第62話:準備しないとね
「お疲れ様でした」
と帰宅した俺を出迎えてくれるユモナ。
「ユモナ、メーバルはいるか? それと後舎弟頭も」
「はい、2人ともいます」
「わかった、それとユモナもこのままついてきてくれ、3人に話しておきたいことがある」
その俺の指示のもと、ユモナが2人を呼び、俺を含めた4人揃ったところで俺はメーバルに話しかける。
「メーバル、俺の試合が正式に発表されたことは知っているな?」
「あ、ああ、今から5日後に、ワーニッツとの殲滅戦が組まれた」
ここで俺は3人を見据えて話す。
「結論から言う、今からユモナとメーバルは身を隠せ、着の身着のままの状態でだ。そして舎弟頭は、舎弟達と共にスラム街へ退避、そして全員俺の別命があるまで待機だ」
「逃走生活のやり方は、とにかくお互いの情報を持たないまま全員で別に暮らすことだ、だから今言った。出来れば単独がいいがユモナとメーバルは一応組んでおけ、まあそこは任せる。そして潜伏後は「引きこもれ」よ、お互いの連絡は絶対に交換するなよ、舎弟頭ともだ」
「兄貴にも教えないのか?」
「ああ、情報を持つものが複数人いる時点で漏洩する前提で動かなければならない、安心しろ、お前にはこれを託す」
「……これは?」
「まあ所謂緊急発信ボタンみたいなものだ。何かあればこれを押せ、俺に連絡がいくようになっている」
「わかった」
「それと」
とここでどさっと金を渡す。
「これが逃走資金だ。逃走生活はそんなに長い間にはならないが、この金は慎重に使え、分かったな? 派手な散財はそれだけで目立つからな」
ここで舎弟頭が発言する。
「ネホバさん、俺達は数が結構いるけど」
「分かっている。「だからこそ潜伏」なのさ」
「……なるほど、分かりました」
俺の淡々とした言葉に何となく察していたのか、3人とも頷いてくれたが。
「兄貴は、何をしようってんだ」
メーバルに言葉に俺は。
「戦争を起こすのさ。ここでね」
と笑顔で答えた。
「戦争って、兄貴は」
「それは終わってから話すよ、俺が何者かってのも含めてね」
俺の言葉を受けてじっとメーバルは俺を見つめる。
「なあ、色々とさ、情報を収集してさ、それこそ上流の話も少し入ってくるんだけど」
「…………」
「ひょっとして、兄貴の正体って」
「まあ皆まで言いなさんな、言ったろ、ちゃんと話すよ、さて、名残は尽きないが、そろそろだ」
「わかった、何度も言ったとおり、兄貴に俺はついていくよ」
「グッド、繰り返すぞ、メーバルとユモナは2人で潜伏してもいいが、その間は舎弟頭と言えど一切連絡を取るな、情報の拡散は命取りになると思えよ、さて」
俺は立ちあがる。
「また準備ですか? ここのところ毎日ですね」
とユモナが問いかける。
「ま、色々とね、自分の目で確かめたいこともあるし」
俺は3人を見据える。
「じゃあな、3人とも、今度は戦争に勝利して、ぱーっとやるか!」
と言いながら部屋を後にした。
「「「…………」」」
その後を見つめる3人で舎弟頭が発言する。
「メーバルさん、ネホバさんの正体って」
「多分な、んでさ兄貴の言っていた戦争って、この国を変えるって事なんだろう」
「……良い方に変わるんですかね?」
「いや、兄貴この国を良くするとか考えていないよ」
「え!? でもワドルフの野郎に!!」
「クラスSは正義の味方ではない」
「え?」
「ってのは、その「カグツチ・ミナト」の発言として度々登場している。つまりそういうことなんだろうさ」
あっさりとしたメーバルに絶句する舎弟頭だったが。
「器が計れない男ってことだよ」
と扉をじっと見ながら呟くユモナ。
その目線に含まれる意味を察するメーバル。
だったのだが。
「残念だったな姉貴、兄貴は女いるみたいだぜ、しかも複数」
「…………」
「ほら、アマテラスの3人、兄貴は自分の女じゃないとか誤魔化していたけどさ、調べてみたけど全員滅茶苦茶美人な上に超有能だぜ? 残念だけど姉貴じゃあ逆立ちしても勝てないというか、戦わずに撤退するのも上策」
ドゴォ!!
「」←メーバル
「はっ! あれほどの男なら複数の女が群がるし、当たり前の話だよ、つまらないこと言ってないで早く荷物の準備する!!」
「…………へーい」
――そして、その図れない器を持つ男は、、、。
『昨日もお楽しみでしたね?』
「も、もう、またまたファルさんてば意地悪を! 手なんて出してないっつーの!」
『カグツチ、まさか私たちの事、仲間じゃなくてハーレムと思ってる?』
「そそそんなわけないだろう!! お前達は大事な仲間だ!! 命かけても守るし!! 命を懸けて助けてほしい!!」
『はい、ならいつものやつ』
「全員美人で有能で優しい最高の女たちに囲まれて冒険ができる俺はとっても幸せです!」
『もう一度』
「全員美人で有能で優しい最高の女たちに囲まれて冒険ができる俺はとっても幸せです!」
『もう一度』
「全員美人で有能で(以下略)」
と器が計れない男は計り知れない器の小ささを発揮していたのであった。




