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第67話:世界ギルド・派遣




――クラスS冒険者、カグツチ・ミナトより世界ギルドに通報



――特級手配冒険者、クラスAワーニッツ・コルドランを処断し確保、回収願いたい



――場所はコヴィスト王国郊外、別紙を参照せよ、同所に「保管」している、なお同人は、、、、、




――無傷で命に別状なし




 世界ギルド。



 全ての冒険者の総本山。


 世界機関の一つで世界中に支部を持ち、その規模は世界二大宗教に匹敵する。


 主な業務は冒険社会の管理運営。


 詳細業務は他に機会があれば触れるとして、クラスS及びクラスAの冒険者は自身が所属するギルドの他に世界ギルドへの所属を義務づけられており、依頼は全て世界ギルドを通さなければならない誓約がある。




――世界ギルド所属・飛行船・船団




 カグツチ・ミナトの通報により世界ギルド最高理事会はワーニッツ確保のための臨時クランを編成を決定、当該場所へ派遣確保命令を下した。


 現在およそ5機が編隊を組んでコヴィスト王国方向に向けて飛んでいる。


 その編隊の旗艦内では、異様なまでに緊張感に包まれている。


 本件の確保対象者はクラスA冒険者ワーニッツ・コルドラン。


 人知を超えし者と称されるクラスAは文字通りの一騎当千であり国家の頂点冒険者も数多く務める世界冒険者として位置づけられている。


 ワーニッツは逃亡中であるものの、物理戦闘力を取れば同クラストップ10に名を連ねる、つまりワーニッツを確保するのはクラスAでも危険が伴い、現在までに数度の確保失敗により同じクラスA1名を含む多数の死者が出ているのが現状だった。


 となれば安全に討伐及び確保するのならクラスSが至上であるが、クラスSと世界ギルドの関係は「君臨すれど統治せず」という関係であるため、実現することなく野放し状態であった。


 とはいえ通報内容に補足として「確保時において危険性無し」という文言がプラスされており、今回の任務については討伐ではなく確保であったものの、それでもクラスB冒険者10名を筆頭に事務官技官等を含めた100人程度の臨時クランが組まれた。


「…………」


 危険性無し、クラスSの通報等もなればそれが真実であろうと分かってはいるがクラスB冒険者たち含めたすべての冒険者は、相手の状態によってはこのクランからの死者は免れないという覚悟を決めて望んでいる。


 しかし問題はそこだけではない。


「隊長、現在世界ギルドの名前でコヴィスト王国より入国許可の申請をしました」


 クラスB冒険者がこの編隊の隊長に報告する。


「分かりました、全員待機をお願いします」


 と答えるのは冒険者ではなく所謂「世界ギルドの背広組の幹部」と呼ばれている人物だ。


 背広組と冒険者としての関係はまた別の機会に述べるとして、その背広組が今回の討伐隊の隊長を務めている。


「しかし隊長、コヴィスト王国は世界ギルドに未加盟ですし、そこら辺はそうでなくても政情不安定の国も多いですから、入国の許可なんて本当に下りるんでしょうか」


 という言葉、そうログ地帯は、世界でも有数の無秩序地帯、多くの国が立ちあがっては倒産し10年の間に3分の1が入れ替わる程に秩序が崩壊している。


 しかしコヴィスト王国はその中でも、政情は安定しており世界国家連合に加盟している独立国であるも、世界ギルドを含めたいくつの世界機関に未加盟で協力的ではない。


 よって現状、世界ギルドの名前で申請しても入国許可が降りなければ強制的に入国することができず場合によっては世界ギルド本部の力を借りるほかなくなるが。


「大丈夫よ、というか下りないことはありえないでしょうね」


「え?」


「それとこれは勘だけど、この任務は安全に終わると思うわ」


 あっさりと、それでいて確信を持ったような言葉に一同呆気にとられる。ともすれば油断とも捉えられ、「現場を知らない背広組」なんて非難も出そうだが「彼女」の経歴を知っているから表立った反感は無い。


 とすぐに通信機能に反応があり事務官から報告が届く。


「きょ、許可が下りました! こ、これは、このサインは、え? どうして?」


 その入国許可には王族トップの最高責任者のサインがしてあったが、、。


「……なるほど、そういうことだったのですね」


「え?」


「構いません、これは本物です、そのまま入国しますよ」


「…………」


 当然、臨時クランのメンバーはコヴィスト王国の王国の窮状、その打開のため王族がアマテラスに対して依頼が入っていることは把握しているが、それでも事情が呑み込めないまま指定ポイントに向かう飛行船、


「っ!」


 辺りがざわつく。


 指定されたポイントに近づくと「目印」が見えた、おそらくそこにいるという事なのだろう。


「全員第一種戦闘配置、急降下に備えてください、着陸後、打ち合わせどおりクラスB冒険者が頭で展開、ワーニッツの確保を」


 隊長の合図により角度を付けて飛行船は急降下して、着陸。


 そのまま出入口が勢いよく開き、冒険者たちが展開する。


「動くな!! ワーニッツ・コルドラン!! 世界ギルドだ!!」


 と戦闘態勢に入った冒険者たちが、周りを取り囲むが。


「……え?」


 あれ、なんだあれと思って。



「ぶしゅーー!!! ああああういういあああ ぼしゅーーーー!!!!!!」



 何かを察したその物体は不気味な音を立てる。


 まだ何なのか分からなかったが、、。


「うっ!!」


 それが何なのかとわかった瞬間、その場にいた冒険者たちの多くが目を背けたり顔を歪める。


「皆さん目を背けないで、まずは確認です」


 隊長と以下数名がその物体に近づく。


「隊長、ギルドカードです」


 物体の傍に置かれた拾われ手渡されたギルドカード、技術班はすぐに解析を始める。


「本物です。間違いなく、クラスAワーニッツ・コルドランのものです、それと」


 もう一枚のギルドカード。


「これも間違いありません、クラスS、カグツチ・ミナトのギルドカードです」


「分かりました、カグツチのギルドカードは私が後で本人に返しておきます」


 と技術班は続いて血液を採取するために注射をするが。


「ぴーーー!!! ぶしゅーーー!!」


 と激しく抵抗を見せたため、冒険者達で制圧し血液を採取し解析をかける。


「……本人確認、ワーニッツ本人です」


「うええぇえあああーー!!!! ぴゅー!! ぷしゅーー!!」


 ずっとその物体、、。



 いやワーニッツ・コルドランから間抜けにも聞こえる音。



「…………」



 繰り返す、カグツチからの通報にはこうあった。



 ワーニッツは無傷で命に別状なし。



 その全てにウソが無かった。






 四肢を根元から切断されて、目を奪われて瞼を塞がれて、耳を潰されて、鼻もえぐられ、下あごが丸々なくなっており、歯も全部抜かれて、声というか声らしき音がするだけ。






 そしてそれ以外は全くの異常がないのだ。



 壮絶な悪意。



 芋虫のように這いずるワーニッツ、凄惨な状況なのに傷の痛みで苦しんでいる様子もない、何故か無傷なのだ。


「ど、どうやってこんな真似を」


「エリクシールを使ったのでしょうね」


 隊長がそう述べて全員我に返る。


「エリクシールって!?」


 エリクシール、万能薬に近い霊薬と称される薬。



 つまり、、つまり、、、、?



「ど、どういうことなんですか?」


 という隊員とは別の情報班が震える声で報告する。


「た、隊長、たった今、暗黒街の生き残り、観客の1人から証言が取れました」


 顔面蒼白のまま、報告する技術班、それによると。



 四肢を切断、動けなくなったワーニッツ。


 カグツチは嗤いながら、目を抉り出して瞼を塞ぎ鼻を引きちぎり耳を引きちぎり内部を指を突っ込み抉り弄び、歯を折り下あごを口の中に手を突っ込んで引きちぎり、それをエリクシールを適宜使いながら処理した。



 エリクシールは万能薬に「近い」とされる。


 近いというのはどういう意味か、


 つまり目を抉り出せば傷としての治療は無傷で終わるだけで「眼球そのものの再生は出来ない」という意味。


「うっ!!」


 ようやく思い至る。



 カグツチがエリクシールを持っていた理由は、自身の治療の為ではなく、その万能薬に「近い」ことを利用してカグツチはワーニッツを「作り変えるため」だった。



 その処理も最初は観客たちは大いに盛り上がっていたそうだ。


 ただ次第に目の前で繰り広げられたのは殲滅戦なんて殺し合いでも何でもない、ただの悪意だという事が分かると徐々に場が凍り付いていく。


 勘のいい客、つまりこの証言者達はこの時点で「身の危険を感じて」逃げたそうだ。


 その後は阿鼻叫喚の地獄絵図だったそうで、「勘の悪い客たち」が何人生き残ったのは分からないそうだ。


 カグツチが暴れたのはそれが僅か半刻程度の出来事だったのだが。


 カグツチは最後は副頭目を含めた上級幹部達を瀕死の状態のまま生かしておいて、助命と引き換えに目的の情報を引き出し、当然に約束は反故にして生きたまま肛門から棒を突っ込んで百舌鳥の早贄状態にして城へ帰投したという。


「うぐ」


 何人かの人物が未だに口元を抑えてる。



 ワーニッツは外道である。



 だが、それを知っても尚、むごいという感情が先行する。


「ぴしーー!! んぴゅーーー!!」


 その声に思わず、耳を塞ぎそうになる。


 何かの感情がこもっているようなそんな音に耐えられなくて。


 そう絶句しているギルド職員に。


「逆鱗に触れたのでしょう、カグツチが目をかけていた高級娼婦と可愛がっていた舎弟がワーニッツによって処断されたと聞いていますから」


 と隊長が述べる。


 クラスAの物理職の中でトップ10に入るワーニッツ。


 それを誰がやったか、なんて誰も話さない。


 本当にやったのか、なんて疑う必要はない。


「ですが、それでも、、、」


 クラスB冒険者達は、震える。


 確かにワーニッツは恐ろしい。


 自分もまた世界的冒険者とまではいかなくても、祖国では財産とまで称賛されている。


 だが、これはまた、別のナニカだ。


 口元を抑える冒険者たちは、ワーニッツ所在地の目印、壁一面に描かれた、そのワーニッツの血をもって描かれたであろう巨大な鳥。


 三本足の羽を広げた鳥、冒険者の世界では余りに有名なエンブレムを見ていた。


「これが厄災の鳥、なんと禍々しい」


「八咫烏」


「え?」


「厄災の鳥と呼ばれるのを彼はあまり好まないわ、八咫烏と呼ばないと」


「ヤタガラス、、」


「カグツチ・ミナトの祖国では太陽の化身と呼ばれ神の末裔を勝利に導いた縁起の良い鳥だそうよ」


「…………」


「さて我々の任務はあくまでワーニッツの回収、今回のクラスSのクエスト調査はまた別の班の仕事、済ませたら世界ギルド本部へ戻りますよ」


「ですが、本当にこのまま帰るんですか?」


「多分何かしらアクションがある筈、それに今のアマテラスに、いえカグツチに接触しない方がいい」


 という言葉で「そうだ」とばかりに回収にかかる冒険者達。


「ああ、彼女が言うのだから、間違いないだろう」

「てっきり、アマテラスと共同作業でもするのかと思ったが」

「アマテラスと会わなくてこっちは良かったがな」


 その作業を横目で見ながら彼女は通信機で世界ギルド総本山に連絡を取る。


「はい、はい、確保後、本部へ帰投します。はい、いえ、おそらくは向こう側からアクションがある筈ですから、それを待てばよろしいかと思います」



「それでは失礼ます、会長」



 との言葉で通信を切って再びヤタガラスを見る。



「こんなことをしているから、厄災の鳥なんて呼ばれるんですよ」



 彼女の独り言は誰も聞こえない。



 今回の臨時クランの隊長である彼女。



 彼女は、ギルド嬢。



 世界ギルドのギルド嬢である。




――



 ワーニッツ・コルドラン



 元クラスA冒険者。


 異次元の戦闘能力を持ち、数々の悪行が結果功績となりクラスAに昇格したソロ冒険者であったが、カグツチの逆鱗に触れて身体を作り変えられた。


 本来であれば彼の罪状では死刑が妥当であり、その死刑執行により生き地獄から解放されるかと思いきや、カグツチ・ミナトとコヴィスト王国王族の「助命嘆願書」により、死刑から終身刑と減刑された。


 結果、彼の生き地獄からの解放は老衰で死ぬ意外に無くなった。


 あの状態のワーニッツが今どんな世界を生きているのかは想像するしかない。


 あの声ともつかない声を「殺してくれ」と聞こえる人も多いが、それもまた想像でしかない。


 今回の処断劇は、カグツチのクラスAのトップクラスの戦闘職相手を雑草を刈り取るかのような次元を超えた戦闘能力と凄まじい怒りと報復が冒険者世界を震撼させた事件となった。




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