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第63話:無言



 ネホバ金級闘士とワーニッツ白銀闘士との殲滅戦。


 チケットは即完売、高額転売状態となっている。


 好事家達からの関心も高く極秘に来国しているVIPもいるほどに。



――「殺し合いってのは、進んでやりたい「趣味」じゃないさ、俺は自分の最強さえ証明できればいい、ワーニッツと戦えるのことを楽しみにしているよ、死ぬこと? 別に死にに行くわけじゃないから特に気にしたことは無いかな」



 色々な奴から色々な事を聞かれて、俺は一貫して、この答えで通している。


 現在メーバルとユモナはどこかへ身を隠した。指示通り俺との連絡は絶っている、スラム街の何処かなんだろうが、俺は知らない方がいい。


 あの舎弟頭は律儀で俺に連絡を取ってくれる、それによると全員退避完了したそうだ。


 んでだ、、。


「…………」


 キーが俺の部屋の中で憮然とした様子で立っていた。


「なんだよ、死地に赴く俺に何かないのか?」


「お前が売った喧嘩だろうが、まあ、周りを巻き込まず上手に売ってくれたことについては助かってはいるがな」


 気まぐれで人を殺すワーニッツの世話はそれはそれは大変そうなのだが、今は大人しくしているし、人を殺せば猛りが収まるらしく、俺との戦いはぶっちゃけ助かるそうな。


「お前のことは嫌いじゃなかったが、まあ死に急ぐ奴には何を言っても無駄だからな」


「なんだよ、俺が負けるなんて思っているのか?」


「ああ、思っているね、だが前にも言ったが俺はワーニッツの奴が気に食わないのさ、だからよ」


 ずいとキーは俺に近づく。


「いいかネホバ? 今から「俺の独り言」を良く聞け、お前は金級でVIPに準ずる特権を持っている、副頭目に次ぐマフィアの幹部だ。んで、お前の手下と女の姿が見えねえってことは、避難させているみたいだな。そして避難することに「てめえは例外ではない」ってことだ。だから逃げても逃げたことが確定しない限り、追いかけられないってことだよ、数日あれば国外にだって行けるだろうよ」


 そんな「脅し」をしてくるキーに。


「優しんだな、マフィアの癖に」


 俺はしれっと答える。


「……ちっ、あばよ、達者でな」


「ああ、じゃあな」


 と見送る。


 マフィアはクズだが、たまにマシなクズがいる、キーはそのタイプだな。


「…………」


 思えば依頼を受けてから長いような短いような変な感じだ。最初はスラム街のホームレスからスタートしたんだったっけ。


 そういえばおっちゃん元気しているかな、流れ者の俺に「丁度前の奴がいなくなったからここを使えって」階段の踊り場を提供してくれて、スラムのルールとか生活を教えてくれたんだよな。


 最初は裏でもあるのかと思ったけど、そんなことなかった。まあ過去の自慢話するのが玉に瑕だけど気のいいおっちゃんって感じだ、一段落したら差し入れぐらいはしないとな。


 んでメーバルとの出会いは、完全に偶然、シナリオに無し、そしてこんな形になるとは思わなかった。言い方は悪いが所詮チンピラ、身勝手な理由で裏切るのかなと思ったけど、そんなことも無くて、何気に暗黒街のマフィア達からも可愛がられていた。


 ユモナはまだ会って日が浅いけど、流石高級娼婦、地頭もよくて何より気が利くのが大きい、舎弟頭からは憧れのお姉さんみたいな感じで見ている、というか前から好意を持っていたんだろうな。


 実は狙っていた男は舎弟頭だけじゃなくて俺の専用にしたら、がっかりした男も多かったとか。


 ん? 俺がどうしてこんなにのんびりしているのかって?



 もう既にワドルフを処断できる段階まで実は進んでいるからだ。



 俺達アマテラスは、依頼の内容によって役割は若干違うが、今回はクォイラ達が完全な裏方、俺が完全な前に出ている。


 関係はフラットではあるけど、一応俺が主体となり指揮を執る体ではあるが、今回はクォイラが後方で指揮を執る形になっている。


 んで俺は全面、つまり暴力担当ってことだけど、計画が本格化するのは試合に勝ってからだ。


 勝利した後、まず2人は正式に正体を明かし、今後の協力を取り付けて、舎弟達を使おうと思っているが、それは追々説明していこう。


「…………」


 静かだなぁ。


 キーが去った後は、俺1人だけだ、当たり前だ、誰もいない。


 広いけど1人なのが寂しいって感じるから随分アイツも馴染んだものだ。


「試合までが最後の休日だからな、さてこれから忙しくなるぞ~」


 と試合の日まであと二日、ノンビリ風呂でも入るか~。




――同時刻・玉座




 情報の整理は終わり、裏方としての仕事は概ね終えた玉座、後は殲滅戦終了を待つだけとなった。


「はぁ、酒と飯も美味い」


 とグラスで酒を傾けながらくつろぐジウノア。


「zzzz」


 その傍らではクォイラが寝ている、連日アル王子達の打ち合わせ情報整理を深夜まで続けており、それがようやく一段落、ロクに寝ていなかったので疲れがたまり休んでいるのだ。


 他の王族たちもまた、それぞれの仕事をしている。


 カグツチの言うとおり、後は、時が来れば計画を実行すればよい、既に最終段階になっている、その前の穏やかな一時だった。




 その中でファルの異変に気付いたのはジウノアだった。




「……ファル?」


 そうファルの様子がおかしい、ゴーグルを付けたまま何やら懸命に操作をしているようだ。


「どうしたんです?」


 同じく異変を感じ取ったのか起きたクォイラが近づくが。


「駄目だ……間に合わない……」



 絶望の色を残してファルは呟いた。




――隠れ家




 スラム街。


 メーバルとユリティモナはスラム街の外れの一室に舎弟を通じて部屋を借りていた。


「~♪」


 キッチンで料理をしているのはユリティモナだ。


 あの後、着の身着のままで最低限の荷物を持ち飛び出し、メーバルに変装させて、スラム街の外れの集合住宅の一室に拠点を構える。


 表向きは「下級娼婦とそのヒモ」を装い、つつましやかに生活している。


「随分上機嫌なんだな」


 とメーバルが話しかけてくる・


「そりゃね、良い方に進んでるってことだよね」


「……いい方向って、姉貴はワーニッツが負けると思っているのか?」


「そりゃそうだよ、あの人は勝つよ」


「随分と信用してるんだな、まだ会って間もないのに」


「あの人はちゃんと計算の出来る男だからね、ワーニッツのことを調べてそれでも勝てると判断したってことでしょ」


 当然に2人とも長いこと暗黒街を拠点に活動している、その中でワーニッツの異次元の強さは何度も目の当たりにしている。



 それでもこの周辺国家で、ワーニッツよりも有名なのはカグツチ・ミナトだ。



「ドラゴン討伐、天敵をタイマンで倒すって、ちょっと想像もできないけどさ」


「それが真実なんだろうね」


「どうしてそう思うんだよ」


「ワーニッツと戦うってのに、あの人は悲壮感なんて何もなかった、勝つとか負けるとかすら考えていないってことだよ」


「…………」


「だからこそちゃんと尽くして私達を使えるって思わせないとね、アンタは結果を出したみたいだし、そうすれば次がある」


「次か、、、」


 メーバルは思い出す。


「思えば、生まれてきて良い事なんて一つも無かったよな、それこそ次なんて考えられなかった、チンピラ頭なんていっても、マフィアの奴隷みたいな立場であることには違いないし」


「それは私もそうさ、媚びたくもない男に媚びて生きてきた、だけど娼婦から足を洗えるし、やりたいこともいっぱいあるからさ」


「ああ、そうだよな、兄貴に感謝しないとな」


「ってほら! 洗濯物取り込んできな!」


 とメーバルを蹴とばす


「アイダ! 蹴る事ないだろ!」


「蹴りやすいところにいるアンタが悪いんだろうが」


「ええーー!!」


 凄い理不尽。


 小さいころからいつもそうだ、まあ、しょうがないけどさ。


「まったく」


 でも、次か、、。


 そうだ兄貴と出会ってからそれが考えられるようになったことが一番変わったことなんだよな。


 兄貴と会話した時、前にキーの事を所詮マフィアなんて言ったけど、俺だってロクデナシだ、マフィアの使いパシリでロクでもない仕事をしてきた。


 でも兄貴が暗黒街を変えてくれるのならひょっとして、俺も、、、。


「~♪」


 自然に鼻歌が出たことに自分で苦笑しつつベランダに出た時。



 横にワーニッツが立っていた。



「……ぇ」



 と声を上げようとした瞬間に、メーバルの首が一回転して顎をかちあげられて、頸椎がつぶれて即死、そのままドサリとへたり落ちた。


 その時にカランカランと落ちる発信ボタン。


 それを拾い上げて「ふーん」と笑って弄ぶワーニッツ。


「~♪」


 と今度はワーニッツが引き継ぐように鼻歌を歌いながら、メーバルの死体をつかむと部屋に放り投げる。


 バンという音を立てて床に叩きつけられ。


「ちょっと! メーバル!! どうしたの!?」


 と驚いたユリティモナが部屋に入っきた。


「ひっ!!」


 メーバルの死体と、その横にたたずむワーニッツが目に入り。


「ぎゃああぁ!!」


 悲鳴を上げると同時に髪の毛を掴み片手て持ち上げる。



「へぇ、やっぱり美人だね~♪ 気が変わったよ、カグツチにくれてやるのはもったいない、だからお前を買いに来たよ♪ 大丈夫、俺の方が副頭目で格上、だから文句は言えない、それが暗黒街のルールなんだ♪ 高級娼婦なんだろ? サービスしてね♪」




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