第73話:風呂場にて・後篇
――テラス
「我々の未来に乾杯」
チンという小気味よい音を立てて2人で並んでジュースを飲む。
うん、いい景色だ、露天風呂がテラスに併設されているのか、流石だ。
それにしてもこんなに風呂に力を入れているのかと聞いてみると、五代前の王様が相当な風呂好きでそれと同じぐらい女好きだったらしく、当時の妾達数十人と入ることもあったそうで、その為に改装したそうだ。
「まったく、男というものは本当にどうしようもないな」
と隣で愚痴るものの。
すっと俺の右手を自分の右腰にまわし右手を添えて離さないようにしている。
「美味いぞ、カグツチ、飲め」
持ち替えた左手でグラスを差し出してくる。
うん、美味しい、ぶどうジュースか、甘みが程よく絶品だ。
いや、お互い裸なんですけどね、タオルも外したし。
い、いや、別に向こうが脱いだから脱げってことになって、脱がないのも悔しいというか。
「…………」
凄い密着してる。
…………。
…………。
誘ってる?
いやいやいやいやいやいや、違うだろ、相手の年を考えないといけない。
うーーん、ほら、あれだ、なんか耳年増とか、そんな感じ?
だけど、俺を夫にするとかも本気と言えば、本気っぽいけど。
あれか、年上の男が無条件でカッコよく見えるあれか、幼馴染も言っていたものな「同級生だと絶対に冴えないのに年上ってだけでカッコよく見えるアレは何なんだろう」とか。
「ジュース美味いな」
「ああ、美味いな」
と俺の顔を見ながらニコニコしている、
このやり取りも既に5回目ぐらいなんだが、初めて聞いたかのように返してくれる。
…………。
…………。
どうしたらいいんだろう。
さっきから話を合わせてばかりで、なんかもう、よく分からなくなってきた。
「どうした? カグツチ」
「え? いや、別に」
「少しでも元気になってきたのなら何よりだ」
「あ、ああ」
そっか、心配してくれているのか、まあ、完全にって訳じゃないけど、、。
ギュッと強めに手を握られ、すっと、指を絡ませてくる。
そのまますっと、
自分の胸の付近に手を誘導してきて、
え、え、ちょっと、ちょっと、どうするの、女王、いやいや、やっぱり、意味が分かっていてやってるよね。
へ? でも11歳でしょ、いや11歳ともなればそりゃあ異性のことを好きとかあるし、俺もあったけど。
え? え? え?
やばいって、でも俺の方から振りほどくって、ダサいし、その、あの。
「アンタ11歳相手になにやってんの?」←ジウノア
「ぴぎーー!!」←カグツチ
勢いよく後ろを振り向くと、タオルを巻いたファルとジウノアがいた。
「どど、どどどど、どどどどどどど」
「はいはい、落ち着きな、どうしてではありません、はいちょっと話あるから、おいでカグツチ君」←ファル
「女王失礼しますよ」←ジウノア
「ちっ!!! どうぞ」
●
「つーか、アンタ、、、」
「どういうことなのかい?」
と俺は壁ドンされた状態で2人に囲まれている。
だけども。
だけもさ、、。
「どういうことって、どうしたらよかったの?」
「「は?」」
「あのさ、ひょっとしてだ、誘われてた?」
「そりゃそうだろうよ、それ以外あるの?」
「だだ、だって相手まだ11歳」
「ませガキなんでしょ?」
「マセガキって、でも、ど、どうして俺なの?」
「…………それ本気で言ってる?」
「だ、だって、惚れたって、俺イケメンじゃないよ」
「イケメンじゃないって、惚れたって言われたんでしょ?」
「だ、だからね、俺さ、今までさ、女と話すのって全然苦じゃないからさ、自分から行くことはあったんだよ、だけどさ、実は、女の方からってなくて、その、つつ、つまり、モ、モ、モテたことなくて、でも相手の年とか、はじめてだから、どうしたらいいか、わからなくて(ウルウル)」
「「…………」」
「「…………」」
シーン。
「「乙女か!!!!」」
「「つーかさ! 私の時は滅茶苦茶強気強引だったじゃん!」」
「自分から行くのはいいの! 「キモいと思われようが、そんなの気にしてられっか!」って感じでさ、だけど、その、それは「自分が誘われない側」であるからこそなの! 「自分は絶対に誘われない側だから女は誘うしかない!」ということなの!」
「微妙に自慢になってない……」
「自慢じゃないからな!(ノД`)シクシク」
とそんなカグツチに。
「まったく、我がクランの拗らせ処女に乙女男子は」
「それで? どうするの?」
「どうするの? って?」
「誘いに乗るのならこのまま帰るけど」
「へぇ?」
とお互いに見つめ合って、、、。
カグツチはプルプルと震えながら。
「は、はは、あの、さ、2人ともさ」
「助けて(´;ω;`)ウゥゥ」
そんなカグツチに2人は吹き出すと。
両側に2人が手を組む形となった、って、おっぱいが。
と考える間もなく再び両手に花の状態でテラスに出る。
「……随分と仲良しなんだな?」
ジト目に女王ににっこりと笑う。
「はい、カグツチとは切っても切れない絆がありますので、そうそう女王陛下、これから私たち閨を共にしますので、失礼ますよ」
ジウノアの言葉にピシっと空気が凍る。
「ほ、ほほう、なるほどなるほど、だがジウノア大主教、時と場合を」
「カグツチに少女趣味は無いんですよ女王陛下」
とのファルの言葉で更にピシッ空気が凍る。
「それに今の傷心のカグツチには女の慰めが必要なんです、おや、女王のお年頃では理解できないかもしれないですが、男はそういう生き物なんですよ」
「り、理解しているぞ、だから私が」
「繰り返すとおり、カグツチに少女趣味は無いんです、だからそれは「妾」たる私達の勤め。妾でイチイチ動揺しては度量が知れる、妾に対しての余裕も大事ですよ陛下♪」
「ぐっ!!」
「それでは、ごきげんよう」
と3人は風呂場の外に出て行った。
――
着替えた俺達。ジウノアはベッドの枕もとで女の子座りをすると。
「ほれ、頭のっけなよ、それで目をとじな」
と言ってくれた。
なんか恥ずかしいなと思ったけど、頭をのっけて目を閉じる。
「ん、、、、」
回復魔法をかけてくれている、おお、これは。
「アンタ寝てないでしょ? これは夢見もよくなるから、そのまま寝なよ」
「う……ん」
と横で体の重たさを感じる。
「まったく、こんな美女2人と同衾できるとは、君も果報者だ」
「あ、ああ、そう、、、、、だ、、、、、、、、、な」
すうすうと寝息を立ててる。
「まったく、世話の焼ける……って、ひっ!!」
ジウノアがビクッと震えてファルも視線を移すと。
いつの間にかクォイラが立っていた。
「…………」
「ひ、一声かけなよ、びっくりするでしょ」
「…………」
「ちょ、ちょっと、その視線辞めて!」
との抗議に視線を外し、カグツチを間にファルと反対側に寝て。
「…………」
カグツチの肩越しにファルをじっと見つめる。
「だ、だからその視線を外してくれたまえ!」
「…………」←視線を外さない
「ひ、ひー、こわいよー」
と次の瞬間、すっとクォイラが寝落ちした。
「zzzzz」
「ふー」
と首元に手を添えていたのはジウノアだった。
「まったく、本当に我がクランの乙女男子に拗らせ処女は」
「はぁ、怖かった、ったくカグツチもカグツチだ。クォイラがあんなにも「私の処女貰ってよオーラ」出しているんだからさ~、甲斐性見せろっての」
と言いつつ、結局2人もデカい布団に寝ることにして。
起きた時にまたひと悶着あったのはまた、別の話。




