですか?」
「はいそうですよ、何故です?」
「……そうですか、失礼、かなり慣れているというか、割とはぐらかされたかなぁ、と思いまして」
「まさか、緊張してましたよ、初めてなので」
とだけ残して後にした。
ま、向こうの勘が大正解、散々取材なんて受けたからな。
「はい、もう出てきていいよ~」
と声をかけるとひょっこりとルアが顔を出した。
「…………」
何やら神妙な顔をしている。
「なんだ、気にしているのか、ま、スキャンダラスの方向に質問を向かわせようとしているのが分かれば、あんな感じで交わせば大丈夫だよ」
「大丈夫なんですかね」
「まあ、三面記事には載るかもな、まぁセシルに忖度していることが悪でありセシルにも失礼じゃないかみたいな感じに話していおいたから大丈夫だよ」
「本当にそんなことになるんでしょうか」
「ま、冒険者新聞は信用し過ぎるのは禁物だが、一定の信頼がおけるぜ。そこは俺達から会費を徴収する形でやっているからスポンサーが存在しないってのがでかい。ぶっちゃけると、無名の一冒険者のことだからパパラッチ的な事もしてこない、ニュースは世界中で起きているからな」
「でもセシルとかカグツチさんとか、特にセシルのスキャンダルも報じていますよね」
「そうなんだよね、クラスSともなると、それも関係なくなってくるんだよな(怒)情報が商品であることは変わりないし。世界的冒険者ってことでそれこそパパラッチ的に追い掛け回されて、所在地が常に筒抜け状態になってどれだけ苦労したか」
「そうなんですか?」
「って週刊文春に書いてあった(滝汗)」
「え?」
「えっと、ほら、クラスSともなると冒険者新聞に影響を及ぼすからトップと繋がっており癒着状態で忖度するという噂がまことしやかにささやかれていて」
「また急に嘘くさくなったような」
「ま、まあ! それはおいといて! ルア」
俺はルアに向き直る。俺の真剣な表情を見てルアも表情を引き締める。
「さっきの取材で俺は言った、ルアの現在の状況は半分は俺の責任でもあるし、もう半分は俺の責任ではないと」
「…………」
「その俺の責任ではない半分について、本心を話して欲しい」
●
「…………」
事務作業を終えたルアも自宅へ戻り、ギルド内で1人で思考を巡らせている時だった。
【カグツチ、今大丈夫ですか?】
とクォイラの声が木霊する。
「クォイラか、どうだ、例の件は?」
【その件で、あなたの耳に入れておいた方がよい事案が発生しました】
そう言うクォイラはとある報告を俺にしてくれた。
【どうします?】
「…………クォイラの考えを聞かせてくれ」
【問題ないと思います。私自身も確かめたいという気持ちもありますから】
「……わかった、そちらで段取りは頼む、決行日が決まったら教えてくれ」
【分かりました】




