第57話:さあ銀級闘士へ、そしてメーバルの願い
獲物を全て腹に蓄えた昆虫型クラスCの魔物は、少し重たい足取りで会場の装置で誘導されるがままに自らの檻へ進んでいく、折には魔物の巣があったが、、、。
「あー美味かった」
檻の中では、ある男がパンパンと腹を叩きながら満足気に寝っ転がっていた。
彼はワーニッツ。
その傍らには「脚」や「触覚」等が散乱していた。
この昆虫型のクラスCの魔物が獲物を液体状にするのは吸収効率が良いため、そして必要以上に獲物を吸収し腹に貯めたのは。
子供のエサのためだ。
そう「彼女」は子育ての為に獲物を狩ったのだ。
「…………」
無機質な目がワーニッツと脚と触覚を捉えて。
「!!!!!!」
と凄まじい勢いとスピードで両腕を掴み。
そのまま針を差し込む。
しかし、、。
「!?」
ギリギリと入らない、ワーニッツの身体に入らない。
そして掴んだ手が動かない。
繰り返す、昆虫は一度に一つの事しかできない。
だからワーニッツは、緩やかに手首を少し返す形で両足を掴むと。
バキっと音を立てて折って、そのまま返す刀で自分の身体に差し込もうとしている口を折る。
魔物は何が起きているのかわからない、いや理解し始めたと同時に、、。
そのまま手刀で体を両断された。
ピクピクと震えてる魔物の頭部をぐしゃっと踏みつぶすワーニッツ。
「成虫はまずいからお前は要らない、ってな訳で、おい」
「「「ひっ!!」」」
控えていた下っ端マフィア達は震えあがる。
「片しておいて」
と下っ端のマフィアに掃除を命じてそのまま立ち去った。
「……うそだろ、クラスCの魔物だろ?」
「しかも幼虫喰らって、、、」
「うぐっ、吐きそう」
「異次元の強さ」
「ああ、毎回思うよ、あれで」
「この暗黒街の副頭目にまで成り上がったのか」
●
「お疲れ様です、ワーニッツ副頭目」
闘技場を後にしたワーニッツを出迎えるのはキーだ。
彼はワーニッツに呼び出されて現在ここにいる。
「疲れてはいないさ、クラスCごとき精々準備体操程度だったよ」
「流石です、それと、呼び出した用件は?」
「そうそう、お前がスカウトしたんだよな、ネホバってやつ」
「え? は、はい」
突然の問いかけに戸惑うキー。
「アイツ、興行試合の癖に、試合には目もくれず、ずっと俺に喧嘩を売ってた」
「っ!!! まさか!! いくらなんでも!!」
「まあいいよ、俺は弱い者苛めに興味はないけど、普通にムカついた。えーっと明日昇級戦だったっけ? 負けたら殺すって伝えておいて、昇格したらお祝いに生かしておいてあやるともね」
「…………」
言葉が続けられないキー。
そして、、、、。
その三日後に行われた銀級昇格試合で、ワンパンで倒し昇格を決めた
――
「ネホバ、迂闊な発言は二度とするんじゃねぇぞ!」
昇格戦後、祝ってくれるかと思いきや、キーから一喝される。
当然にワーニッツに喧嘩を売ったことに怒っていたのだ。
「なんだよ、俺が負けるとでも思っていたのか?」
「違う!!」
「…………」
「ワーニッツはここの暗黒街のナンバー2だ! アイツに喧嘩を売るなんてことはな、暗黒街を敵にまわすってことだ! あのクラスC魔物を子ども扱いしたって話はしたよな!? 人知を超えた戦闘能力を持つ狂人だ!!」
「狂人なんて言っていいのかい? 副頭目なんだろ?」
「立場に対して敬意を払っているってだけで、あんな狂人はこの組織に害をもたらすとしか思ってねえよ、それにな、てめぇが何か目的があるってのも分かってる」
「…………」
「それに対して詮索はしねえよ、まあ、この暗黒街に害をなそうってのが分かったら処断するが、それを差し引いてもアイツに喧嘩を売るなんてことはな、それを棒に振ると言っている」
「ふーん、優しいんだな、マフィアの癖に」
「て、てめぇ!!」
「悪かった」
「っ」
「そんなに怒るとは思わなかったよ。今後は控える」
「……銀級闘士の生活等についてはメーバルに引き継いである、それとお前は無傷だが、銀級は場合によってはメインイベンターも務めることもあるからな、追って知らせを待て」
「はいよ」
とまだ少し怒った感じで後にした。
「という訳でメーバル、約束は果たしたぜ、ぱーっとやるか?」
とメーバルを見た先、冷たい目で俺を見つめるメーバルがいた。
「…………」
「ど、どうした? も、もちろん奢ってやるぞ! 好きなものを好きなだけ飲み食いしていいぞ!」
「…………」
「そ、そうか、お前は言っていたな、舎弟達が多いと、その舎弟達も招いてぱーっとやるか! もちろん好きなものを好きなだけ、、、」
「…………」
「な、なあ、ひょっとしてさ」
「…………」
「お前も怒ってる?」
「別に、コンビなのに相談なしにワーニッツに勝手に喧嘩を売って、結果今回の昇格試合もし負けたら暗黒街敵にまわす上に、兄貴も殺されることになる事態になって、勝ったとはいえワーニッツの気まぐれのおかげで約束も反故にされず、無事だったことに安堵しているだけだよ」
「怒ってんじゃん!! わかった!! 悪かった!! ちょっと考え無しだったよね!! それは俺が全面的に悪かったよ!!」
ということで平謝りするしかなかったのであった。
●
「「おおー!!」」
メーバルになんとか許してもらい、簡単な荷造りの後、銀級闘士の部屋に案内された後の第一声がこれ。
まず住む建物からして違う、暗黒街中心部から娼館とカジノと闘技場があるが、闘技場の近くにある高い建物にある。
銅級闘士の時はワンルームのパーテーション分けだったけど、3LDKで景色もいいちょっとした高級ホテル様な部屋だ。
「金級闘士になるとワンフロア全部らしいぜ、ちょっとした富豪だよな」
「それは豪儀だな! となると早く金級にあがらないとだな!」
「上がらないとだなって、兄貴の強さは化け物地味してると思うが、それでも金級は化け物ぞろいばかりだぜ、それに」
メーバルは視線を目にやる。
それはマフィアから手渡された資料。
銅級闘士は十把一絡げだが、銀級闘士から全て順位が付けられている。俺は現在銀級20位、昇格したては例外なく最下位からスタートする。
30日は、銀級の生活が保障されているが、30日で順位の更新が行われ、その際に最下位の銀級はマフィアから降格試合を組まされる。
銀級の壁は厚く、昇格してもすぐに降格するのが普通、何回も繰り返してやっと定着を果たす。
メーバルが述べたとおり、銀級は所謂VIPエリア以外全てに入れると言っていい。そしてお供を付けることも可能で、同じ待遇を得られる。
とはいえ荷物なんてないから部屋はぶっちゃけ余るし、広すぎるが、まあこれもステータスなのだろう。
確かに待遇は素晴らしい、早速渡されたファイトマネーは桁が違っていた。
しかも食費もタダ、遊びも出来るし、スラムに行けば一目置かれる。
流れ者がこれだけ稼げるのはそうはない。聞くところによれば、これで貯金をして母国に戻った例もあるそうだ。
まあ大半は浪費して力量が衰えて降格して身を持ち崩すらしいが、、。
そして金級闘士になるためには、銀級で1位になり、同じく金級の最下位と戦う、さて。
「さてメーバル、俺は結果を出したぜ、お前の目的を教えろ」
そう、メーバルが俺に近づいた目的、、、。
「あ、ああ、、、、」
と口ごもる。
「今更何を遠慮しているんだか、言うだけはタダだぜ、どんな内容でも今更だ」
俺の言葉にメーバルは少し考えた後話し始める。
「実は金級闘士になると暗黒街での扱いはVIPと同等になる。ここの中心部、特別居住区での居住権を与えられたりと特権があるんだけど、、、」
「ふむ」
「一番は一つだけ「褒美」が貰えるんだ」
「褒美、、、、」
「その内容は限定されていない「希望を一つ叶える」それだけ、、まあ金級も降格があるから、再昇格の時は無いけど」
「ほほう、つまりそれがお前の目的か?」
「あ、ああ、でも兄貴、俺はその、無理に、金級ってのは化け物だらけで、実際に危ない目に合うのは兄貴だけで」
「だから何を遠慮しているんだよ「何の見返りもいらない」ってのはこの世で一番信用できない言葉だ、だからこそ正直に言え、その望みってやつを」
「…………」
「いいかメーバル、これは「信用」の問題だ。偽ることは俺との関係を終わらせると思って答えろ」
俺の言葉に再び少し考えた後。
「俺の望みは、、、、、」
と望みを述べる、それを聞いた俺は、、、、。
「グッド! わかった、俺が金級に昇格した時の褒美、お前にくれてやる」
「ええ!!?? ほほ、ほんとかよ!! 褒美は確かに無制限って訳じゃないが、中にはマフィアの幹部を希望して! 成り上がった奴とかも!」
「そうと決まれば、今度こそパーッとやるか! 舎弟達もつれてこい!」
「…………」
呆気にとられるメーバルを余所に、俺はグルメマップを広げたのであった。




