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第68話:クラスSなんて


――玉座



 当初の計画では、カグツチが殲滅戦でワーニッツを仮死状態にして勝利して確保する予定だった。


 そしてカグツチは副頭目に昇格し暴力装置として頂点に君臨した後、世界ギルドに通報しワーニッツを引き渡す。その際にファルがまとめた情報ともとに王族が兵隊を送り込みワドルフを確保という流れだった。


 それはカグツチが暴れたというイレギュラーが発生したものの、それは事前に予測されていたため、計画はとん挫することなくクォイラ、ファル、ジウノアの尽力により修正で終わる事が出来た。



――カグツチ・ミナトがワドルフを確保し城へ到着、現在玉座へ向かっている



 その一報が入ったのは、少し前。


 無事、依頼は達成されワドルフの郎党たちは全員捉えられて投獄されている。ワドルフの専制から解放されて王族主体によるコヴィスト王国に政治が戻るのだ。


 つまりコヴィスト王国の歴史的転換期だと解釈もできるが。



 ルデエル王女はずっと震えており、アル王子がずっと肩を抱いている。



 暗黒街の凄惨な状況は既に王族の耳に届いているし、ワーニッツの処断だけではなく、ワドルフの居場所を吐かせるために副頭目たちを拷問し、最終的に百舌鳥の早贄状態で闘技場中央部に放置したことも確認している。



 人の所業ではない、どうしてこんな真似ができるのか。



 アル王子とルデエル王女はその恐怖から来るその想いが支配していた。



 ワドルフの専制から解放されたことは、コヴィスト王国はカグツチ率いるアマテラスの掌の上、まな板の鯉状態であると。


 本当に、本当に今更ではあるが、2人はカグツチ・ミナトに依頼した事を、取り返しのつかないことをしたのではないかと後悔していたのだ。


「ほ、報告します!」


 震える声で近衛兵が入ってくる。


「ク、クラスS、カグツチ・ミナトが到着しました!」


 一気に跳ね上がる緊張感、しかし臆してはいられないとばかりに身なりをただすと。


「わ、わかった、とおせ」


 という言葉に近衛兵が扉を開け、、、同時にカグツチが入ってきた。



 その姿を見た時、アル王子とルデエル王女は思い知らされた。



 その血肉にまみれた姿、人の業を背負った目。




――ああ、そうだ、ここで応対を間違えたら死ぬんだろう。







 カグツチは、肩に担いでいたワドルフを床に放り投げる。


「ぎゃん!」


 という間抜けな悲鳴の元、意識が覚醒して、カグツチを認識をすると。


「ひ、ひぃぃ!! 化け物!! 近寄るなぁ!!」


 と後ずさった。


 そんなワドルフにアルは一瞥するのみ、既に些事とばかりにすぐに視線を戻す。


「…………」


 改めてアマテラスを見る。


 カグツチの後ろには3人が立ち自分を見ている。


 そう、カグツチだけではない、世界に名だたるアルスフェルド子爵家令嬢、補助魔法の天才、史上最年少で賢人会に所属している才媛、世界二大宗教フェノー教の大主教であり回復魔法の天才。


(これが世界最高のクランの一つ)


 これから報酬を支払わなけれならない、だが対応を間違えてしまえば。



 この4人の気まぐれ一つで我が国が亡ぶ。



「まずは依頼達成感謝する、カグツチ・ミナト、王族の最高位であり第一王子である私が代表して礼を申し上げる」


 と右手を胸に添える王族流の最高礼をカグツチにするが。


「…………」


 表情を変えないまま微動だにしない。


「お、おかげでワドルフの専制から解放された。我がコヴィスト王国はこれから良き方向へと進むだろう」


「…………」


 カグツチは少し不快な表情を見せた時だった。


「ふざけるなぁぁぁ!!」


 と場違いに半狂乱な声が木霊するのは、ワドルフだった。


「カグツチ!! お前のせいで!! お前のせいで私の王国が!! お前は人間じゃない!! たかが娼婦とスラムのガキ一匹が殺されたぐら




 次の瞬間ヴァルフの首が刀により一刀両断された。




 数メートルの凄まじい血しぶきと共にそれに反するように、どさっとあっけなく落ちるワドルフの生首。



 ここでようやくカグツチは口を開く。



「正式な裁判を経て処断すると聞いたが、ここは王族が治める法治国家ではないのか?」


「その認識で間違いないよカグツチ・ミナト、王族のトップは司法のトップを兼ねているからな、証拠は揃い罪人がいる、後は処断するだけだ」


「道理だ、しかし首を一刀両断とはお見事、見かけによらず武芸にも通じているようだな」


 カグツチの視線の先にはアル王子、、、、。


 ではなく。




「リシア王女いや、リシリティア「女王」」







 後継者。


 これは全ての組織にとって、世界はもちろん日本だって例外じゃない問題だ。


 コヴィスト王国は王族が衰退しているとはいえ、王族が最高権力者であることは間違いなく、当然王国憲法により後継者についてはちゃんと規定されている。


――王が崩御またはそれ以外の理由で不在となった時、直系の王族から選ぶこと。選出方法については直系の王族が決めること。


 本来火種になるような決まりも、直系の王族の数が少ない事、そして皮肉にも勢力が弱いため3人しかいなかったため、既に3人だけで選出と継承式を済ませていたのだ。


 王となれば権力は直系の王族の比ではない、王族主体の法治国家の建前はワドルフですら覆す事は出来ないこそ隠し通しておく必要があった。


 そして継承したのは長男アルと長女のルデエルではなく。


「随分と簡単に正体を明かすんだな?」


 そう末子である即位し名を変えたリシリティア女王だった。


「既に私が末子の王女として振舞っていたのが茶番となっていたからな。身分を偽ったのは我が身を守るためだったが、今は何よりお前に殺されたくはないよ、カグツチ・ミナト」


「察しがよくて何よりだ」


「どのあたりで気づいた?」


「ルデエルの振る舞いから入れ知恵をされた形跡があった。最初はアルだと思ったが、失礼だがそうとは思えなかったものでね」


「ふむ、それで私がついた嘘は裏切りに該当するか? カグツチ・ミナト」


「そうだな、どうするかなってのが今の俺の心境だ、だから今のアンタの仕事は「俺に組む価値があると思わせる」ことだ」



「わかった、なればそちらが提示する報酬を全て飲む、それと暗黒街の後始末の全責任はこちらが取る」



 ここで初めてカグツチは答えずクォイラを見る。


「報酬についてはまだ提示をしていません」


「……なるほど覚悟が決まったようで何よりだ」


 俺は踵を返す。


「クォイラ、後を頼む」


「どちらへ?」


「散歩と散財」


「分かりました、後は任せてください」



 そのままカグツチは立ち去った。





 カグツチがいなくなった玉座には重苦しい空気が支配する。



「これからどうなるんだ」

「王族主体とはいえ」

「これから、圧政の日々が、、、」



 近衛兵たちも一応に暗い表情をしており。



「アル兄さま、やっぱり、クラスSに依頼したのは」

「しっ! 今はまだ我慢だ。コヴィスト王国の未来は我々が何とかしないと」



 と2人も悲壮感に包まれている。



 その中でそのどちらともに属さず、何か想いを馳せるような表情でカグツチがいなくなった後を見ていたのは、リシリティア女王だった。



 その表情を見てクォイラが話しかける。


「リシリティア女王」


「なんだ?」


「どうかされましたか?」


「……いや、なんといったいいか」


 何かを考えているような女王を見てクォイラは。


「女王、一緒に来ていただきたいところがあります」


「え?」







 そこはコヴィスト王国を一望できる小高い丘だった。



 その丘の上に二つ並んでいる墓石。



 二つの墓石はユリティモナとメーバルの物だ。




 カグツチは、墓の前にして立っている。



「2人とも知ってるか、俺はさ、元は違う世界に住んでいて、それで異世界転生して、そのギフトとして無敵の戦闘能力を手に入れたんだ。無敵の戦闘力ってのはさ、人種の天敵種ドラゴンを倒せるほどだ」


「俺の好きな創作物じゃあさ、異世界転生して無敵の戦闘力を得た主人公は何でもできるんだよ、大事な仲間と協力したり、振り回したり、振り回されたり、楽しくやるんだよ」


「だけど、だけど、、、、、、」



「実際の、、、、無敵の戦闘能力なんて、、、、死なないというだけで、本当に意味がない、何がチートだ、なにがむてきだ、おれはけっきょく、、、」



 膝を床に着く。



「うぅ」


「ううううーーー!!!」



「うあぁああぁ!! ああああ!!!」


「すまない、ほんとうにすまない!! おれが、ばかなばっかりに、おれがばかなばっかりに!!! いくらでもやりようがあったのに、おまえたちは、おれと、しりあいにならなければ!!!」




「ごめん、ごめんよう、わあああああぁぁぁ!!!」




――




「…………」


 カグツチの慟哭が木霊する。


 少し離れた場所で、アマテラスの3人とリシリティア女王がその姿を見ていた。


「女王、カグツチがそれこそワーニッツの様な奴だったら、とっくに我々の方から見限っていますし、クラスSになんてなれなかったでしょうね」


 クォイラの言葉にリシリティア女王は。



「疑問に思っていたんだ。被害が少なすぎると」



 と発言した。


「え?」


 クォイラは驚いた表情で女王を見ると語り始める。


「クォイラ嬢達は、カグツチをドラゴンと表現した。そしてそれは物理的な強さで言えば誇張でも何でもなかった。本来ドラゴンたるカグツチが理性を失ったのなら、暗黒街だけじゃない、クォイラ嬢が張った結界を超えてスラム街、そして王城周辺の首都まで壊滅的な被害をもたらし、結果国は滅んだかもしれない状況だった」



「だが結果はどうだ、被害は暗黒街のみ、そしてワドルフの影響を排除して、生きたまま確保した」



「カグツチは、心に傷を負い、それでも冒険者としての理性を失わず、いや失う事が出来ず気持ちの制御ができないまま依頼を全うした、カグツチは優しく繊細なんだな」


「玉座に入ってきたとき、殺されるとも恐ろしいとも思わなかったのは、自分でも不思議に思っていたが、ようやく合点がいった」


「なるほど、あの男がクラスS、世界最高位冒険者、次元を超えし者か」


「ありがとうクォイラ嬢、確かカグツチは風呂好きだったな、玉座には王族しか入れない風呂がある、確か用事は散歩と散財と言っていたな? 戻り次第用意させよう」




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