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クラスS冒険者なんて辞めてやる! ~やりなおしの元世界最高位冒険者の異色冒険譚~  作者: GIYANA
冒険者として生きることは夢ではなく現実であること
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第79話:冒険者にとって2番目に大切な事とは?


 前回までのあらすじ。


 審査会での発言によりルザアット公国の冒険社会から干されることになったルアは、流れ流れて俺のギルドと契約することになったのであった。


「さて、知っているかもだけど我がギルドはぶっちゃけると底辺ギルドなんです、何で底辺ギルドかというと良いクエストが斡旋できないからなんだね」


 何回か触れたが、ギルドの力とはクランメンバーの斡旋やらも重要な仕事だが、なんといっても良いクエストを斡旋できるところにある。


 良いクエストというのは「冒険者が得をすることができるクエスト」という意味。


 得というのは報酬面を含めた様々な範囲に及ぶのだけど、斡旋するのもコネがいる。


 だから意気揚々と冒険者ギルドを立ち上げても、コネが無いと良いクエストを斡旋する事も出来ないから良い冒険者と契約することも出来ず、経営が立ちいかなくなるから、実は倒産率ってかなり高い。


 ゼカナ都市でもギルドとして経営できているのは、クラスCピグが所属しているギルドがトップで後はギルド・ドードの二つしかない。


 俺の場合は、従業員が俺1人だけだという事と、冒険者も兼業しているからその収入で何とか糊口をしのいでいる事と、なんといっても大家さんが格安でこの事務所兼住居を貸してくれることがでかいのだ。


 どれぐらい格安なのかというと相場のなんと6割、いやはや、本当に大家さんには頭が上がらんのですよ。


「とまあ、こんな感じでなんだけど、底辺ギルドは底辺ギルドなりに生き残る方法があるのだよ。それが塩漬けクエストを攻略する事なのだ!」


 塩漬けクエスト。


 以前にも少し触れたが一言でいえば「悪いクエスト」の総称だ、割に合わないと言い換えてもいいのだが。


「割に合わないってのは、色々あってだな、タイミングも丁度良かった、さてさて、早速行くぞ」


「え? どこへ?」



――都市役所。



 これはそのまま元いた世界での役所と一緒。


 職員もこれも一緒で公務員。


 利益を生み出さないがどうしても必要な仕事は異世界でもちゃんと存在するのだ、んで職掌も一緒で一言でいえば「行政」と解釈していい。


 実は冒険者も役所に深く関わっている。


「さて、冒険者にとって一番大事なのは命を落とさないこと、2番目は何だが分かるかね?」


「2番目? うーーん」


「ふふん、身分の保証だ」


「身の保証? 護身ですか? 強さってことですか?」


「ちがーう、「身分」の保証、言い換えれば福利厚生!」


「ふくりこうせい……」


「ルザアット公国は冒険者大国を謳うだけあって冒険者に対しての福利厚生がしっかりしていてな! 俺のお勧めは、この財形年金とこの健康保険、両方ともに掛け金が高いし、ライセンスの更新記録と一定の冒険活動記録を毎回提出するのが面倒だけど、財形年金はこの利率で受け取れるし、健康保険は医療費もなんと3割負担で受けられるのだ!」


 風邪をひいて病院に行く。


 急に何を言い出すのかと思うだろうが、皆さん風邪をひいて病院に行ったことは一度ぐらいはあるだろう、そしてそれは日本では当たり前のことだ。


 だがこれって滅茶苦茶苦凄い事なのだ。


 先進国と呼ばれている国ですら「満足な医療を受けられるのは金持ちだけ」という状況も当たり前のようにある。日本では当たり前のように受けられる医療でも数十万かかるとかザラにある。


 思えば、異世界系の創作物でこういう話って全然でないよな。怪我したり死んだりしても全然お金の話が出ないし、実際にどうしているんだろう、踏み倒しているんだろうか←暴言


「この保険と年金はルザアット公国の国営銀行が大元になっているんだ、だから安心して掛け金を納められるんだよね」


「それって、そんなに大事なんですか?」



「実際に死んだり大怪我しないと実感できないから軽く見る冒険者も多いけどな」



「…………」


「ルア、自分が大けがした時の治療費って考えてる?」


「……考えていませんね」


「それで冒険者引退して、金が無くてホームレスで救貧院通いってのは割とあるぞ」


「…………」


「金は大事だからな、まあまだクラスFだから、そうならないように俺もサポートにつくけど、早めに入ってもらうからね~」


「はい、でもクラスAとかクラスSの人達がこういうの利用してるって想像できないですよね」


「ここだけの話、クラスSは、公国の保険に多額の寄付してる」


「ええ!??」


 そう、3割負担、じゃあ7割が何処から出ているかというと別の保険加入者が治めた保険料から出ている。


 健康な人が払う保険料は、ほぼ全て掛け捨てとなる。だがそれは無駄ではない、そのお金は「重病患者への高額医療費」にあてられているのだ。


「ただどうしても足が出る時がある、その補填はクラスSが埋めるのさ」


「その見返りなんてあるんですか?」


「ないよ」


「ほ、ほんとうなんですか?」


「というか必要ないんだよ、世界ギルドからの依頼で十分すぎる程の見返りを得ているからね」


「でも、大金なんですよね?」


「ある一定のラインを超えると金はただの数字でしかなくなる。だからクラスSは保険も必要ないし年金もいらない。その代わり冒険者社会を裏から支えているステータスを得られる。まあステータス抜きにしてこれは賛成だ」


「それってどちらがどれぐらい払うとかの取り決めはあるんですか?」


「んー決まりはないけど、これもぶっちゃけるとセシルが8割払っている」


「そうなんですか!?」


「ノバルティス財閥は世界に名を轟かせる一大財閥だからね。本当なら全額払って格を見せつけてやりたいのだろうけど、流石にそういう訳にはいかないから2割程度は払っているよ」


「はー、なら公国のクラスSの序列の噂って」


「世界ギルドはクラスSに順位付けなんてされていないけど、実際の公国内の扱いは向こうは子爵様だろ? そういうこと。後は冒険者新聞なんかも好きだよね~ことあるごとにクラスSで順位付けするの」


「凄い詳しいんですね、どこからそんな情報を?」


「って週刊文春に書いてあった(滝汗)」


「え?」


「ほ、ほ、ほら、えっと、ほら、あのー、ノバルティス財閥は凄いけど、貴族じゃないからさ、えーっとだからノバルティス財閥の総帥がセシル卿を窓口にクロルソン公爵と繋がっているという噂がまことしやかにささやかれていて(滝汗)」


「急に嘘くさくなったような」


「ま、まあ情報の取捨選択が大事だという事が言いたかったのだよ!!」


「はあ、それでパンフレットを貰いに来たんですか?」


「ちっがーう、はいはい、付いておいで」



――冒険課



「ここが冒険課だ、知っているかね?」


「あ、ああー、なるほど、公共クエストですか」


 ようやくここまで連れてきた理由に合点がいったようだった。


 さて、説明を続けよう。


 公共クエスト。


 要は都市役所等の公共機関が提供するクエストの総称である。


 さて公共機関がどうやって運営されているか、答えは税金である。


 つまり公共クエストの報酬は税金である。


 税金で運営されているというのはどういうことか。


 融通が利かず建前が崩せずビジネス展開が難しいということだ。


 これが「お役所仕事」と言われている所以だ。


 この融通と建前は公共クエストに悪影響を及ぼしている。


 以前にホヴァンの故郷で問題になっていた「赤字になるゴブリン討伐クエスト」も報酬判断規定が魔物の自体の脅威度のみと規定されているため、それで判定せざるを得ないのだ、だから誰も受注しない塩漬けクエストとなっている。


 だが塩漬けクエストとはいえ、クエストはクエスト、放置すると建前を崩せないから「役所の怠慢」だと色々と言われる、これは元いた世界でも一緒。


「ま、公共クエストもクラスが上がれば「国家事業」になるけどね」


 クラスAやらS時代は色々とやったが、まあそれは今はどうでもいい。


「ここで公共クエストを受注するんですか?」


「それはそうなのだが、冒険者学校では教わらない裏技もあるのだよ、ふっふっふ、ふが三つ、まあ来たまえ」





「これはこれはギリアンさん、いつも助かってますよ~」


 というのは冒険課の課長さんだ。


 窓口に俺が来ると受付の人ではなく課長さんが応対してくれる。


 ちなみに公務員の「課長」って立派な上級幹部、下手するとワンフロアで一番偉いとかもあって、決裁権者だったりするのだ。それはここでも一緒で、役職的には所長、副所長に続くナンバー3のポストなのだ。


「ってこの子は?」


 ルアについて聞いてくる課長さん。


「新しくウチと契約した冒険者です」


「え、、でも、あれ? 確か、この子ひょっとして」


「まあまあ、詮索無用という事で」


「なるほど、言えない事情が多いのはこちらも同じなのでお察しします」


「感謝します、という訳で、課長さん、そろそろだと思いまして~」


 という言葉で課長さんもにやりと笑う。


「流石鋭い、内緒なんですけど実は三日後に」


「枠は?」


「4人の先着順」


「4人? あれ? 確か前回は確か5人じゃなかったでしたっけ?」


「ええ、予算削られました(怒)、税金ってのは本当に必要なところにこそ回すべきなのに」


「まあ世知辛いのは何処も変わりませんね」


 と言い終わった後、すっと課長さんは申込用紙を配付してくれる。


「それでは所定の欄に記載をお願いします。この申込書の日付はいつものとおり、三日後で記載してくださいね( ̄ー ̄)ニヤリ」


「もちろんです、何かあれば墓場まで持っていく( ̄ー ̄)ニヤリ」


 とさらさらと2人で記載をすると申込書を受理する課長さんだったが。


「ギリアンさん、その代わりと言ってはなんですが~」


「はいはい、どのクエストを受注して欲しいんですか?」


「実はこれなんですけど」


 とクエストを見る。


「ふむふむ、いつものゴブリン討伐ですな、数は100体、ゴブリンと言えど100体で場所も遠方、となれば焼却用の魔石も重たいし食料やら道中の魔物の対処に手間取ると宿泊を伴う、なのにクラスF日当報酬、大赤字になるのに誰が受注するんだって話ですな」


「本当に都市議会の連中は、票と貴族への点数稼げない案件に予算まわさないんですよね(怒)」


「世知辛いのは何処も一緒ですなぁ、このクエストはむしろ丁度良かった、ならこちらもさらさらと」


 と受注用紙にサインをして課長さんに渡す。


「いつもありがとうございます、助かっているんですよ~、塩漬けクエストの達成率を上げろとうるさく言われるので、あのクソ所長、副所長コンビめ、まったくゴマスリばかりで(怒)」


「どこも一緒ですなぁ、では早速ゴブリン討伐に行ってまいりますよ」


「ありがとうございます、お気をつけて~」


 と課長さんに見送られて都市役所を後にしたのであった。




一口メモ


 冒険者新聞主催のクラスSランキングで、総勢9人のうちセシルは5位、カグツチは8位。

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