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第37話:嗚呼、三馬鹿トリオは今日も往く2・前篇


 麗らかな昼下がり、ここはギルド・ジョーギリアン。


「さて、ギルドマスターさん、この2人は紆余曲折あるも、ずっと愛を誓い合った仲だったんです。ですけど身分の差から認められることはありませんでした」


「…………」


「さてここまで話しておいてなんですが、実はこの話、悲恋の話をすることが目的ではないんですよ、言っていること分かりますか?」


「……………………」


「今愛を計ると聞いて、男女だと思い浮かべましたよね? 男と男が愛し合う事もある、女と女が愛し合う事もある、まずはその無意識のジェンダー差別を自覚しましょう」


「…………………………………………」





 ゴシゴシ←いつもの水をぶっかけたついでにモップをかけている。


 本当にロクな奴来ないよな、なんでここでやるんだよ、つーか、アイツさ、ここが冒険者ギルドだって分かってるよな? こんな場末の冒険者ギルドにわざわざ来て、冒険にまるで関係ない演説をうつのは単純に何でだろうか。


「だっはっは! 相変わらずだな」


 と大爆笑しながらルードが現れた。


「いやさ、ホントさ、思想云々じゃなくて時と場所と相手を選べないって時点でロクでもねーよな」


 とモップを杖代わりにしながらルードに愚痴る。


「憲兵の詰所も似たようなロクでもない案件ばかりだよ」


 と言いながら、ルードは机に視線を落とし、冒険者新聞を拾い上げる。


「大騒ぎになっているな、アマテラス、やはり活動を続けていたのか」


「……みたいだな、魔物を利用した枢機卿が都市外放置処分で魔物に喰われる、皮肉なもんだ」


「クロルソン公爵も相変わらずだ、アマテラスの名前の使い方がまたえげつない、とはいえ敵対関係なんて噂も強いが、個人的にはガクツチの事を気に入っているようにも見えるがな」


「流石ボンボンの上流さん」


「とはいえさわり程度さ、貴族でない以上は被支配者階級だからな、それでもそのクラスSは除くが」


「会ったことあるのか?」


「ガクツチは遠目から、セシルは何度か話した。何というか色々と規格外だったよ、クラスS冒険者って奴は」


「……ま、俺みたいな底辺クラスDからすれば雲上人だからな」


 そんな会話をしながらルードは冒険者新聞を置くと。


「そう、よってそんな事はどうでもいい、ギリアン、再びホヴァンで喫緊の事態が発生した」


「ほほう、聞こうか」


「アイツさ、今さ吟遊詩人にハマっているだろ」


「ああ、なんかグループの清楚系の女の子にハマってたよな、ブロマイドも持ってて、名前は確かエルちゃんだっけ?」


 吟遊詩人。


 この会話のとおり吟遊詩人はアイドルと考えて差し支えない。


 容姿の才能は異世界でも希少で商売になるのも一緒。もちろん男の吟遊詩人もいる。


「そうだ、それがな、そのホヴァンの最推しのエルちゃんなんだがな」



「どうやらストーカーの被害にあっているという告発が憲兵にあった」



「…………」


「…………」


 シーン。


 犯人ホヴァンなんじゃね、とは2人は思った。


「いやいやいやいや、流石にアイツじゃないだろーよ、その程度の良識はあるんじゃないか」


「…………」


 とそっと資料を出す、これはエルちゃんから提供された資料らしく、遠目から撮影されたストーカーの写真なのだが。


 背格好がホヴァンに似ていた。


「…………」


 俺はすぅと息を吸う。


「何かあったらボコってでも止める、それが友人だ」


 と言って2人は立ちあがった。



――ギルド・ドード



 ゼカナ都市の中で2番目に位置するギルド。


 クラスDまでしか所属していないが所属冒険者数は一番、様々な冒険を斡旋できる地元密着型の中堅ギルドだ。


 マスターであるドードは大家さんと地元商会の会員仲間だそうで、冒険者としてやりなおすときに口をきいてもらったのだ。


 つまり俺の元所属先、というか今でもフリーで世話になっているけど。


 ここのギルドは雰囲気が良くて冒険者たちのたまり場にもなっているし、飯も食えるし美味い。


 ただ酒だけは場が荒れるから提供しないそうな。


「いやぁ~エルちゃん可愛いよなぁ」


 とブロマイドを見ながらニヤニヤしている。


「「…………」」


(まあでもルードよ、別に可愛い子に夢中になるぐらい普通じゃないか?)


(確かにな、まあ、それを確かめに来たわけだが)


 よしと、ここでルードが切り出す。


「なあ、エルちゃんだっけ? まあ、確かに可愛いよな」


「お! 分かるか! 化粧臭くなくて、清純な感じが良いんだよな!」


「あのさ、そ、そ、そんなに可愛いのなら、か、か、彼氏いるんじゃないかなぁ、なあギリアン?」


「あ、ああ、よく吟遊詩人とイケメンがくっつくなんて良くある話だしなぁ、でも別に責められないぜ、男だって美少女が好きだろ? 女だって美男子が好きだと思うぞ」


 まずは、現実を見て冷めさせる手段だが。


「ああ、確かにアイドルだって女の子だからな、イケメン好きなのは当たり前だろ?」


(お?)


 なんだ、ちゃんと現実を見た上で好きなのか、なら、、、。



「でも、エルちゃんは男って感じじゃないんだよね(曇り無き眼)」



((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル ←ガクツチ・ルード


「いいいいいや、えーっとさ、まあ、あんまり決めつけも、なあギリアン」


「あ、ああ、ほら、彼女も仕事でさ」


「はっはっは、そんなことわかっているよ」


 お? やっぱりなんだかんだで現実を見ているのかな。


 まあさ、冷静になって考えてみれば好きなアイドルには彼氏はいない、それぐらいの夢見たって不思議じゃないだろう。


 俺はアイドルって刺さらないから分からないけど、推しスポーツ選手がいて「顔だけの変な女には引っかかりませんように」とか余計なお世話とか思うものな。


「でも見てみろよ」


 と手に持っていた所謂ブロマイドを見せる。


 そこは「ツーショットチェキ」だったのだが、、、。



「ほら、俺と一緒にハートを作っている時は、他のファンとする時の顔が違うなって思っていたんだよ、ひょっとしたらワンチャンあるかもな、へへっ」



((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル ←俺、ルード。


 こえー、こえーよストーカー。


「まあでもさ、可愛いし人前に出る仕事だし、勘違いする男も多いと思うんだよ、だからさ、そういうのから守ってやらないといけないよなって思う」


((だから「そういうの」がお前なんだよ!!!))


 くぅ、言えないこのもどかしさよ!!


(なぁ、どうすんだよ、憲兵さんよ、嫌疑濃厚やんけ! 友達が捕まるのは嫌だぜ!)


(ギリアン、答えは一つだ、言っただろ! 友達として凶行を止めるしかない!!)


(い、いや、そうだけど、ど、どうする、ボコってなんともならないような)


(任せろ、お前にも協力してもらうぞ!)


 とルードはゴホンと咳ばらいをすると。


「なるほどな、ホヴァン」


 ルードが話しかける。


「彼女の警護、実はな憲兵宛に告発があった」


「え!?」


「ストーカー被害だそうだ」


「マジか!!」


「しっ、だがこの場合、冒険者を雇えるほどの予算を貰っていない、だから友人としての「遊びの誘い」ってことになるが」


 ルードの意図を察した俺はガシっと肩を組む。


「だそうだ、親友の遊びの誘いだ、俺は断る選択肢なんてないが、お前はどうだ?」


 ホヴァンはウルウルと涙目になる。


「ありがとう、持つべきものは親友だよな!」


 まあ、原則ホヴァンがお礼を言う理屈は無いのだが、まあいい、


 3人で結束が強くなる。


「さあ、ライブ会場だ! 行こうぜ!」



――ライブ会場



「「「「「エールたま! フォイ! エールたま! フォイ! あれあれあれあれあれ、どこいるの!?」」」」」」


【ここだよ、ここだよ、分からない?】


「「「「「わからなーいよう!! ぴえんぱおーん!!」」」」」


【だいじょうぶだよ、ここにいるよ♪】


「「「「「やーった!」」」」」


 と完璧な振り付けでホヴァン含めてファンたちは踊り狂っている。


「相変わらず凄い世界だよなぁ」


 とその姿を後ろで飲み物を飲みながら眺める。


「俺も10代のころは好きな吟遊詩人とかいたが、懐かしいと言えば懐かしいな」


 確かに高校生の時、同級生はアイドルが可愛いとか夢中になって話していたっけ。


 なんだけど、、、、。


 年齢層が意外と高い、ホヴァンの横で旗の様なものをバルログ持ちをして踊っている男は、どう見ても40代のおっさんに見える。


 いや、別に若い子好きなのはわかるんですよ、俺だって大好きだ、若い姉ちゃんが露出度高い服着て踊っていれば、おみ足がおっぱいがウヒヒってのは分かる。


 だけど、、、。


「な、なんか、ガチ恋してないか?」


 とルードが引き気味に問いかける。


 そう、ガチ恋しているのだ、なんか、奥さんとか子供とかいるのかなとか余計なことを考えてしまうが。


「まあでも、推し活の楽しさは分かるから、一概に否定できんけど、、、」


「、、、、ギリアン?」


「俺、ひょっとしたら、この中に混じればイケてる男子になれるかもしれない(虚)」


「おいい!! そっちに傾倒するなギリアン!! しっかりしろ!!!」


 後篇へ続く



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