第72話:風呂場にて・前篇
「カグツチ・ミナト、世界ギルドへの加盟は承認される見通しだ、まだ我が国力は低く冒険者実績も無い故に世界ギルドの立場が低いが、魔石の採掘で世界連盟では一定の力を持っている。ワドルフが排除されてアマテラスとの親交も得た、何から何までお前のおかげだ」
「は、はあ」
「それとお前の豪邸の王族直轄地への手続きは無事に完了、治外法権等の特権も付与した、ただ余り派手にやり過ぎないでくれよ、私たち王族でも庇えなくなる。まあそんな馬鹿な事はしないと信用はしているがな、それと無条件とは言ったが出入国する際は一報を頼む」
「は、はあ」
「ただ、アマテラスの協力もいるぞ、まあそこら辺は現在クォイラ嬢と調整を進めているからな」
「は、はあ」
「それと、アマテラスの世界ギルドから今後の窓口は女王である私となる事でいいか? アマテラス担当の世界ギルドのギルド嬢から問い合わせがあったが」
「よ、よろしくお願いします」
「それでどうだ?」
「ど、どうだとは?」
「だから私は尽くすタイプなんだ」
「そ、そうか、えーっと、まあ、その~」
「気持ちいいか?」
「え?」
「だから、、、」
「こうやって背中を流していることについてだよ」
そう、背中を流してもらっている、風呂場で。
風呂に入っていたら突然「報告事項がある」とタオル1枚の姿で来た。
呆然とする俺に報告を受けるという名目で背中を流してくれている。
背中か、まあ流してくれることについては。
「ああ、確かに、背中を流してもらうのは気持ちいいな」
「そうか! それは良かった!」
「あ、あのさ、背中流してくれるのはありがたいけど、仮にも一国の国主が一人の男に尽くすのってあんまりよくない気が、国民感情とか考えて」
「なんだ、そんな俗な事を気にするのか、ここには2人しかいないだろう」
「い、いや、そうじゃなくて、あ、あのさ、女王は」
「リシアでいい、親しきものは幼名で呼ぶものだ」
「あ、ああ、あのリシアは、つかぬことをきくけど、年は?」
「? 11歳になったばかりだが?」
「じゅ、じゅういち、、、、」
いや、、。
絵面ヤバくないか。
いや、割と本気で、だって11歳ってさ、ほら、その、コンプライアンスとかうるさいじゃないか、異世界だけども。
まあ実際マジに、献身的に尽くしてくれているけども。
いや、やっぱりまずいよな、ここは。
「な、なあ」
「どうした?」
「ちょーっとのぼせてきたかなぁと、そろそろ出たいかなぁ」
「そうか、おい」
と控えていた女中に声をかける。
「私たちはこれからこのまま露天風呂があるテラスに出る。カグツチは甘党だ、甘く冷たいジュースを、私にも同じものを持ってこい」
「かしこまりました、陛下」
「え?」←カグツチ
――同時刻・風呂場の出入口
ここは王族の風呂場の出入口、そこでは2人が押し問答をしていた。
「ですから、この風呂場は王族の方しか入れません」
とは女中の言葉、その言葉で風呂場の前で女中に阻まれているのは。
「カ、カグツチが入っているでしょう?」
クォイラだった。
「彼については問題ありません。カグツチ・ミナトは、女王の夫候補、つまり準王族扱いとなります故、許可が下りております」
「ぐっ! 我々はアマテラスでありカグツチの仲間、今回の依頼について玉座を含めた国土への無条件の立ち入りを認めさせていますが」
「厳密にはここは玉座ではありません。それと依頼は達成されて契約上は終了しています。その書類に署名したのは他らならぬクォイラ嬢だと女王から伺ってます」
「ぐっ!! なれば現在、治外法権等の特権が」
「承知しています。ですが繰り返すとおり、特権は認められおりますが、その特権事項に王族の風呂に入る事項の記載が確認できておりません」
「ぐっ!!! もう!!! 融通が利かない!!!」
と地団太を踏んでいると。
「この拗らせ処女め」
という声に振り返るとファルとジウノアがジト目で見ていた。
「誰が拗らせ処女ですか!」
「挑発に乗るアンタが悪い」
「ちょ、挑発って!」
そう、この状況に至るまでこんなやり取りがあったのだ。
●
それはまさに冒険者としての契約終了に署名をした時だった。
「クォイラ嬢、どうだ? 裸の付き合いでもしないか?」
とこんなことを言い出したのだ、驚いていると。
「我が王族の風呂は格別だぞ」
とのこと、いきなりそんなことを言い出すとは思わず。
「? よろしいのですか? 確か王族以外立ち入りが禁止されていると聞きましたが」
と返した。
「うむ、風呂場は玉座ではないが、風呂は裸になり無防備になるだろう? 警備上の理由で認められなかったのだよ。とはいえ長年の歴史で身内で殺し合う事もあったがな。ま、今はその心配もなく身の安全のためという「建前」が通るようになったのは皮肉だがな」
「理解しました、しかしその建前で私達を誘うとはずいぶん柔軟なんですね」
というクォイラの言葉に。
「なに、他意はないさ、妾達と仲良くしようと思ってな、それだけだよ」
という言葉でピシッと空気が凍った。
「……ぇ」
「隠す必要はない、こちらも調べさせてもらった。アマテラスの絆は知っている。というより全員一度ぐらいは手を出されているだろう。なに責めようという訳ではない、あれほどの男だ、私はあの男の妻として寛大な」
「ちょちょちょ、ちょっと待ってください女王」
「なんだ?」
「め、め、妾とは、ひょっとしなくても私、いえ、私達の事ですか?」
「そうだが?」
「い、い、言っている意味が分かりません、妾? どこから突っ込めばいいのやら」
「? ルザアット公国でも支配者階級の貴族達の多くが妾を持っていると聞いた、かのクロルソン公爵は19人の妾を持っていると聞いたぞ、確かカグツチもルザアット公国で男爵の爵位を叙されていたな?」
「い、いえ! だから そうではなく!」
「ああ、側室を持つのはコヴィスト王国でも変わらん、別に王位に限ったことではなくアルも側室を持っているぞ。まったく男というのは国が違えど何処も一緒なのは呆れる次第だがな、まあ私は妾は」
「だから貴方があの男の妻になるとか! 私達が妾とか!! 意味が分からないと言っているのです!!」
「ふむ、なるほど、最初に言うべきだったか、単純にあの男に惚れたのだ。だからプロポーズをした、なに、結婚したとしても女王は私、そのままだ、冒険者稼業もぜひ続けてほしい」
「あの男に惚れる? ず、随分な悪趣味ですね」
とわなわなと震えるクォイラだったがポンと手を叩くと。
「そうだ、アイツの女の好みを教えてあげましょうか?」
としたり顔で問いかける。
「ほほう、是非伺いたい」
という言葉に一呼吸置くと。
「黒髪ロングの巨乳処女です、どうです? 気持ち悪い事この上ないでしょう?」
「? あの妄言を本気にしたのか?」
「ぐっ! な、ならアイツの趣向を知らないのですか!?」
「趣向? ほう、それも伺いたいな」
という言葉でクォイラはしたり顔で。
「ハーレム物のエロ本を多数持っています、しかも巨乳ばかり、どうです? 女を胸で判断し、女を多数侍らせて悦に浸る、女を物としか見ていない証拠でしょう?」
「? 別に不思議ではないだろう? 先ほどの側室の話のとおり、世界各国の男に普遍的にみられるというか、というかそれこそルザアット公国の同じクラスSのセシルは、我が国の美女たちも虜にされてクランの末端を担っていることも確認している」
「ぐっ!!!」
「それに、趣向はまあ、ハーレムか、まあ、確かに感心は出来ないな」
「ですよね!! ならば!!」
「だがアレはいい男だ、分かりづらいがな、それと女を物と言ったが、アイツは女を大事にするよ」
「何故そんなことが分かるんです!?」
「アマテラスの3人の顔見れば大事にされていることが分かる、って、ひょっとして、クォイラ嬢はカグツチと将来を約束した仲だったか? ならば身を引くが、、、」
「は!? そんなわけないでしょう! あんなクズ! 好きでもなんでもなければ恋人でもなんでもない!! 喜んで差し上げますよ!!」
というクォイラに女王ははっとすると。
「……素直になれないのではないか?」
「はぁ!? もし仮にそういう仲になるのなら、アイツが地べたに頭をこすり付けて「お前じゃなきゃ死ぬー!」という男して人としての尊厳を全てて捨てて私に縋りつけば考えてやっても良いという程度! そもそも(以下略)」
――現在
「アンタさ、11歳相手に何やってんの?」
「ぐっ!!!!」
「はー、カグツチのことになると本当に君は、、」
「好き放題言いますね! ならどうするんです! 私を批判するなら代案を提示してください!!」
そのクォイラに2人は再び「はーー」というデカいため息をつくと。
「女中さん、私達、女王から裸の付き合いをしたいと言われたの、だから来たんだけど、通してくれる?」
とジウノアが話しかけるが首を振る。
「繰り返すとおり王族以外は」
「前国王の治世」
「え?」
「というか前国王に関わらず、かの歴代の王族の男達は、妾達と共に風呂に入ったそうね?」
「…………」
「その時に使った方便が「世継ぎを残すかもしれないから」という理由での準王族扱いというのだからふざけてるよね~、んでさ、なんと現女王陛下はそのふざけた理由で私達を誘い、今まさにカグツチを入れている。中々の兵ね、好きよ、そういう人」
「…………」
「女王の裸の付き合いとは、その意味を指す。んでね、私とファルはカグツチに何度も手を出されている、アイツは言った「お前達のことは絶対に失いたくない」とね、ファル?」
「ああ、そうさ、今思い出しても体が熱くなるよ、2人で冒険して達成して、盛り上がってお互いにね、三日三晩お互いを求めあったのさ、いやん♪」
「あれは最高のスパイスよね、お互いに憎からず思い、デカいことを成し遂げて、あれは燃えたわ」
「…………」
「そして、仮にカグツチが女王と結婚した場合は、私たちは妾候補になる、その候補たる私は準王族扱いとなる」
「…………」
「迷うのなら、確認して来てね♪」
女中はため息をつくと、どうぞと2人に道を譲った。
「融通が利くじゃない、流石女王陛下の側近ね」
と歩こうとする2人の肩をガシッと掴むクォイラ。
「痛いよ、なに?」
「な、なるほど、手法については負けを、み、認めましょう、ですが、何度も手を出されるというのは、お互いに燃え上がったとか! 流石に方便ですよね!? ま、まさか、2人で何回かクエストをしていましたが、その時ではないですよね!?」
そんな必死の形相のクォイラに2人は顔を見合わせると。
「「さてね♪」」
と答えなかった。
:後篇へ続く




