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第54話:スラムで成り上がりたければ、、、



「これが、新手の詐欺だったらたいしたものだよな~」


 まああれが全部嘘だったらそれはそれで詐欺の才能があるのか、とはいえ俺には詐欺の才能は無いけど。まあいいか、あれが全部嘘でも飯代ぐらいは騙されてやるし、仕事をする上で裏切れば処分すればよい。


 今の俺はあの後、ダブルヘッダーで仕事をこなし報酬を得て、メーバルと別れて自分の寝床に向かっている。


 その寝床、入国してからの俺の拠点である4階建てのアパートに到着する。


 俺は階段を上り、2階と3階の間の踊り場に上ったところで、、、。



 床に寝転がった。傍らには簡単な布一枚だけ。広さにして1畳半ぐらいか。



 ここが俺のコヴィスト王国の拠点だ。



ホームレス。


 裕福と言われている日本でも見られる「根無し草」達の総称、一番わかりやすい貧困層。


 スラム住民でイメージされる代表例の一つだろう。


 ただ、人間面白いなと思うのが、こういうホームレスでも階級ってのがある。


 まず最下層は、外の路上で寝ている奴ら、稼ぎを全くせず日々の糧は慈善活動頼み、だから夜露もしのげない路上で寝ろというわけだ。


 次に俺の階級である、集合住宅の廊下やら踊り場で寝転がる奴ら、飯ぐらいは稼ぐレベル、ここで面白いのが階数が高い方が偉いという点、俺は2階だから中の下ってところ。最上階の奴らは、それなりに金を持っている。


 そして次は部屋を複数で借りている奴、つまり住むところに金を使える奴だ。


 さて、ここで最上位階級は個室を持っている人物、様々な人物がいるが、、、。


「ほら、ネホバ、女王様のご帰還だぜ」


 隣にいるおっちゃんの指し示す先、それは若い、、、のか分からないが、1人の身なりの綺麗な女性。


 そこから香る安いジンの匂いに濃い化粧。


 彼女は娼婦だ。


「おーい、偶には俺の相手をしてくれよ~」


「ひっこめ貧乏人」


 と一瞥もしないで、部屋の中に消えていった。


「ちっ、見下しやがって、ここにいるって事はうだつの上がらない売女ってことだろうが、なあネホバ」


「そうかもな、まあ、どの道、金がない俺達には関係のない話だよ」


「ちげねぇえな」


 とお互いに笑いあう。


 こんな感じで、過ごしているだけで色々と噂が入ってくる。


 ちなみにこのおっちゃんは、母国では妻も娘もいたらしい金持ちだったが事業に失敗して流れに流れて今ここにいるそうな、まあ本当かどうか知らんけど。


 まあ、確かにお互いに全く干渉しないのは楽ではある。


 俺はおっちゃんとの話を打ち切ると立ちあがり廊下に出ると景色を見る。



 俺の視線の先に、小高い山のようになっている建物の集合体がある。



 どんな場所でも頂点ってのがある、あそこがこのスラム街の頂点、通称暗黒街。



 あの暗黒街にはここら辺一帯の全ての富と権力と暴力が集まる。



 俺は視線を切ると元の場所に戻り、拾ってきた本を読んで寝た。



――暗黒街



 仲介屋キー。


 彼の活動の場所はスラム街、仕事内容はマフィアの必要な仕事をスラムがの住民に斡旋すること。


 一仕事終えた彼はスラム街を歩き、暗黒街の入り口に差し掛かる。


「「…………」」


 そこには、強面の門番が2人、その2人はキーの姿を見ると。


 スッと頭を下げて道を譲る。


 キーは手を上げて応じて中に入り、暗黒街の中を歩く、その途中ですれ違うほとんどのマフィアが道を譲る。


 そして幹部以外立ち入りが禁止されている場所も入りさらに奥へ歩を進める。


 彼は暗黒街を仕切るマフィアの上級幹部の1人でもある。


 だがこの事はスラム街では他言無用、彼はフラットな目線で見たいためワザと格好を見すぼらしくて使いパシリとして振舞っている。


 その彼は、暗黒街の最深部にある部屋に行き、中にいた2人の男に対して挨拶をすると、仕事の内容の報告を始める。


 報告の相手は、副頭目の2人、暗黒街のマフィアのナンバー2だ。


 副頭目の2人は仕事の報告を聞くと。


「特に問題は無い、それと、、、」


 というと苦い顔をする。


「また「欠員」が出た、地下闘技場への新しい選手をスカウトしろとさ。ったく、心当たりはあるか?」


「……1人いますね」


「ほう? 誰だ?」


「ネホバ・キッド、今日報告したイカサマ客を確保した奴なんですが、洞察も鋭く身のこなしが普通じゃない、いいところまでいくかと」


「スカウトにあたって何か問題はあるか?」


「…………」


「なんだ?」


「いえ、身元不明というのが引っ掛かりますが」


「? 何を言っているんだ? そんな奴だらけだし、そっちの方が助かるだろう」


「……まあ、そのとおりですが、おそらく金を積めば成功するかと」


「よし、交渉事は任せる」


「はっ!」



――3日後



「という訳だネホバ、地下闘技場の闘士の枠が空いた、お前は腕が立つだからスカウトしたい」


 昼ぐらいに起きてぶらぶらと歩いていたら、突然「飯を奢ってやる」というキーの案内の元、メーバルを誘い来た飯屋でそんな話を持ち掛けられた。


「やったじゃないか! 兄貴! ついにチャンスが来た!!」


 と食い気味に答えたのはメーバルだった。


「落ち着け、まだ条件を聞いちゃいないだろう、キー、俺はそもそも地下闘技場の事は噂程度しか知らない、その中で闘士ってのは具体的にはどういう待遇なんだ?」


 俺の質問を受けてキーは話し始める。


 地下闘技場。


 暗黒街の一大興業の一つ。


 興行内容は闘士たちによる賭け試合と企画試合の二つで成り立っている。


 試合の形式は様々あり、徒手格闘から武器使用ありまで、果ては命の取り合いの試合がある。


 企画試合を含めて観客を楽しませるために様々な趣向を凝らしている。


「当然に命の保証はない。とはいえ通常は地上の格闘技と変わらんよ。殺し合い試合はあるが、あくまで「合意」の上で行われる」


「合意ね」


 ま、話半分、言葉の意味半分てところだろうが、まあ試合ごとに1人死んでは興行自体が成り立たなくなるだろうからな。


「まずは銅級闘士として登録されて前座から始まる。さっき命の保証はないと言ったが、別にギブアップや気絶等の戦闘不能続行で審判がコールをすれば試合は終わる、ただ、、」


 キーが顎で指示した先、そこには片足を失って路上で座り込んでいる男がいた。


「アイツは元銅級だ、武器有の試合で相手に足を切られて、そのまま引退、まあ治療費はこっち持ちだが、最終的にああなる可能性は十分にある」


「なるほど、その危険度に応じて報酬が変わるわけか」


「そのとおりだ、やはり武器有は人気あるし、一番人気は「生死を問わず」の試合だ、そして人気に応じて報酬も高くなる」


「銅級闘士の待遇は?」


「ここら辺じゃ最上級さ、まず暗黒街へ出入りが許されるようになる、そして一番外側だが、お前が寝床にしているアパートの個室レベルを与えられて、更に三食がつく」


 なるほど、つまりあの娼婦より少し上ってことか。


「理解した、銅級ってのは完全な投資なんだな」


「ご明察、要は金になるかならないか。金にならないならずっと銅級、別にならなくても首にはしないよ、前座要員は必要だからな、辞めるのも自由だ、どうだ?」


「キー、条件って訳じゃないが、メーバルをお供って事にはできないのか?」


「兄貴、、、、」


「別に構わねえが、面倒はお前が見るんだぞ」


「わかった、銅級闘士として是非参加させてもらいたい」


「話が早くて助かる、今日にでも早速と行きたいが、どうだ?」


「簡単な挨拶だけ済ませたいから、それ以降なら俺は構わない、メーバルは?」


「俺も舎弟達に言っておかないとな」


「わかった、それが終わったら来てくれ、門番に俺の名前を出せば取り次いでくれる」



――



 そんなこんなでキーとの商談を終えた俺は、いつもの寝床に向かった。


「よう、ネホバ、なんかいいことあっただろ?」


 隣のおっちゃんが話しかけてくる。


「いいことかは分からないけど、地下闘技場の闘士に抜擢されたよ」


「へぇ、いつからだ?」


「早速今日から行ってくる、短い間世話になったね、ほれ」


 俺は自分の寝床にある布と缶詰をおっちゃんに渡す。


「お? いいのか?」


「まあね、餞別って奴さ、思えば俺がここに流れてからずっと面倒見てくれたからな、寝床確保してくれたり、キーを紹介してくれたり」


「俺は口きいただけだよ、律儀なのはいいことだと思うが、地下闘技場の闘士は使い捨てだぜ? 元闘士って奴はここら辺にゴロゴロいる、当然に使い物ならない状態でな」


「まあやれるだけやってみるさ」


「……ネホバ」


「なに?」



「お前さん、なんかデカい事しようとしているだろ?」



「……そう思うかい? デカい事しようとするやつがこんなところにはいないと思うが」


「割とお前は分かりやすいぜ、だからメーバルに気に入られる」


「知ってるの?」


「知ってるという程ではないが、ここら辺のチンピラ達からは慕われていてな、まだガキで未熟だが、見込みはあると思うぜ」


「へー」


「な、言っただろ? 落ちぶれたとはいえ、俺は祖国ではちょっとしたものなんだぜ、美人な嫁さんと娘がいたんだよ」


「へいへい、じゃあねおっちゃん」


「おっと、最後に中年親父が大好きな説教を一つだけ聞いてくれるか?」


「謹んで拝聴しましょう」


「デカいことをしようとしているのはいいが、メーバルのガキの未熟さを織り込み済みで付き合えよ」


「はいよ」


「それとあと一つ」


「一つだけじゃなかったっけ?」


「揚げ足取るねい、一つは風邪ひくなよ、もう一つは戻ってくるなよ」


「ぷはは、二つあるじゃん、ありがとね、戻ってこないようにするよ」


 とお互いに手を振って別れたのだった。




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