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第50話:アマテラス、推参



――コヴィスト王国・宮殿前


 巨大馬車が宮殿前に止まり、出迎えたコヴィスト王国の幹部連はお辞儀をする。


 その馬車には、ルザアット公国の国の紋章、そしてアルスフェルド子爵家の紋章が刻印されている。


 扉が開き、そこから大勢の使用人と共に囲まれて現れた人物、彼女はクォイラ・アルスフェルド。


 彼女の登場を待ち、ヴァルフが一歩前に出る。


「お初にお目にかかります、クォイラ嬢、私は王国宰相ヴァルフと申します」


 クォイラはヴァルフの挨拶を受けて貴族流の優雅にお辞儀で返事をする。


「初めましてヴァルフ宰相、クォイラ・アルスフェルドと申します」


「御高名はかねがね、いやはや噂に違わずお美しい、このヴァルフ、年甲斐も無くときめいてしまいますな」


「あらあら、お上手ですね」


「アル王子がお待ちです、是非玉座へ」


 とヴァルフのエスコートで城の中に消えていく。



――同時刻・コヴィスト王国・王立研究所



 王立研究所、コヴィスト王国の研究機関。


 その研究所所長に出迎えられているティンパファルラがいた。


「ようこそ、ティンパファルラ殿、まさか賢人会の方が我が国に来ていただけるとは」


「所長さんどうも~、いやぁそんな大したことは無いよ、ただ「遊学」さ」


「ご謙遜を。我が王国の学者や学生が是非講演を聞きたいと言っていまして、ティンパファルラ殿の講義は分かりやすいと評判ですが、不躾で申し訳ありませんが、是非講演を」


「いいよ~♪ そんな大した話は出来ないけどね~♪」



――同時刻・コヴィスト王国・フェノー教本山



「ジウノア大主教、ようこそいらっしゃいました」


 コヴィスト王国のフェノー教の最高位である主教が訪れたジウノアを出迎える。


「はろはろ♪ 主教殿、ごめんね、突然の訪問で」


「いえいえ、王国の有力諸侯の方々が是非癒しを受けたいと、無論礼はいたしますよ」


「おお、諸侯達よ死んでしまうとは情けない」


「い、いえ、死んでいませんが」



――その夜・宮殿



 クォイラ達は王国に到着後、それぞれの分野におけるそれぞれの有力者から接待を受けて、それぞれの最後の仕上げとして玉座に王子に招かれ、3人が集合した。


「私はこれにて、どうかごゆっくり」


 とヴァルフはそのまま、その場を去る。


 玉座はあくまでも王族若しくは許された者しか入れない。


 今の言葉のとおりヴァルフは許可されていない、だがそれを気にした様子はない。


「「「…………」」」


 3人は、促されるままに玉座へと入る。


 思ったよりも広い、それもそのはず、玉座は執務場所であることを含めて、王族の居住空間も兼ねており生活基盤も集約されているからだ。


「初めましてクォイラ嬢、ジウノア大主教、ティンパファルラ殿、コヴィスト王国第一王子のアルと申します、妹のルデエルはご存知ですね、リシア」


 とアルに促されリシアが前に出る。


「はい、はじめましてリシアと申します、アマテラスの方々の高名はかねがね」


 と態度はしっかりしていても、年相応にたどたどしい言い方に微笑む3人だが、アル王子は沈痛な面持ちになる。


「我が王族は、現在ここにる3人しかおりません。かつては王族も何十人もおり、栄華を誇っていたのですが、前国王の悪政ですっかり衰退、ヴァルフのあの余裕な態度が忌ま忌ましい」


 とここでゴホンと咳ばらいをして、中央部に全員が座る。


「そんなことは言っても栓なきことですね、ここの玉座はご存知かと思いますが王族及び許可を与えた人間以外は立ち入ることを許されていないいわば聖域です。ここでは全て内密で事を進めることができます」


 その言葉を受けてクォイラは発言する。


「それは都合がよい、さて」


 とここで言葉を切り。


「ここに来るまでにファルとジウノアから報告を受けましたが、我々の指示は守っていたようで何よりですね、まず第一段階は合格でいいでしょう」


「っ」


 いきなり不遜な態度のクォイラに王子の表情が強張る。


「まあ、ここで不合格なら話になりませんが、アル王子、さて、早速次の段階へいきましょう、今回の件で我々の要求について述べます」



・知恵の樹の中でコヴィスト王国の深淵へ立ち入ることができるマスターキーをティンパファルラへ無条件提供


・ティンパファルラが得た情報は無制限での共有許可(アマテラスは自由に使える意味)


・我々アマテラスが王国全領土の全ての立ち入りの玉座を含む無制限許可



 淡々と述べるクォイラであったが、その要求にアルの顔が歪む。



 そう、これは、日本で例えると。



 皇居の最深部まで外国人が土足で闊歩し、あまつさえ司法立法行政にかかる重要国家機密を思うがままにされる状況。



 事実上の占領を受け入れるという話だ。



「兄さま」


 とリシアの言葉で我に返るアル。


「国辱であることは承知、お気持ちは痛いほどわかります。クォイラ嬢」


「なんでしょう?」


「要求は理解しました。ただ一つ確認を」


「伺います」


「冒険者の受けるクエストの定義について、クラスSは例外になるのかどうか」


 リシアの質問に微笑むクォイラ。


「変わりありません、補足するのならクエスト項目だけではなく冒険者におけるすべての定義についてクラスSの例外規定はありませんよ」


「なればクォイラ嬢、見習いのクラスFとクラスSの違いとは?」


「クエストの規模と難易度の指標にすぎません」


 今度はリシアが微笑む。


「分かりました、兄様、信用に値するかと」


「え?」


「つまりこれはクラスFが請け負う入門クエストの延長上だからです」


「は?」


「クォイラ嬢が今まさに、そう言ったではないですか」


「そ、そうだが」


「兄さま、今回は「クラスSクエスト」なのです、そしてクエストにおいての例外規定はない。そしてその過程において世界ギルドはことのほか「裏切り」に厳しい、これは逆の意味でも言えるのです」


「逆?」


「我々が裏切らないのなら、クラスSは裏切れない」


「…………」


「とはいえクォイラ嬢はクラスの違いを規模と難易度に過ぎないと言いましたが、それでも国家に影響を及ぼせるクラスSが裏切れば、世界ギルドはどうなってしまうのでしょうね」


「…………」


 アルは視線をクォイラ達に移して、、。


「っ!」


 ぎょっとする。


 それはクォイラを含めた3人が、微笑んでいたから。


 その微笑みの意味が、やっとアルも遅れてルデエルも理解したから。


「……承知しましたクォイラ嬢、条件を全て飲みます」


「ありがたく存じます、まず我々は玉座を拠点に動きます。まずは使用人に頼み深淵に潜るための設備を整えます」


「それが終わればアル王子は私と共に上流で活動します。ジウノアはフェノー教大主教としてフェノー教本山、ティンパファルラは主にここに詰めて活動。尚貴方方に与える情報もまた我々が選定しますのでご承知おきください。後当たり前の話ではありますが、我々の活動は口外無用、厳に慎んでください」


 ここでクォイラで会話が終わる。


 以上だ、選定して適宜与えるからそれ以外の提供は何もない。



 歴史と伝統のある王国の全てを初見の全てに晒す。



 踏みにじられる、、、、。



 自国の屈辱。



 何もするな、何も聞くな。



「…………」



 それはわかる、いや分かった。




 だが、アマテラスというのならば、肝心な人物が足りないのではないか。




 その人物は、今、、、、、、。




「カグツチはすでに動いていますよ」




「っ!!」


 見透かしたクォイラは足を組み替えて発言を続ける。



「さて、まずは親交を深める為に、まずは」




「乾杯といきましょう、とっておきの葡萄酒を用意しましたよ」





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