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クラスS冒険者なんて辞めてやる! ~やりなおしの元世界最高位冒険者の異色冒険譚~  作者: GIYANA
冒険者として生きることは夢ではなく現実であること
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第82話:……お見事


――前回までのあらすじ


 冒険者社会から干されたルアは流れ流れてギルドジョーギリアンに所属することになった。才能豊かな彼女を何とかできないと思い、ギルドで唯一所属している冒険者、ゼカナ商会の顔役の爺様達で構成されているクランに声をかけたのであった。


「どうだね? 妾になれば不自由はさせないよ(キリッ!)」←商会長さん


「あはは、私には心に決めた人がいるので、息子さんのお嫁さんにも、お妾さんにもならないですよ~」


 と愛嬌良く接するルアに。


「「「「そっかー残念デレデレ」」」」


 スケベじーさんたち初対面ですっかりメロメロだ。


 そう、彼らがコネだ、しかもこのクランは戦闘職が欠けているという珍しい形態でもあり需要も満たす。


 商会長さんにルアの事情を話したところ一発オーケーをしてくれたのだ。


「でも商会長さん、本当に大丈夫なんですか? ルアと公然と繋がっては色々ビジネス面で」


「いらぬ心配だよギリアンさん、ウチラは地元密着での強みを持つ商会だからな。そりゃあ取引先にギルドもあるしクランメンバーに冒険者雑貨屋もいるが、いくらでも交わす用意があるさ、まあ我々を敵にまわそうとは思わないだろうよ」


「それは失礼、頼もしいです」


 そういえば大家さんもゼカナ商会はゼカナ都市中だけではなく都市外にも取引相手を持つから、それこそ敵にまわすとゼカナ都市で商売ができないと言っていたなぁ。


 とそんな事を考えていると今度は商会長さんが話しかけてきた。


「ギリアンさん、ビジネスとして聞きたい、彼女の才能はどれぐらいだい?」


「実力はクラスD程度ですが、将来はクラスBを見込める程の逸材です」


「わかった、アンタは冒険者としての嘘はつかないタイプだ、信じよう」


「恐れ入ります」


「それと冒険者新聞で読んだけど立場が悪くなったと書いてあった。だがマスコミ情報だけだとイマイチ判断が出来なくてな、それは本当なのかい?」


「本当です、言い方を選ばなければ干されています、私のところで契約したのが良い証拠だと」


「彼女の向上心は?」


「あります、野心家ですね、ただこのままだと」


「ふむ、分かった、才能を埋もれさせるのは惜しい、ルアちゃん、ちょっといいかい?」


 と商会長さんはルアを呼ぶ。


「はい、なんですか?」


「君に一つクエストを頼みたい、クリコの花の採取クエストだ」


「クリコの花……」


 クリコの花、果物屋の倅の「はじめてのくえすと」があった時に採集したやつだ。


 以前にも説明したが、クリコの花とは意中の異性に送ると送ると幸せになるという言い伝えがある花で、要はバレンタインに必要なチョコレートのようなものだ。


 難易度はD、一人前であることが求められる。


「商会の花屋がクリコの花を入荷したいと言っていてね。その話をこちらにまわしてもらったんだ」


「っ!」


 その言葉で表情が引き締まるルアに俺は話しかける。


「ルア、その表情を見るに分かっている感じだけど、クラスDってのはこんな感じに責任が伴う、いいかい? 商会の人達は「信用」でこのクエストを持ってきてくれた、その信用に答えないと、このクエストは二度とこなくなるぞ」


「頑張ります!」


 と元気なルアの返事に笑顔になる商会長さんは俺に話しかける。


「ギリアンさん、えっと」


「分かってます、俺も付いていきますよ、さてルア、このクリコの花の群生地なんだが、ルートは二つある、長く険しい道、短く簡単な道だ」


 長く険しい道は、宿泊を伴うが出てくる魔物は精々クラスF程度。


 短く簡単な道は子供でも行けるが、魔物はクラスDが出る。


「当然に簡単な道一択だ。いいな?」


「はい!」



「それと俺が付いていくのは、ルアを助ける為じゃなく失敗を防ぐためだという事を肝に命じろ」



「え?」


「ルアが死んだとしても俺がクリコの花を採取し届ければ、それは「クエスト成功」って意味だ。そうすれば商会長さんの信用は失わずに済むからな、クラスDってのは、そういうことだぜ」


 という俺の言葉に。


「はい! やってやりますよ!」


 と元気良く返事をしてくれた。





 このクエストにおいて短く簡単な道を選ぶのはほとんどいない、いたとしてもクラスDでも上位に限られる。


 短く簡単な道は「はじめてのくえすと」でも述べたが子供の足でも行って帰ってこれる距離であるにも関わらずだ。


 その原因は今、目の前にいる。


「グルルル」


 と俺達に向かって唸るのは、このクリコの花の群生地を縄張りにするクラスD最強の狼型の魔物だ、この魔物は短く簡単な道を選んだ場合絶対に出る。


 何故なら、このクリコの花は、他の草食動物の好物でもあり餌をおびき寄せる事が出来てかず、地理状況もよく、良い事しかないからだ。


(しかしラッキーだな、群れで出てくれた)


 絶対に出るとはいえ、たまにはぐれた奴とかもいるからな。ふむふむ、数は10頭、中規模程度か。


 さて、どうする、今までの相手とは格が違う、複数相手はスタミナ配分も問題になってくるぞ。


「…………」


 ルアは、武器を取り出し、そのまま。


「はぁ!!」


 ある一頭を見定め、いきなりの距離を詰めての槍の三連撃、魔物はまさかピンポイントに来るとは思わず一瞬怯んだのが運の尽き。


「グアアオオ!!!」


 と二連撃目が急所に悲鳴を上げて地面にのたうち回り、そのまま首を落として止めを刺した。


(ほう……)


 群れのボスを瞬時に見極めて、それを最初に仕留めたか。


(正解、ちゃんと一発目で見極めたね)


 この狼型のモンスターは、哺乳類によく見られる序列を物理的な強さで階級を作る生物だ。


 それを知っていれば一番強い奴を仕留めるのは鉄則だ何故なら。


「…………グルル」


 他の魔物たちは当然に警戒をして襲う事を躊躇する、自分より強い奴が殺されれば、「戦えば自分も殺される」と思うからだ。


「はぁ!」


 今度は群れの位置から二番目に強い奴を三連撃を仕留めて、次に序列3番目を同じ手順で仕留める、そうしたところで。



 狼たちは逃げ出した。



 そう、魔物達は無益な戦いはしない、人間と違い狼型モンスターに「武勇を誇る習性」はないからだ。


 それを見てルアは、すっと息を吸うと。


「はぁ! はぁ!」


 と両手を膝に乗せて尋常じゃないぐらい息が切れていて、汗も無茶苦茶かいている。



 それはそうだ、残りの狼が一斉に攻撃してきたらルアは殺されていたからだ。



 こんな感じでクラスDは強いことは強いが戦術と戦略を使わないので、実力があり正しい手順を踏めばこうやって勝てる。


「力業だけならどうしようかと思ったが、戦略と戦術も実戦で使えるか、素晴らしい」



 創作物語にとって勝利は劇的なものであるが、実際は勝つことは劇的でも何でもない現実の出来事だ。



 ルアはちゃんと自分の力量を見極めた上で「薄氷の勝利」を選んで実行した。



 そして俺は今回何もしてない、つまりクラスDの魔物相手にソロ討伐を果たしたことになる。



「…………」


「ギリアンさん! どうでした!?」


「……お見事、花を採取して送り届けよう」





「ルアちゃん! 俺の後ろに隠れて! コイツらは俺が相手するから!」


 と狼型の魔物を前にルアの前に立つのはホヴァン。


「頼りにしています! 右から3番目の狼をお願いします! あの狼が襲ってきそうです!」


「おうさ!」


 と群れで一番弱い狼を仕留めるホヴァン。


「次は、左端の狼です、あの狼怖いです!!」


「がってんしょうち!!」


 と群れで2番目に弱い狼を仕留めるホヴァン。


(的確な指揮だなぁ)


 指示を出しているルアは強い奴を仕留め、ホヴァンに指示して弱い奴を仕留めさせる、だから狼たちは形勢不利を察知しつつも逃げない。


 あ、ちなみに今はクリコの花の採取クエストの最中です。


 あの後、成果を見た商会長さんは、再びクエストを依頼してくれて複数回こなすことで商会の花屋の信用を得て、こうやって依頼してくれるようになった。


 んで、それを聞きつけたホヴァンも意味不明に「ナイト」を名乗り出て、こうやって参加してくれている、もちろん報酬はちゃんと渡していますよ。


 んでルアに指揮をしてみなって課題を出したところ、仕留める狼を的確に指揮して討伐数を増やしコアの数を稼ぐ判断が出来ている。


(本当に優秀だなぁ)


 そんなルアだったが、笑い話的な失敗もあった。


 それはルードから「性犯罪者の囮捜査」のクエストを斡旋されたところ「女の敵は許さない」と二つ返事で了承。


 犯罪多発発生場所を夜道で1人でずっと歩いていたのだが襲われず、結局同時並行で別の囮捜査を頼んだ女性(清楚系)が襲われて御用となった時には、不本意そうな顔をしていたっけ。


 ルード曰く。


――「遠くから監視してたんだけどさ「かかってこいや、殺してやる」みたいに殺気放ちながら歩いていたんだよね、正直、すれ違う男の方がビビッててさ、あ、これは失敗したわって思った」


 なんて笑っていたっけ。


 そんな感じでクエストをこなしつつ、今ではルアはホヴァンと爺様達のアイドルみたいな感じになっているけど。


「ギリアンさん」


 そんな中、商会長さんが神妙な面持ちで話しかけてくる。


「私達にも分かるよ、あの子……」


 そっか、爺様達も分かっていて、俺も頷く。



「そのとおりです、こんな場末のギルドにいる冒険者じゃないんですよね」



 もう既にクラスDの魔物も倒せるようになっている。クリコの花の副収入も十分な額になっている。


 こんなところに埋もれさせるのはもったいない。


 みんなが帰った後、何とかしないとなぁと思い、うんうんと1人で唸っていた時に来訪者を告げるベルが鳴る。


 ドアを開けると……。


(うげ……)


 そろそろかと思ったがやっぱり来た。



「冒険者新聞です、ルア・リームさんの件で取材に参りました」




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