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第55話:スラム住民から地下闘技場闘士へ


 暗黒街。


 正式な地区名は別にあるが、通称名がそのまま名前になった建物の集合体。


 違法な増築や改築が進むも、富を生む場所であるから客に対してのインフラ設備は快適と言えるまでに整っている歪な場所。


 この暗黒街の三大娯楽、まずは娼館。


 性を売買する娼館が規制されるのは何処の国も一緒ではあるが、コヴィスト王国では規制も緩く、幅広いニーズにこたえており、世界中から客が来ている。


 次にカジノ。


 賭博行為についての規制が厳しいのも何処も一緒、娼館と同様にコヴィスト王国では一大収入源。


 次に来るのが。


「それがここの闘技場だ」


 長方形の闘技場を中心に観客席が取り囲む形、透明な壁に覆われており、床は未舗装の土床、戦うスペースは意外と広いという印象だった。


 キーの説明によると。


 闘士は銅級から白銀級の4段階ある。


 闘士の内訳は8割が銅級で1.7割が銀級、0.2割が金級、白銀闘士は1人しかいない。


 戦いの種類も色々分かれている。


 通常戦。


 主に徒手戦、武器使用戦と別れている、ルールは何でもありだが、失神及び降参及び死亡並びに審判の続行不能の判断で試合が終わる。


 殲滅戦。


 ルールはただ一つ、負けは死。勝者は必ず敗者を殺す事、審判は死亡判定のみ行う。


 魔物戦。


 人対魔物、殲滅戦と同様、審判は死亡判定のみおこなう。


 特殊戦


 上記に当てはまらない戦闘、賭け試合というよりも興行色が強い。


「大部分が通常戦で武器無しだ、ただし報酬も一番低いがな」


「同級同士で戦うのか?」


「本人同士の合意があれば銅級と白銀級で戦う事も可能だが、まあ旨味がないから実現しない」


「対戦相手を指名することは?」


「今言った「旨味」があれば実現するが、正直金級闘士の話だよ、だから銅級は俺達があてがったカードで対戦してもらう」


「そっちの都合で武器有が組まれるのか?」


「それは無い。武器有は武器有の要望を出している闘士同士で戦う」


「ふむ、、、、」


 なるほど、、まあ言えない事情もある感じか、、、。


「俺のデビュー戦はいつになる?」


「試合日程はお前にあてがう部屋のポストに投函される。ただデビュー戦はすでに組まれている。明日の第一試合目だ、デビュー戦は案内役も兼ねて俺が付き添うからな」


「相手は?」


「まだ2戦ほどこなした闘士で1勝1敗、得意は打撃とのことだ、細かい資料は後で送る。とりあえず今日は用意した部屋でコンディションを整えてくれ、食堂も闘士専用食堂でいくらでも食える、それとメーバルの分も出してもらえるように連絡しておいたからな」


「分かった、ありがとな」


「礼には及ばない、お前が名をあげれば俺の懐も潤うからな」


 と言って部屋に案内してもらいキーは後にした。







 キーに案内された部屋はワンルームで、気を聴かせてくれたのか八畳ぐらいの部屋にパーテーションが区切られていた。


「ここから俺達の物語が始まるんだな!」


 というメーバルであったが、、、。




「単刀直入に言う、俺に近づいたってことは何か目的があるんだろう?」



「っ!」


「別に構わないさ、むしろ無い方が駄目だな、それが一番信用できない」


「兄貴、、、俺は」


「そしてそれを今は聞かない、聞いても聞かなくても意味がないからな」


「……兄貴は何が言いたいんだい?」



「俺は最速で銀級闘士になる」



「え?」


「お前にとっての「俺の利用価値」をまず提供してやる。そしたら今度はお前の利用価値を俺に提供してもらうって話だよ」


 一瞬、メーバルは呆けたと思ったら。


 満面の笑みになった。


「あ、ああ! 分かった!! ここでこの啖呵を切れるなんて流石兄貴!! ついていくぜ!!」


「……いや、だから付いていくかを今からお前が決めるんだよ」


 まったくもう、大丈夫かな。



――翌日・闘士控室



 格闘技の控室の雰囲気は独特だ。


 格闘技なんてのは表であろうと裏であろうと「相手と殺し合う」訳だから、殺気立つというよりも、こう、何と表現したらいいか、全てに敏感というか、そういった雰囲気に包まれている。


 そんな俺はキーに案内された後、軽くストレッチをしている。


「ネホバ・キッド、試合だ、出ろ」


 進行役のマフィアが俺を呼ぶ。


「お前はデビュー戦だったな、まあ闘技場までは一本道だし、ルールは単純、覚えることは多くないがな」


 と話しながらついていくと、薄暗い10畳ぐらいの部屋に出て、中央には2メートル四方で色が違う床があった。


「この舞台装置がせりあがる様式だ、乗れ」


 ふむ、つまりここが奈落ってことか。


 俺が載るのを確認すると、案内役はそのまま手を上げて外の職員に合図を送ると、天井の一部が開ける。


「じゃあな、健闘を祈る」


 という声の下、舞台がせりあがり、そのまま闘技場へと登場する形となった。


 少しの浮遊感の後俺は闘技場に登場する。


 ふむ、こんな感じに見えるのか、辺りを見渡すと観客の姿がこちらからも一望できるのか。


【さあ、今日の第一試合! 西方から登場するはネホバ・キッド! デビュー戦です!】


 実況も付くのか、俺は片腕を上げるとパラパラと拍手がある。


 まだ第一試合、前座も前座、観客もまばらだ。


【オッズは、ネホバが6.9倍、対戦相手が2.3倍となっています!】


 観客を見ると、何やら資料か何かを見ながら、あーでもないこーでもないと言っている。


 なるほど理解した、これは競馬で例えると新馬戦みたいなものか。


「両者中央へ!」


 審判へ促されるままに中央に行く。


 相手は20代ぐらいの男だ、俺を睨みつけている、確か戦績は1勝1敗で打撃が得意だったか。


(自分で言ってもなんだが新馬戦か、だったらちょっと遊んでみるか)


 俺は左手をポケットに突っ込んで右手を軽く上げる。



「右ストレートでぶっとばす、まっすぐいってぶっ飛ばす」



 俺の発言に周りは呆気にとられたが、、、。


【ちょ、ちょうはつだ!! なんて度胸!! デビュー戦でありながらネホバが挑発をしている!!】


 うんうん、折角なら、やってみたかったことをやろうかなと。


 そんな挑発に相手は見る見るうちに顔が紅潮し殺気立つ。


「はじめ!!」


 という合図の瞬間、審判を押しのけて鬼の形相で殴りかかってくるが、、、。



 ステップバックで距離を取り、次の瞬間に顎を打ち抜いた。



「~~」


 そのまま白目をむいてズウウンと倒れた。


 一気にしんと静まり返る。


「審判」


 俺の声で覚醒すると。


「ネ、ネ、ネホバ・キッドの勝ち!!」


 と判定をして俺の手を上げる、まだ客が少ないながらに小さな歓声が上がる。



「おお、アイツ!」

「やるんじゃないか!」

「いや、相手が油断したんじゃ」

「それにそんなに強い奴じゃないだろう」



 と色々言っている。


 まあ、インパクトは残したかと、闘技場からの退場口から歩いて後にした。





「流石兄貴!」


 とメーバルが出迎えてくれる。


「言っただろ? 最速で銀級に上がるってな、それにしても出迎えてくれるとは思わなかったぜ、キー」


 メーバルの横にはキーがいた。


「スカウトしたのは俺だからな、お前が名を上げて出世すれば俺のフトコロにも入るんでね、それにしてもハッタリじゃなかったみたいだな、お疲れさん、ファイトマネーは勝利給含めて、窓口で受け取ってくれ」


「分かった、キー、見てのとおりダメージなんてない、すぐに次の試合を手配してくれ」


「わかったよ、せいぜい稼いでくれよ」


 さて、メーバルにも言ったとおり、まずは銀級闘士にならないとな。




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