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第65話:●〇◆■□▼▼


――地下闘技場



 その日は狂気をはらんだような活気を帯びていた。



 きょう開催される試合は一試合だけ。



 ワーニッツvsネホバ。



 世紀の第一戦とばかりに闘技場は満員だった。



【さあやってまいりましした! 本日のメインイベント!! いよいよ選手入場です!!】


 実況の言葉に静まり返る観客。


【まず登場しますのはワーニッツ・コルドラン! 我が暗黒街の英雄です!! 全戦全勝の白銀闘士!! そして現役クラスA冒険者!!】


 その言葉と同時に扉が開き登場、万雷の拍手で迎えられるワーニッツ。


【クラスAはご存知のとおり! 世界ギルド加盟国のほとんどでの頂点冒険者!! その名のとおり、異次元の強さを持ち副頭目にまで成り上がった成功者です!!!!】


 身体を少し伸ばしながら上機嫌そのものという顔で拍手に対して手を振って応えている、普段そんなことは竹刀のだが、それだけでも観客にワーニッツの気合の様なものが伝わってくるが。



「なあ知ってるか?」

「ああ、メーバルとユモナが」

「メーバル、あいついい奴だったのに」

「やることが人間じゃないよな」



 もちろん2人を殺した事は観客全員が知っている。



 そしてその2人を抱えてネホバが姿を消して足取りがつかめなくなったことも知っている。



 だからネホバは逃げて試合が成立しなくなるのではないかという憶測が流れた。



 本来なら騒ぎになりそうなものだったが殺した張本人が「それだけは無いから大丈夫♪」という言葉で鎮静化。



 そして試合開始前にネホバ到着のアナウンスは流れている。



 観客からすれば非難のまなざしはあれど、それでもエンターテイメントの様な「因縁」に目をぎらつかせる観客。



【さて、暗黒街の英雄なら次は闘技場の英雄と称される男の登場です!! 流れ者でありながらこちらも全戦全勝!! 全て一撃で相手を仕留めてきた最強の金級闘士!! ネホバ・キッド!!】



 ワーニッツと同様、扉が開き、大歓声の中、姿を現したところで、、。


【…………え?】


 呆然とする実況役で、観客も歓声が消えてどよめきが起こる。



 何故なら見知らぬ男が登場したからだ。



【だ、だれだ!? お、おい!! 早く追い出】



「カグツチ・ミナトだ!!!」



 観客の1人が大声を上げる。



「え? 誰って?」

「……カ? グツチ?」



 それが徐々に全員に伝播する。



「そうだ」

「しってる!!」

「超有名な冒険者!!」

「で、でも、カグツチって、確か」



 そしてそれは徐々に。



「そうだ! あの失踪中の!?」

「ネホバって!!!」

「偽名だったのか!!」



 旋風の如き伝わり、どよめきは大歓声に変わった。



【カ、カ、カ、カグツチ・ミナト!!??】


【ネホバ・キッドは、カグツチ・ミナトだった!!??】


【ここ、これは驚き!! ネホバキッドの正体!! それは世界中の冒険者の頂点!! 世界で僅か9人しか与えられていない最高位クラスS、カグツチ・ミナト!!】



【つ、つ、つまりこの殲滅戦はクラスAワーニッツ・コルドランVSクラスSカグツチ・ミナトとなった!! これはとんでもないことになったぞ!! 凄い!! 凄すぎる!! 皆様は幸運そのもの!! クラスSの戦いが生で見れて!! 世界最高位冒険者の殺し合いが見られるのです!!】



 全員が立ちあがって驚いていて、そのままその全員が歓声を上げながらのスタンディングオベーションを送る。



【っ、、、!!! $#1!!!】



 実況すらかき消される大歓声。



――世界最高位冒険者の殺し合いが見られる。



 その実況の言葉にワーニッツは、みるみる笑顔になる。


「ああぁ、待っていたよ!! そうだよね!? 殺したいよね!? アイツら2人は良かったよ!! 素晴らしかった!!」


「なあ、カグツチ! 思わないか!? いや!! お前なら思うはずだ!! 同じ異次元の力を持つ同士なら分かる筈だ!! 俺と同じ数えきれない程の人を殺したお前なら分かる筈だ!! 人を殺すときの充実感!! こいつは俺に殺されるために生まれてきた、そんなことを考え!! 得られる万能感!!」


「それでいて死にたくなるほどの寂寥!!」


「お前のドラゴン討伐はずっと疑問に思っていた!! だがどう考えても「素手でドラゴンを倒した」なんてありえない!! だからお前と戦い、確かめたかったんだ!! ん?」


 ワーニッツはカグツチに腰に巻き付けているあるものをに注目する。


「その懐に下げているのは……凄いぞ! エリクシールか!! 万能薬に近いと称される霊薬!! 豪勢だ!! 流石クラスS!! それはそうだろう!! 俺と戦うんだ!! お前は正しい!! いいよ!! 存分に使い回復したまえ!! ルールには抵触しないからな!!」


「しかしエリクシールまで用意するとは!! やはりドラゴン討伐はハッタリだったか!!」


「…………」


 カグツチは俯いたまま、微動だにしない。


 その様子に明らかに苛ついたワーニッツは。


「もう面倒だ!!!! クラスS!! さあ殺し合うぞ!!!!」


 と怒りに任せて勢いよく指を指そうとしたが、、。


 上半身が、つんのめる形でバランスを崩すワーニッツ。


 何が起きたのかわからない。



 手を出そうとしたのに手が出てこない、、、、。



「?」



 変だな、そう思って、ここで初めて違和感を感じて違和感の元を見てみたら。



 右腕がない。



 視線を戻すといつの間にかカグツチは片手に何かを持っていた。



 その見慣れた何かを。



 いつの間にか、ガクツチが「自分の見慣れた右腕を持っていた」のだ。



「…………」



 数瞬、遅れて、、、、。



「!!」



 自分がやられたことを理解する。



「ふざけ!!!」



 と歩き出そうとした瞬間に思いっきり転倒して顔面を打ち付ける。



 なんだ、なんで地面が顔面に、、、。



 そこで再び感じる違和感。



 再び違和感の元を確認する。



 歩き出そうとした踏み出そうとした片足が無かった、だから転んだ。



 再びガクツチを見ると、、、。



 自分の見慣れた片足を持っていた。



「…………」



 逃げようと思って起き上がろうとした時、そのまま上半身がバタバタと動くだけだった。



 違和感、違和感。



 残った腕と足を持ったガクツチは無表情で指の上に乗せてくるくるとまわしている。



 もうワーニッツは、動かない。



 動くと、次は大事な首が無くなるかも。



 喋ると自分の口が無くなるかも。



 だから無言で、静かに呼吸して見つめるだけ。



 カグツチはポイっと捨てると腰を屈める。



「…………」



「…………」



 お互いにじっと見つめ合う。




 ギチギチギチギチ。




 そんな音を立てたかのようにカグツチが凄惨に嗤う。




 ワーニッツはカグツチ凄惨な嗤いにつられて、泣いているのか笑っているのか分からない表情で口を開いていた。





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