第80話:底辺冒険者の生き残り方
――クエスト受注後・庁舎外
「わかったかね?」
「え?」
「役所は建前は崩せないし融通は利かないが、実はこんな感じで「小回り」が利いたりするんだよ、何よりも建前も崩せない融通もきかないからこそ料金トラブルが一切ないのだ! しかも即金払い!」
「なるほど、最初に記入した用紙が「美味しい公共クエスト」であり、今受注したのが「赤字にしかならない公共クエスト」なんですね」
「そのとおり、ちなみにおいしい公共クエストは先着順、日付上は先着順になるわけだからな、だから課長さんが応対してくれたんだよ、あの人が決裁権者だからな」
「……それって偽造なんじゃ」
「だから墓場までもっていくの!! さてさて、ゴブリン100体の討伐クエストだ、この場所と数だと普通にやれば赤字になる、もちろん我がギルドも赤字は絶対駄目、はい問題、このクエストで赤字にならない方法は? ちなみに君と俺の2人でやるからね」
と問いかけるとルアは。
「今日中に解決する」
と即答してくれた。
「グッド! 君の実力なら「生きがけの駄賃」にできるね」
ここでルアが首をかしげる。
「塩漬けって言うから、もっと割の合わない気がしたんですけど、ゴブリン100体のコアは副報酬として認められるんですよね? 売ったらまあまあの額になると思うんですけど」
「だからそれが出来る冒険者にとって、このクエストは割が合わないんだよ。君は干されなければ、この数倍のいい条件のクエストが受注できるのさ、現に冒険者学校でも公共クエストで飯を食えとは教わっていないでしょ?」
「…………」
「さてさて、これはルアの戦闘テストも兼ねているからね~、ついてこれる?」
「頑張ります!」
「よっしゃ! なら早速準備体操して向かうぞ~!」
とルアと2人で走って場所に向かった。
::都市郊外
ゴブリン駆除は、害獣駆除と一緒なのは、以前にも説明したとおり。
俺とルアは半日かけて場所に到着、ゴブリン駆除を開始した。
そして一時間程度経過したが。
「はあ、はあ、はあ」
とルアは肩で息をしているが100体をわずか一時間ちょいで討伐完了した。しかも走った直後からの討伐開始で、俺はほとんど手助けをしなかった。
彼女はゴブリン相手と言えど無理をせず引く時は引き、休憩を挟んで体力を回復させ、効率的にクレバーに狩りをしていた。
スタミナも問題ないぁ。
魔石の使い方も手慣れたもので、ゴブリンを焼却処分をしてコアも回収している。
「それも授業で習ったのかい?」
「はい」
なるほど、授業のレベルの高さがうかがえる、だがルアのこの狩りの方法って。
「なあ、答えづらいかもしれないが、ルアは学校時代にクランを組んでいたのか?」
「組んでいましたよ……すぐにソロに戻っちゃいますけど」
「……そうか」
「ぼっちだってバレちゃいましたか」
「そういう場合はソロ冒険者って言うの」
「ふふっ、それに、他の同期と組んでも、その、あの」
「足手まといになるんだろう?」
「たはは、そんなつもりはないんですけど、そんな風に言われて……はぁ」
クラスB。
財産と称される程の能力を持った冒険者たちに与えられるクラス。
ノバルティス冒険者学校は公国最高峰と謳われてはいるが、それでもクラスBの才能なんて10年に一度レベルだ。
本人に悪気がなくとも「足手まとい扱い」になってしまうんだろうな。
「やっぱりクランを組んだ方がいいんですかね、ソロは推奨されないですし」
「それについては考えてある」
「え?」
「だから色々と見せてもらうよ、はい、てなわけでコアを回収したらもう一個課題」
「え? え?」
「都市役所の閉庁時間までの時間を計算すると、今から走っても十分に間に合います」
「え!?」
「荷物は俺が持ってあげる、できる?」
「えっと、その、やります!!」
と元気よく答えてくれた。
――都市役所
「ええー!! もう終わったんですか!! 流石仕事が早い!!」
と仰天する課長さんだったが、コアを見せると満面の笑みになってウキウキで報酬を支払ってくれた。
「報酬を確認ください、出来たらこの書類にサインを」
「はいはい、さらさらと、またこの手の依頼があれば我がギルドが請け負いましょう」
「是非是非♪」
「くれぐれも三日後のクエストは」
「ぬかりなく( ̄ー ̄)ニヤリ って、お連れさんは?」
「外で休んでますよ~、お気づかいなく、それでは~」
――庁舎外
「」←ルア
庁舎外の共用椅子でルアは真っ白に燃え尽きていた。
「はいお疲れ様でした。えっとクエスト完了の報酬の清算はギルドに帰ってからするからね」
「は、はい」
「じゃ、かえりましょ~」
という事で最初はふらふらだったものの、ギルドに戻る時にはちゃんと体力が回復していた。
スタミナもあるし、回復力も申し分なしか。
「これがまずクエストそのものの報酬、んでこれがコアを売った報酬、丁度割るとこれだね、確認したらサイン頂戴」
とお金をルアに渡すと、そのお金をじっと見つめて笑顔でサインした。
「嬉しいでしょ?」
「え?」
「どんな冒険でも初報酬って忘れられないんだよね」
「……はい、やっと一歩進めたかなと」
「よかった、君は特に難儀したからな」
「ギリアンさんの初冒険ってどんなだったんですか?」
「俺の場合は、何も知らないでクラスCの魔物やっつけてさ、手土産代わりに持っていたらギルドの職員がびっくりしてなぁ「あれ~? 俺なんかやっちゃいました☆?」的なお約束イベントを」
「え?」
「という創作物語が俺の祖国で流行っていたことを今突然思い出した、普通にゴブリン退治だったよ、千里の道も一歩よりというからね(滝汗)」
「はあ」
「そんなことはおいといて! さてさて、ルアの初クエストクリアを祝して打ち上げに行こうぞ!」
「打ち上げ?」
「こういう副収入はぱーっとやるものだ! 歓迎会も兼ねて、美味い店を知っているのだ! ルアは酒が飲める人?」
「はい、好きですけど」
「ふむふむ、俺は飲めないが、酒も飯も美味い店を知っているぞ! ちょっと奮発していい店にいくか! もちろん俺の奢りだぜ!」
「何を言っているんですか、節約しないと」
「へ!?」
「…………」
「…………」
「せ、節約? なんで急にそんな言葉が?」
「聞きましたよ、ギリアンさんその日暮らしで、家賃も滞納気味なんですよね?」
「え、え、ま、まあ、そう、だった、かな?」
「なら滞納する前に、そのお金をプールするなりして、滞納しないようにしないと」
「え、えー、ほらさ、折角なんだからさ、そのー」
「歓迎会はありがとうございます。安くていい店を知っていますので、そこにしましょう、今日の報酬の残りは家賃用の貯金ですね」
「へ? でも、あの、その」
これ、残りはホヴァンとルードと一緒に遊ぶというか、その約束のために使おうと。
「何かあるんですか?」
「え、えっと、とと、友達と遊ぼうと思っていて」
「遊ぶのは良いですが、それで家賃滞納したら駄目ですよね?」
「だ、駄目ですね、で、でも、ほら三日後にはクラスDの報酬が貰えるクエストが控えていて」
「ですから、それも含めて家賃用にするんです。いつ収入が無くなるか分からない、何かあってからでは遅い、身分の保証、福利厚生が大事と教えてくれたのはギリアンさんじゃないですか」
「そ、その、あの」
「遊ぶためには沢山働きましょう、それで解決♪」
「え、え」
(´・ω・`)えーーーーー ←カグツチ
――翌日・都市役所
「塩漬けクエスト下さい」
「へ?」
と俺のこの一言で課長さんは呆気に取られていた。
「えっと、3日後のクエスト以外は、今のところは、その」
「違います、とにかく片っ端からやりますんで、ください」
「え? え? それはこちらとしては大助かりなんですが、どうしました?」
「あの子に俺の財布を握られてしまって、遊びたければ働いて来いって、確かに家賃滞納気味ですけど、最終的にはちゃんと納めてるのに、ひどいと思いませんか?(´;ω;`)ウゥゥ」
「ああ~、でも女性がしっかりしてるのは良いことだと思いますよ。私もだらしないタイプなんで、嫁によく怒られていますから」
「(ノД`)シクシク」
「えっと、短期間での塩漬けクエストはこの一覧になります。ここからどうぞ」
――二日後
「はあ、はあ、はあ」
ちなみに、この息切れは俺、やっと終わった。あの後二日間、都市役所の塩漬けクエストひたすらこなして、やっとルアに課せられたノルマ分稼いだ。
別に疲れていないんだけど、気持ち的に凄い疲れた。
んで、こうなる前に、へそくりしようと思い、収入を過少申告したところ。
「ん? クエストの資料と食い違いがありますよ?」
と帳簿を一目見て瞬時に見抜いた。
「い、いやぁ、ま、まちがえちゃった~、メンゴメンゴ」
ぐっ、事務仕事も優秀なんかい!!
え? なんでルアが事務仕事やっているかって。
いや、何か「世話になったからやりますよ」とか言われて、まあいいかと言って任せた結果、一日で財布を握られてしまったのですよ(ノД`)シクシク。
しかしギルド嬢としても優秀とは、なんかアイツを思い出すな。
ふ、ふん! まあいい! 何といっても明日はいよいよ、クラスDの報酬をもえらる公共クエストの日!
この報酬は絶対に遊ぶ金に使ってやる!
仕事の後の遊びを楽しみにモチベーションを高める、社会人には絶対に必要なスキルなのだ!!
と後ろ向きに前向きな悲壮な決意をするのであった。




