第47話:クラスS冒険者ってのは、、、
コヴィスト王国。
文字通りの王制を採用しており、ログ連合地帯に所在している。
ログ連合地帯とは通称で様々な小国が密集している一帯を指す。
その一帯の中でコヴィスト王国はその中で最古の歴史を持っており代表格の一国、発言力が強く、国力が強く安定している。
何故か、それは豊富な魔石採掘権を持っているからだ。
魔石。
魔法は才能であるため誰でも使えるものではないが、魔法科学技術の発達によりある程度の魔法なら万人に使えるようになった最大の功績がこの魔石だ。
特に通信魔法の魔石化技術の成功は、冒険者社会にも革命をもたらした。己の状況をほぼタイムラグ無しで伝達することが出来た結果、安全が格段に向上したのだ。
しかしこの魔石の採掘場所は限られており、コヴィスト王国はその一部を独占している。
まあ簡単に言うと石油長者の国だと思ってもらえると分かりやすい。
故にコヴィスト王国は、この魔石採掘で富を得て国力を蓄えて安定している。
ただ国を維持できる水準なのはあくまでもコヴィスト王国他数か国、ログ連合地帯のコヴィスト王国周辺は、政情不安定で国が立ちあがっては倒産している。だから国によっては自国に戻れないような犯罪者たちの巣窟にもなっている。
当然に周辺国からその発掘権を狙われ、何度も戦争を仕掛けられてきたが、その度に勝利して守ってきた。
「ただそんなコヴィスト王国も公国からすると重要度のランク付けはBといったところだね、それと、、、「現在は治安情勢が壊滅的に悪化」して公国外務省からの情報では渡航は推奨されていない」
そんなファルの言葉に自嘲気味に首を振るルデエル。
「だからこそ、社交では公爵閣下からお招きいただくのはかないませんでしたが」
外交の友好関係とはあくまでビジネスだ、自分に得があるから付き合う、損があるなら付き合わない、当たり前の話だ。
ルザアット公国は、世界屈指の強国の一つだ。付き合いを持ちたい国は沢山いるし、選別されるのは当然。
だから社交界にも格が存在する。
ルデエルが参加したのは伯爵主催の社交界、伯爵は上位貴族であるから「一応国賓として扱っている」という体が立つ。
だが公爵閣下が合うに値しない国、ということだ。
「…………」
ここでルデエルが発言する。
「そんな私にまさかクォイラ嬢がお声かけいただけるとは思いませんでした」
そうクォイラが進めていたのはコヴィスト王国の窮状を知り、ルデエル王女の接触だった。極秘に会い今の段取りを整えたのだ。
「クォイラ嬢、アルスフェルド子爵家にあっては、お礼のしようがありません、この借りは必ず」
「子爵家ではなく私個人でやったことですので「借り」というのなら私に」
「はい、コヴィスト王国王女として感謝を」
そしてルデエルはじっと俺を見る。
「なんだい?」
固唾を飲む様子の王女。
「本当に貴方がガクツチ・ミナトなんですね、正直、顔と名前を変えてクラスDでやりなおしているなんて、半信半疑だったんですが」
「俺とはどこかで会ったかい?」
「遠目で一度だけ、キコ王国での祝勝会の社交で」
「ああ、ドラゴン討伐した時の話か」
俺はクォイラに視線を送る。
「ルデエル王女、窮状について伺っていますが、ガクツチに対して改めて説明を」
彼女は苦しそうに「はい」とだけ言うと説明を始める。
コヴィスト王国の前国王。
彼は暗君であり暴君であった。
魔石の採掘権からもたらしてくれる富を独占し、国民に還元することが無かった。
結果、国力が低下して、治安が悪化し、王と一部の有力諸侯のみが富める国となってしまった。
その前国王が先日崩御し、王位継承権を持つのは、国王の息子であるルデエル王女、後ここにはいないが妹のリシナ王女と次期国王のである兄のアル皇太子のみ。
アル皇太子が国王に就任し、国が再生に向けて進むかと思われたが、当時国王以外で富を独占していた有力諸侯達のトップ、ヴァルフ宰相がそれを阻んでいる。
ヴァルフ宰相。
王国である以上、王族が頂点であるが現在王族は、前国王の子供、ルデエル王女を含めて3人しかない。
何故なら前国王が自分の王位継承の時に軒並み処刑、若しくは国外追放をしたからだそうだ。
そこに付け込み富を蓄え、有力諸侯達を従えた結果、無視できない存在、いや今や王族のしのぐ勢力となっており、つまり民間でのナンバー1である。
ここで厄介なのはヴァルフは「王族支持派」であるという点。
王族は敬愛に値する存在であるから、王位継承の儀を国家の至上命題であるというスタンスを崩しておらず、創作物でありがちな自分が王位になるという事は欠片も考えていないという事。
そう、アル皇太子を王に就任させ、これからもヴァルフは宰相として美味しい蜜を吸い続け、前国王の愚行のツケは王族に支払わせる状況を作り上げようとしてそれが現実になろうとしている。
つまり傀儡国家が出来上がろうとしているのだ。
現在、国民はどんどん貧しくなっている状況。
王族も施策を打っているのですが、ヴァルフに邪魔をされていまい、いきわたらない状況。国力が衰退すれば、他国の侵略を受ける恐れがある、早急に手を打たなければならない。
「ですが私たちはヴァルフに対抗できる「力」を持っていません」
よってルデエルは国外の勢力へ助力を求めることを決意するが、助力を求めた結果、傀儡となる相手が違っただけでは意味がない。
よってその活路を冒険者に求めた。
そして彼女は決意する。
国家に影響を及ぼす力を持ちながら、国家に影響力を持たない異端の失踪中のクラスS冒険者が存在していることを。
そして接触を受けたクォイラは、依頼について検討するとだけ回答し、更にこう付け加えている。
――カグツチは、ゼカナ都市にいます、折角なら探したらどうですか?
ここまで話して一息つく。ルデエル王女。
「…………」
俺はクォイラを見るがしれっとした顔をしている。
(まったく、また意地悪な真似を、、)
「これをテストだと受け止めました」
ルデエルは続ける。
ガクツチが失踪以降、不自然なまでに情報が出てこない。
ただその一方で仲間であるクォイラとは連絡を取り合っているのは公然の秘密状態。
となれば、失踪というよりも身分を変えてどこかで潜伏している可能性が高いと判断。
そしてクォイラの言からゼカナ都市に絞り失踪時期と冒険者登録をした時期を照らし合わせた結果1名該当。
それが、ジョー・ギリアンだった。
実際に会おうとしたところチンピラに絡まれ、あと少しで警護役が出るところでガクツチが登場、一見してボコボコされているように見えるが、あれだけ殴る蹴るされてもまるで堪えていない様子を見て警護役が「ただ者ではない」と判断。
現場で張り込みをしていたところ、引っかかったという訳だった。
ここでふうと一息つく王女。
「…………」
俺は目を閉じている。
「あの、ガクツチ」
と続けようとした王女をクォイラが手で制する。
「こういう時のガクツチは色々と考えを巡らせています。放っておいていいですよ」
「…………」
そう、色々考えている、色々と。
「ルデエル王女」
「は、はい!」
「アンタはクラスSに依頼するってことが、どういうことか分かっているか?」
「……え?」
冒険者の定義は、世界ギルドから斡旋されたクエストをクリアして報酬を得る者たちの総称、これはクラスSといえど例外は無い。
だが「原則」クラスSは世界ギルドからの斡旋でしか仕事をしない。
理由は簡単だ、ルデエルが述べたとおりクラスSが次元を超えし者と称されるのは、国を動かすレベルの影響を持つからだ。
「つまり、今回動くってのは世界ギルドに話を通さないとならないんだが、クォイラ、世界ギルドについては?」
「信用できる職員に既に話は通しています、まだ公にはしていませんが」
「つまり現段階においては動くことはできる。だが今ならまだ引き返す事も出来るってことだ」
「…………」
徐々に顔が強張ってくるルデエル王女。
「も、もちろんクラスSに依頼することは理解しています」
「へえ、じゃあ報酬を聞こうか」
「カグツチ・ミナト、わが国には貴重な財宝がたくさんあります、よって」
「論外」
「っ!」
「やっぱり分かっていないじゃないか「クラスSの冒険者」に金なんて無意味なんだよ」
「…………」
「ちなみに俺はクラスSじゃあ「貧乏人」の方だけどな、同じクラスSならセシルの方が俺の数倍の資産を持っているよ、そして報酬も人それぞれだ。骨董マニアのクラスSなんかは、壺一つで国を引っ掻き回した奴もいる」
「いいか? 俺が論外と言ったのは財宝を報酬としたことが論外なんじゃない、俺が何を望むのかを全く分からないことが論外なんだよ。王国の窮状と言いながら何も考えていないん」
「っ!」
今度は屈辱と怒りが表情に出る。
「王女、よく聞くんだ、この場合、必要なのは「覚悟」だよ」
「か、覚悟はもちろん、決めています!」
「ふーん、いいかい? よく言葉を選ぶんだ、クラスSに依頼するってのは「裏切る」ことはそのクラスSを敵に回すってことなんだよ、往々にしてそれを理解していない奴がいる」
裏切り。
前に説明したならず者の冒険者が客を嵌めた件に触れたと思うが、その逆、冒険者を嵌めた場合も当然に想定される。
つまり客側に不備があった場合だが、この場合制裁を受ける。
もちろん状況に応じてだが、制裁については世界ギルド直轄の制裁クランも存在し派遣される、その分野に特化したクラスSが1人存在する。
だがそのクラスSが「ケツを拭く」のはクラスBまでの冒険者の話。
クラスA以上は制裁は自分でやれという判断。
これが何を指すのか。
「つまり世界ギルドの許可が得れば、その制裁は完全に委任され、好き放題出来るって意味だよ」
クラスSを裏切った奴は全員な凄惨な最期を迎える、いや最期すら迎えさせていない制裁も存在する。
その裏切った奴、首謀者は女だったけど、その生涯を変態野郎の性奴隷にした奴とかもいたっけ。自殺してもそのクラスSが最高の治療をもって回復させるから死なせないようにしているとか。
もちろん、裏切りは俺も他人事ではない。
「俺は一度だけ裏切られたことがある、その時にどうしたか知ってるかい?」
「……嵌めた全員を皆殺しにしたと」
「そのとおり、ま、あくまで関係者全員だけどね、一族郎党となると赤ちゃんまで手にかけないといけない、それは出来ないよね、なんと言っても罪がない。ま、育った時に父親を殺した相手がのうのうと生きていると知った時に復讐に来るかもしれないが、まあ、しょうがないかなと」
「…………」
「特に王女の案件は、俺達が深く食い込むことになる、その際に国家機密云々の方便は使わない方がいい、俺の怒りを買うだけだ」
「…………」
「さて、そこをもう一度よく考えて、依頼するかどうか決めるがいい、一度頭を冷やしたまえよ、夜も遅いからな、クォイラ」
「ええ、寝床は用意しています、どうせなら湯あみもどうぞ、後何か欲しいものがあれば、使用人に申し付けてください」
俺たちの言葉に圧倒された3人だったが、クォイラの言葉でお開きになった。
――3人が出て行った後のクォイラ私室
しおしおのぱ~ ←ガクツチ
どさっとベットに倒れ込む。
「あー、疲れた、やっぱりああいう政治が絡む駆け引き的な事は苦手やね」
「そうですか? ああいう脅しすかしを使う時のガクツチは生き生きしているように見えますが」
「、、、それはちょっと心外なんだが、実際どうだ? お前が依頼を受けると判断するってことは信用は出来ると判断したんだろ?」
「はい、とはいえ、、、」
「ま、それと真実が本当かはまた別の話だからなぁ」
早い話、あの王女様が騙されていたり、事実を勘違いしていたりする場合も含まれる。
まあ、まだざっくりとしか話を聞いていないし、言えないことも多いだろうが。
「ジウノア、ファル、2人の意見が聞きたい」
「ボクは受けるべきだと思うけどね」
「右に同じ」
「ほう、理由は?」
まずジウノアが発言する。
「仮にこの依頼を解決すれば「深く食い込むことができる」からね、しかも剥がせないレベルで」
「その見込みはあるのか?」
「コヴィスト王国は、ログ連合の中では国力が一番だからね、魔石採掘権は無視できないからフェノー教での位置はそれなりに高いんだよね」
「ファル」
「学術レベルも結構高いよ、賢人会の排出はまだとはいえ、候補に上がることも多くなってきている」
ここでクォイラが補足する。
「公国での扱いは低いですが、むしろそれがこちらに追い風になるかと思いますよ」
「そうか、つまり、俺達の目標が」
「はい」
「いいだろう、なれば今回の件についての最大の論点は二つだ」
「二つ?」
「一つは俺がやる、お前達に担当して欲しいのが、ルデエル王女について」
「え?」
「あの王女は嘘をついている」




