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第74話:とりとめのないけど最後、そして次へ



 全ての手続きが終了した、コヴィスト王国は世界ギルドに加盟を承認され、俺が拠点を移す事をルザアット公国でも世界ギルドでも承認された。


 世界ギルドから俺への窓口が女王ということも認定され、これから俺の冒険は、クラスDジョー・ギリアンとしてはもちろん、そしてクラスSカグツチ・ミナトとして活動を再開することになる。


 王族直轄地。


 簡単に言えば王族の私有地。


 ワドルフの土地を没収し王族直轄地として、その一部に建てられたのは、カグツチの豪邸であり、今回の報酬の一つ。


 私有地と表現したがカグツチに所有権があり、つまりはアマテラスの「基地」でもある。


 豪邸が完成後、玉座にあったアマテラスに必要なものすべて移動させ、拠点としての体は整えた。


 俺は今、建物の中庭にいる。


 その中庭に4メートル四方の囲いを作り手前には墓、そして後ろには一本の樹が立っている。


 結局、メーバルとユモナについて色々調べてみた結果、母親は死んでいて父親はロクデナシで興味すらない有様、他には親族らしい親族はおらず、本当に2人で生きてきたようだった。


 弔い方法についてさんざん悩んだけど、俺の祖国に倣い荼毘にふした。そして遺灰の2割を墓に、残り8割を肥料として木を植えることにした、所謂樹木葬というやつだ。


 ここにはこれから何度も来ることになるだろうから、この豪邸の俺のスペースの中庭に作ってもらって、俺が不在の間の世話もリシアに頼んである。



 そして俺達は今日帰ることになった。



「よし、こんなものかな」


 墓石に柄杓で水をかけて、ゴシゴシと墓を磨いて綺麗にした。


 備え付けの戒名塔には、本人の名前を彫ってある。


「…………」


 墓を見ながら色々と故人を偲んでいると。


「あのさ、カグツチ」


 といつの間にか後ろに立っていたファルが話しかけてきた。


「どうした?」


「えっと、一応知らせた方がいいかなって思ってさ」


「? 何かあったのか?」


「何かというか、この人ってさ、カグツチが言っていたおっちゃんじゃない?」


「…………え?」


 とファルが持ってきた深淵の外部端末で覗き込んでみると。



――失踪した夫が帰ってきたのでボコボコにしてやった



 なんてタイトルが目に入り。


 ボコボコにされた後のおっちゃんの両脇で2人の女性が満面の笑みでピースサインしていた画像が出てきた。


:以下文章:


 友人の借金の保証人になって失踪した夫が突然帰ってきた。


 扉を開けた瞬間に何やら異国の究極の謝罪方法という地面に額をこすり付ける「ドゲザ」なるものを敢行してきた。


 もちろん異国では究極かもしれないが、そんな訳の分からん謝罪方法で許す訳なく、私と娘を置いて失踪した無責任男には当然鉄拳制裁。


 んで、ボコボコにしたら詫びのつもりなのか大金が入った袋を私に差し出してきた。


 借金返済と慰謝料と娘の養育費の為に持ってきたのだという。


 問題なのはこの金の出どころだ、コイツにこんな甲斐性は無いのは分かっているので絶対にロクでもない金に違いないと問い詰めたところ、色々言い訳をした挙句、呆れたことに「クラスS冒険者から貰った」とかほざきはじめた。


 クラスS冒険者、私だって知ってるわ、世界最高位の冒険者がなんでお前に大金恵むんだよ。


 まあ、後ろ暗い金ではないという事が言いたいらしいが、この男は気が小さいが嘘はつけない男なので、ロクでもない金ではないっぽい。


 つーかお前に頼らずとも借金は返したっての。


 本来なら夫なんて既に必要ないし娘と楽しく2人で生きて行こうと思ったが、ペコペコ頭をこすり付けて謝る姿があんまりにも哀れで悩んでいたところ、娘は勘弁してやってもいいとのこと。


 娘が言うからしょうがないので許してやった。



:本文終了:



「…………」


 読み終わった後、瞼がジワリと重たくなって。


「っ、うっ、うぅ」


 ぽろぽろと涙が出てきて。


「ああはは!!」


 と笑いが出てきた。


「だはは! だーはは! ひーひー! お腹痛い! めっちゃお腹痛い!! なあ、ファル、聞いてくれ、前に言ったとおりこのおっちゃんな、スラムで世話になったんだけどさ、こんなこと言ってたんだよ」



――ネホバ、一人前の男を名乗るのなら女に惚れさせてナンボだ(キリッ!)


――女が言う事を聞かない? そんなものひっぱたいていう事を聞かせるんだ!(キリリッ!!)


――ほう、お前の国で男が強い家庭を亭主関白というのか、まさに俺だな!(キリリリッ!!!)



「あはは! あはは! 引っぱたくどころか奥さんにボコボコにされてんじゃん!」


「……カグツチ」


「でもね、おっちゃんね、こんなことも言っていたんだ」



――世界で一番いい女は嫁だ、そして世界で一番いい女が生んだ娘もまた、世界一いい女なんだよ



「ううぅ、よかった、よかったなぁ、おっちゃん、うわあ、あぁ、グスッ、そうだよ、おっちゃんの言うとおりだ、借金残して失踪したのにさ、土下座で許す娘も素晴らしいし、娘が許したから許す奥さんもいい女だよな、それは本当だったね、よかったね、本当に、、、、、、よかった、、、、、」


 袖で涙を拭うと。


「ファル、そんな訳で、いってくるよ」


「へ!? 何処へ!?」


「おっちゃんのところだよ」


「えー!!」


「ほれほれ、おっちゃん嘘つき呼ばわりされているじゃん? これは夫婦の危機になるかもしれない。だから会ってくるよ」


「…………」


「ああ、やっと、やっと前向きになれそうなんだ、いや、色々と心配かけたな、んな訳で、一足先に帰るぜ! 後はよろしく!」


「……わかったよ、いってらっしゃい」


 と言って、俺は準備体操をすると最後に墓石を撫でて、コヴィスト王国を後にしたのであった。



――カグツチがいなくなった後の豪邸



「……そうですか、一足先に旅立ちましたか」


 ファルの報告を受けてクォイラがそう呟く。


「ああ、それにしても、だよ、まったく腹立たしいじゃないか」


 ファルの講義に2人はため息をつく。


「傷心状態の自分に、こんな尽くしてくれた美女たちじゃなくて、スラムで知り合ったおっちゃんに癒されるって」


「ま、アイツらしいんじゃない」


「とりあえず戻ったら何をしますか?」


「アタシはルザアット公国の総本山に行かないとね、大主教としての仕事が残っているし」


「ボクは、クォイラに居候の身だし、いつものとおり深淵の泳ぎを楽しむさ」


「私は今度は出迎えの準備をしないと」


「出迎え?」


「クロルソン公爵が女王を社交に招待するはず、おそらく世話係を命じられると思います」


「なるほど」


「なるほどではありません、その時はグータラさせてる代金として貴方にも働いてもらいますからね」


「うへぇ」


「それにしても、久しぶりのアマテラスとしての活動でしたね」


「まあまあだったよ、やっと再開するんだね」


「アイツのことだから、また色々とやらかすんだろうけどさ、それも含めて楽しみだよ、あとクォイラさ「彼女」については?」


「ワーニッツの確保は無事終了、女王と連名の助命嘆願書も受理したという連絡が入りました」


「結局会えなかったね」


「あの時のカグツチならそちらの方がよかったでしょう、今回は結局すれ違う事になりましたが、まずはちゃんと会って話さないと、あのアンポンタンにそれこそ「土下座」させないといけませんからね」


 と話していると。


「邪魔するぞ」


 とここで女王が現れた。


「出立の準備が出来た、そろそろ出発だ」





 ということで案内された直轄地にある飛行船の係留塔、そこに繋がれているのはクォイラが呼び寄せた巨大な飛行船。


「それでは、色々と名残惜しいが」


 という女王と握手を交わすクォイラ。


「拠点をここにするわけですから、すぐに会えますよ」


「そう願っているよ、夫にもそう伝えてくれ」


(#^ω^)ピキピキ ←クォイラ


「はいはい、じゃあね、女王」


 と飛行船に乗り込み、3人は旅立った。



――旅立った後のコヴィスト王国



「女王」


 とアルが話しかけてくる。


「結局、我が国にとって、アマテラスは過ぎたるものだったのではないのですか?」


「何を言っているんだ、確かに最初はクラスSに依頼し、成功したと聞いた時は大きな賭けだと思っただが最終的に我が国の国益に多大なる貢献をしてくれた形となった、大成功と言っていいだろう」


「だ、大成功ですか、、、」


「そうだよ、得難い友人を得られただけでもな、まあ色々とこちらも利用させてもらうさ。アル、ルザアット公国外務省との折衝についてはどうなっている? それとルデエル、新しい幹部名簿をそろそろ完成させろ」


 と王族たちは執務室に消えていった。




――おっちゃんの拠点




「……クラスSってのは暇なのか? あんなミクロな情報見つけてわざわざ来たって」


 と、家族の衣類を甲斐甲斐しく洗濯している亭主関白なおっちゃんが俺を見た第一声がこれだった。


「いやぁ、夫婦の危機だと思いまして」


 そんな横で奥さんはびっくりしている。


「え、え、本当に、クラスS? た、確かに冒険者新聞で見た、カグツチ・ミナト……」


「そうです、カグツチ・ミナトと申します、びっくりさせてごめんなさいね」


「本当に知り合いだったの!?」


「はいぞうなんですよ、色々とお世話になりました、ちなみにお金は正真正銘俺の金で、色々あったんですけど、結果おっちゃんにあげた金なんです。そんな訳で奥様、遠慮なく慰謝料なり子供養育費にでもあてていただければと思います」


「は、はあ」


「おっちゃんも安心してね、俺はまだコヴィスト王国にいるってことになっているから、お忍びだよ」


「まったく、まあ「恩人」にはちゃんともてなさないとな、おい」


 とおっちゃんは奥さんを呼ぶと。


「洗濯が終わったらの食事を作る予定だったが、今日は客人がいる、出前でいいか?(キリッ)」


「いいわけないだろう、アンタの自由になる金ないでしょ、アンタが作るという条件で食費はこっちが出していることを忘れないように」


「だそうだ、来てもらってだが、買い物に付き合ってくれるか?(キリッ)」


(プークスクス! 尻に敷かれてる!!)


「なんだよ」


「い、いいえ、なんでも、分かったよ、出会いを祝して俺が奢るから安心してね」


 そこで首を振るのが奥さんだ。


「駄目ですカグツチさん、甘やかすとすぐに調子乗るから」


「まあまあ、おっちゃんは俺にとっての恩人みたいなものでもあるので」


「……まあ優しいだけが取り柄ですからね」


「その優しさに救われたんです」


「……分かりました、本当にお言葉に甘えても?」


「もちろん! という訳で、この辺りで一番いいレストラン予約してるんです、おっちゃんの洗濯が終わったらいきましょ~」


 という会話を聞いたおっちゃんは。


「カグツチ、大丈夫なのか?」


 と問いかけてきてくれた。


「うん、大丈夫になったよ、ありがとね」


 と笑顔で返した。



 その後、一緒に食べた夕食会では俺があげた金は借金は全て返し終わったので、娘の養育費に全部充てるらしい、おっちゃんみたいな男に引っかからないように英才教育をするそうな。



 とまあ言葉じゃあないがしろにしつつ、娘もちゃんと父親を慕っているし、奥さんも何だかんだで惚れているんだろうなと思った。



 一泊世話になり、俺は自分のもう一つへのホームへと戻った。




――ギルド・ジョーギリアン




「知っていますかギルドマスターさん、この世には実は裏で世界を操る巨大な組織というものがあって、一部の上級国民による搾取が日常的に行われているんです」


「…………」


「おっと、ギルドマスターさん、陰謀論だと思いましたね? 全くそうやって真実から目を逸らし、いや真実に気づいた我々に対しての嫉妬ですか、いい加減それが奴らにとって有利な状況に進んでいることがなぜわからないのですか?」


「…………」


「陰謀論ではなく真実論なんです、分かりましたか?」


「…………」



 ゴシゴシ ←モップで床を磨いている



 まったく、だからさ、どんな思想を持つのは自由さ、だけどさ、どうしてこう、あの手奴らって、人に迷惑をかけるかな。


「よう、ギリアン、相変わらず変な奴が来るな」


 とホヴァンとルードが現れた。


「なんか久しぶりだな」


「実際そうだからな、それと長期の海外旅行は終わったのか?」


「……ああ、まあな、終わったよ、実りある旅だった」


「「…………」」


「なんだよ」


 すっとホヴァンとルードは俺の両脇に立つと。


 ガシッと肩を組む。



「「女なんてたくさんいるさ! いつかお前に相応しい女が見つかるよ!!」」



「いやいや! なんで振られた体になってんだよ!」



「まあ、久しぶりに競馬やろうぜ!! 終わったら勝った奴のおごりで飲みだ!!」



「わかったよ、準備するから待っててね」



 とカグツチはいつもの日常に感謝しながら戻る。




――ルザアット公国・クロルソン公爵邸




 ルザアット公国公主、クロルソン公爵は秘書官より報告を受けていた。


「閣下、カグツチ・ミナトの件については」


「こちらの方で特段対処する必要は無かろう、あの男はその方が良い」


「はっ、それとルザアット公国リシリティア女王より、外交の申請がありましたが」


「よかろう、私が主催する社交への招待状を送れ」


 秘書官は目を見開く。


 公主であるクロルソン公爵の主催の社交界の格は最上級、参加者はルザアット公国側も伯爵以上に限定され招待客もまた厳選され、他の3大国を始めとした超一流どころが名を連ねる。


 前回の伯爵主催の社交からすると比べ物にならない待遇だ。


「よろしいのですか?」


「新女王のお披露目だ、リシリティア女王だったか。アレは中々に面白い人材だ。それとその社交について、クォイラの招待状もアルスフェルド子爵家に送っておけ、もてなしは任せるともな」


「仰せのままに」


「しかし喜ばしいことだ」


 すっと立ち上がり、窓から景色を眺める。




「あのクラスSがやっと活動を再開するか、これから楽しみだよ」




おしまい



完結してありますが続きます。

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