第40話:前途洋々(?)の冒険者たち・後篇
入門クエスト。
このクエストについては色々あるけど、俺が選定したのはこれ。
――ゴブリン10体の討伐、討伐証明としてコアをギルドに持参する事
「雇われているといっても、全部私がやってしまうと楽しみも何もないので、あくまで皆さん主体でお願いしますね」
と言って色々と話し合う面々、みんな楽しそうだ。
(そうだなぁ、こういうことがしたくて、俺も冒険者になったんだっけ)
クラスCになって出来る世界が広がって、アマテラスの3人と、ああしよう、こうしようって色々と話して楽しかったなぁ。
「そうだ、ギリアンさん」
「なんですか?」
「このクエストについて二つほど質問が」
「どうぞ」
「まず一つ目、ゴブリン10体討伐についてだが、それはギリアンさんがやっても問題ない筈だ、仮にギリアンさんじゃなくても極端な話1000人がかりの冒険者がやってもそれは「クリア」として認定されるんだね?」
「……おっしゃるとおりです」
「なら二つ目、この頂いた資料にゴブリンの生態調査書が付属していないのはわざとかい?」
「……それもおっしゃるとおりです」
商会長はにやりと笑う。
「となるとこれはアレだな、何も聞かず馬鹿正直に行くと痛い目に合うと、つまり失敗させるためのクエストだな」
「だからこそ助けなければならないからクラスDレベルの実力が必要という事か」
「ギリアンさん、ゴブリンの生態報告書と更に過去の討伐報告書をお願いする、我々に一番合う戦法を一緒に考えてくれるか?」
……ふう。
「…………実質、その解答だけで合格なんですよね」
当たり前ではあるが、冒険の成功例も失敗例も貴重な資料として保管されている。先の
コボルトの異常行動の際にファルが作成した資料やピグが作成した資料ももちろん含まれる。
機密レベルによっては閲覧制限もかけられているのもあるが。
例えば俺のドラゴン討伐資料は、特級のプロテクトがかかっていて冒険者なら同じクラスSでしか閲覧は出来ないし、口外は厳罰に処される。
まあ確かに、アレは閲覧制限かけるべき後は思うが。
ちなみに入門クエストの資料は誰でも見られるし、どのギルドにも置いてある。
というよりもそもそも秘匿する意味は無いし、情報は広く共有すべき、前にも述べたが、冒険者は危険な職業、そして危険な職業に就く人間については危険について慎重で臆病でなければならないのだから。
物語的な勇気はタダの馬鹿だ。
さて、次に見るのは後は肝心かなめな爺様達の実力なんだが、、。
●
「ギーー!!」
と断末魔を上げてゴブリン一体が攻撃により倒れる。
倒したのは俺ではなく商会長さんだ。
まず爺様達の1人である雑貨屋さんが魔法の才能を持っておりバフとデバフ魔法使い、才能は初級の上位クラスだ。
相手のステータスを下げて自分のステータスを上げる。これで年齢のハンデを軽減する形で戦いを展開している。
そして武器についてだが、ありがちな近接戦闘武器を安易に選ばない、主体は弓だ。矢じりに毒を塗る形で攻撃力を上げる。
実は近接武器は、絵にはなるというだけで実戦にはまるで向いていない。相手の反撃を受けることが確実な場合は相打ちにしかならないのだ。
その点弓といった後方から一方的に攻撃し続けることが出来れば、まさに「ずっと俺のターン」ということになる。
それにしても弓の使い方が鳴れているなと思っていたが、冒険者を目指すにあたり武器を決めてゼカナ都市に駐留している弓兵に教えを受けていたそうだ。
そして1人、俺が近接武器を使ってゴブリンたちの気を惹くのが役割だ。
んであっという間に、ゴブリン10体を討伐のコアを回収したら。
「さてギリアンさんすぐに帰投しようか」
「え?」
「この生態報告書と討伐報告書によればゴブリンは、最弱であるが故に天敵種に我々人族がいる。恨みを持っているゴブリンもいて復讐行動を起こした記録が残っている。このゴブリンたちの他の群れがそうではないとは限らないだろう? 確か先日、食人行動を起こしたコボルトがいて冒険者が食われたな? そして通路が一時期封鎖されていた」
「そこまで優秀だと、ギルドマスターとして立場がないですね。その点については安心してください、索敵は済んでいます、このゴブリンは10体で群れの単位を作っています。そこも選定されていますし、安全は保障しましょう」
「そうか、分かった、なら」
「キャンプをしようか」
と俺のリュックを見る。
そう、俺は戦闘職として役割を求められると共にポーターとしての役割を果たして欲しいと言われた。
ポーター、所謂荷物持ち。
冒険者にとって疲労とは命にかかわる。だから役割として実際には戦闘力が無くても荷物持ちは大事な役割だ。
それにガイドも出来れば引っ張りだこで一財産稼いでいるポーターもいる。
しかしまさかあの定番リュックがこんなところで役に立つとは思わなかったが、、、。
「ギリアンさん、期待してくれていいぞ」
「え?」
●
「うまうま!! うまうま!!」←ガクツチ
夢中になって飯をかきこんでいる。
そう4人のうちは料理人、しかもただの飯屋じゃなくて、表通りの高級料理屋の元料理長だ。ゼカナ都市観光ガイドブックでは文句なしの星三つ! ルードが接待で何度か利用していたと言っていたが、味は凄い美味いと言っていた。
一度は行ってみたいなと思っていたものの、貧乏冒険者には当然縁なんてものが無かったが。
「あの、おかわりいいですか!?」
「はー、それにしても美味そうに食べてくれるね、こっちも腕のふるい甲斐があるよ」
とササッと作ってくれる。しかし簡単な調理器具でよくぞここまでの食事が提供できるとは、流石プロだ。
「ギリアンさん、そんなに気に入ってくれるのなら、今後の冒険者として同行してくれた時、オプションで飯も付けるよ」
(´;ω;`)ブワッ ←ガクツチ
なんて優しい、こき使ってくるアイツラとは大違いだ。
――
その後、入門クエストをいくつかこなし、すぐにクラスEに昇級した。
というか、これは、、、、。
「普通に黒字になってる、、、」
所謂「金になるクエスト」を中心に受注し始めている。討伐クエストはもちろん受けられないけど、討伐クエストだけが金になるわけじゃないし、自分達の力量を理解して、的確なクエストをこなしていっているのだ。
しかもこのクランの強みは、、、。
「食料調達、ですか?」
「そうだ、目的があった方がいいからな、ゼカナ都市だけではなく、各地の都市でクエストのレベル関係なしに上質な食料が調達できるからな、旅行ついでに冒険をしたい、出来るかね?」
「出来ますよ」
「ギリアンさんはギルドマスターってことだが、遠方への同行は願えるか?」
「問題ないですね。留守番を頼めそうな知り合いもいますし、正直閉めても問題ないので」
「わかった、なら近々事業計画書と作って持ってくるから頼むよ」
と言ってギルドを後にした。
そう、ゼカナ都市では顔役と言っていい程の人達、太いパイプを持っていて、それを冒険に利用しようとしている。
な、なんか、ビジネスになりそうな感じが、凄いな、本当にヤリ手の人たちなんだな。
冒険者ってのは、専業でやっているのもあれば兼業でやってる人もいるとは述べたとおりだが、目的もそれぞれだ。
ホヴァンと俺なんかは所謂典型的な冒険者、冒険そのものが目的で金を稼いで暮らしていく。
そしてあの爺様達みたいに、冒険と目的は別とするというタイプもいる。実際に多数の冒険者を雇い事業を展開させている人もいる。
クラスEへの昇格も近いかもしれない、というか普通にその実力は持っているよな。
思えば、前に若者達が冒険者登録をしていたが、大学のサークルノリでゴブリン相手に当然のように苦戦して3回目のトライでやっとクリアできていたっけ。
そんな訳で我がギルドに前途ある(?)冒険者達が誕生したのであった。




