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第30話:辺境都市のやりとりと、そのまま、、



――辺境・ペマー



 高速馬車を飛ばして半日、ペマーに到着した俺らは領主に挨拶をしていた。


「初めまして、クォイラ・アルスフェルドと申します、この度は急な受け入れ、お手数をお掛けして申し訳ありません」


「いいえ、アルスフェルド子爵家の方がいらっしゃるとは思いませんでした、失礼ですが何かあったのですか?」


「心配には及びません友人と一緒に旅行しようと思いまして、ただの観光ですよ」


「観光、ですか? 我が村には温泉程度しかありませんが」


「それで十分ですよ、風光明媚で湯治には最高ではないですか」


「はっはっは、素直に田舎で何もないとおっしゃっていいですよ、、、」


 と不自然に言葉を切り何故かそわそわしている領主。


 これは貴族を目の前にしているわけではなく。


「いれてぇ~、さむいぃ~」


 と部屋の外で恨めし気に立っている俺がいるからだ。


「あ、あの~、えっと下男さんですか? 大分お疲れのようですが、その~」


「大丈夫です、下男ではなくただのヒモですから」


「え?」


 と領主はファルとジウノアを見るが。


「ボクにとってはパシリ」

「私にとっては奴隷」


「え、ええ~? あ、なるほど! は、はっは、ご、御冗談を、また上手で」


「いれてぇ~! さむいぃ~!(ドンドン!!)」←窓を叩いている


「……あ、あの、えっと、温かい飲み物の用意を」



「いいんですよ」

「不義理なバカ者だからね」

「大丈夫、あれ芸だから」



「げ、芸って」


「つかれたよぉ~、いれて~なぁ~(ドンドンドン!)」


「あ、あのー、失礼ですが、芸には見えないような」


「ちっ」


 と舌打ちでクォイラは手を俺にかざすと。


「アベベベベベ!!!!」←ガクツチ


 シュー。←ガクツチ


「これでよし、さて短い間ですが、お世話になります」


「は、はは、よ、よろしくお願いします」


「ああ、そうそう、トストは息災ですか?」


「? そんな輔祭はおりませんが」


「そうですか、失礼、記憶違いだったようです」


「いいえ、我がフェノー教の教会にはオックという輔祭が1人で切り盛りしていますよ、ジウノア大主教」


「なんでしょう?」


「そのオックですが、名高いジウノア大主教がいらっしゃると聞き、楽しみにしておりました、是非あってあげてください」


「それは光栄、明日にでも」


 と領主の部屋を後にしたのであった。



――宿屋



「この部屋に魔法の類はかかっていませんね」


「こっちも大丈夫だよ、盗聴器の類は無いね」


 とクォイラとファルが部屋を確認する。


「それにしても、あっさりカマかけに引っかかったね?」


 とファルが発言する。


 カマかけ、最後、クォイラが「トストは息災か?」といった問いに領主は「そんな輔祭はいない」と答えた。


 輔祭のことなど聞いていないのにだ。


「つまりあの領主は何かを知っているという事だね、ジウノア、オックという輔祭に心当たりは?」


「流石にフェノー教の信者の1人1人の顔は覚えていないよ」


「さて、となると、これからどうするかですが、どうします、ガクツチ」


 と俺に話しかけるが。


「ぶっすーーーー!!!」


 と壁に向かって体育座りをしている俺。


「まだ気にしているんですか、小さい男ですね」


「すみませんね小さくて、しかも男関係ないし(#^ω^)ピキピキ」


「おかげさまで、失言を引き出せたじゃないですか? 貴方の指示でしょう? 他に気を散らせて世間話のように聞けと」


「こんなやり方は指示しておりませんがね(#^ω^)ピキピキ」


「ガグツチ」


「ぶっすーーー!!!」


「トストのことが心配ではないのですか?」


「ピクニックにでも行ったんじゃないですかね?( ̄ー ̄)ハンッ」


 とここでジウノアが俺の隣に腰を下ろす。


「む、なんだよ? 言っておくが甘えたって駄目だからな、お前らのそういうのには散々騙されたからな、通用せんぞ」


「はいこれ」


 とジウノアは俺に紙切れを差し出す。


 ん? なんだこれ、この紙きれ、、、、いや、紙切れじゃなくて、これは、、。


Σ( ̄□ ̄|||) ←ガクツチ


「こここ、これ!!!」


「そう、アンタが大ファンの俳優が出る公国演劇場でのVIP席、丁度2枚手に入ったのよね、一緒に行かない?」


「…………」


 公国演劇場。


 首都にある最も格式の高い演劇場、Bクラスに昇格し高位冒険者になって金に不自由しなくなった時にジウノアに誘われて以降ハマりまくった。


 あの時は良かった、金は唸るほどあったから、クォイラやらジウノアのコネ使いまくって最前列で見てたなぁ。


 今は貧乏暮らしだから、なけなしの金叩いて映像魔石で見るぐらいだ。


 この主演の俳優は、俺が大ファンの俳優だ。


 所謂悪役なんだけど、ピカレスク浪漫という一歩間違えば犯罪賛美になったり体制批判になったりするジャンルを純粋に煮詰めたというか、狂気の演技に魅了されたのだ。


「しかもこれ、その最前列のチケットやないかい!! 超プラチナチケット!!」


「フェノー教大主教ともなれば、そこらの高位冒険者よりもコネは使える、貴方の知ってのとおりね」


「…………」


 スッと俺は立ちあがる。


「丁度いい運動代わりだった、さて、ファル、例の資料を」


「ひひひ、ははは、相変わらず尻に敷かれ色香に騙され物に釣られて」


「うるさいよ! ほれ! 早よう!!」


「はいはい」


 とファルは資料を差し出してくれる。


 昨日の資料は既に頭の中に入れてある、今渡してもらったのは、ここの領主を始めとした住民たちの出来る限りのデータを集めてもらったが、、。


「…………」


 何度見ても、所謂「普通」だ。性癖と言った人の根幹をなす部分も、あの領主に限って言っても精々巨乳好きといったぐらいだ、彼とはいい酒が飲めそうだ。


 その中でトストは確かに存在している、普通に日常生活を送っているようだった。


 そしてあの通信魔法の時間以来消息を絶っている。


「感じるままに、だな」


「え?」


「さてと」


 俺はいそいそとリュックの中から自分の荷物を取り出す。


「どうするんです?」


「温泉」


「……温泉ですか」



「ああ、それじゃあ頼むな」



 とガグツチはいそいそと温泉に向かう。









 それ以降、ガクツチは消息を絶った。





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