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第22話:嗚呼、三馬鹿トリオは今日も行く・前篇


 ここはルザアット公国。


 麗らかな昼下がり、ここはギルド:ジョー・ギリアン。


「とってもいい教えがあるの! ただ祈るだけで世界に貢献できる! 至高神様の真理と探究の聖人の戒壇を宿願として」


「…………」


 俺は、カルト宗教の勧誘を受けていた。


 さて、皆さんはこんな感じで宗教に勧誘をされたことはないだろうか。


 そしてこんな疑問を思った事は無いだろうか。



――こんな勧誘で信者なんて獲得できるのか



 この疑問、実はそのとおり。


 こんな戸別訪問を含めた街頭でもよく見かける勧誘活動は、実は信者獲得を目的としているわけじゃないのだ。


 あれは「カルト宗教への所属意識を高めるため」と「周囲から孤立化」にある。


 当然に友達を勧誘していれば、どんどん知り合いはいなくなり、周囲から孤立し、カルト宗教にしか自分の居場所がなくなる。


 この孤立化させれば後はいくらでも過激化させられる。


 嘘じゃない、日本でもカルト宗教によるテロが起きて犠牲者が出てしまったことで証明されたのだから。


 ちなみに勧誘を受けた時の対処方法は簡単、物理的に逃げることだよ。


 あ、そうそう、あの勧誘しに来た奴はあまりに帰らな過ぎたから、水ぶっかけたら流石に退散した。



ゴシゴシ ←水をぶっかけたついでにモップ掛けをしているガクツチ



「ようギリアン、相変わらず変な客ばかりだな」


 と言いながら入ってきた1人の男。


「うるさいな、でもさ、あんなやり取りも場末って感じで実は嫌いじゃなかったりする」


「プハハ! ってな訳で、遊びに行こうぜ!」


「つーか仕事は良いのかよ、憲兵様よ」


「仕事は適当に真剣にが俺のモットーなんだよ」


 彼の名前はルード、ルザアット公国の憲兵詰所の所長で、憲兵少尉。


 憲兵。


 ルザアット公国の警察だ。


 任務は治安維持で日本とはさして変わらない。


 んで憲兵少尉という階級だが、ルードの年は20代で俺とほとんど変わらない。その年で詰所の所長なのは幹部学校出のエリートだからだ。


 ルードとホヴァンとはよく3人で遊んでいて、大家さんは三馬鹿トリオなんて呼んでる。


「遊びってどこ行くんだよ?」


「競馬場」


「? デカいレースあったっけ?」


「いやさ、ホヴァンがさ、さっき通信魔法で連絡が来たんだけどさ、どうやら厄介な事態になっているみたいで」


「厄介な事態?」



――競馬場



 賭け事。


 飲む打つ買う、異世界でも男の人気を独占する三種の神器、御多分に漏れず、俺もルードもホヴァンも打つのは好きだが、、、。


「へぇ、お兄さん、とっても詳しいのね、憧れちゃうわ」


「えへへぇ、そうだねぇ~、大したことないよぉ~」


 と分かりやすい逆ナン(?)に引っかかっていた。


「な? 厄介な事態だろ? 綺麗なねーちゃんと仲良くなって~とか言っていたから、嫌な予感がしたんだよな」


「アイツ、この間は飲み屋のねーちゃんに騙されていたよな」


「ああ、いい奴なんだけどなぁ」


 あの女はどう見ても美人局だ、ホヴァンは惚れっぽく女に弱いのが難点だ。


「そんな訳でギリアン、ゴニョゴニョ」


「はいはい」


 とルードから離れて俺はホヴァンに近づいて話しかける。


「よう、ホヴァン」


 と俺の声かけに初めに反応したのは女だった。


「あら? お友達さん?」


「どうもはじめまして、ギリアンと申します、ホヴァン、勝ってるか?」


「ぼちぼち、あれ? ルードは一緒じゃないのか?」


「ああ、ルードの奴、「憲兵」の仕事が少し残っているから終わらせて来るってさ」


「ピクッ」←女


「え? あ、ああ、そうなん? すぐ来るって話だったような、まあいいや、という訳で馬の選び方なんだけど~」


 と振り向いた先。


 そこに女はいなかった。


「あ、あれ?」


「さっきの女のことか? なんか別の男のところへ行ったぜ、彼氏でも来たんじゃないか?」


「ええー! そ、そんな、、、」


 と俺の適当な回答に落ち込むが、、。


「でもまあいいか! 彼氏がいたんじゃしょうがない!」


 と速攻立ち直る、切り替えが早いのがコイツの長所でもあるのだ。



――そんなこんなで



「だあーー!!」


 と俺は頭を掻きむしり。


「なんで脚質が差しなのに先行するんだよ!!」


 とルードは愚痴る。


「いやぁ~、みんなごめんね~」


 とホクホク顔のホヴァンが馬鹿勝ちした結果に終わった。


 この野郎、美人局に引っかかってたくせに。


「まあまあ、この後の飯は奢るから」


 との事だった。





 その後の馴染の飯屋で他愛のない話に花が咲く。


 ホヴァン。


 以前にも紹介したがクラスD冒険者、拠点は俺と一緒のルザアット公国、ゼカナ都市を拠点として活動している。


 所属ギルドは「ギルド・ドード」ゼカナ都市では中堅のギルドで俺のかつての所属先でもある。


 マスターは気のいい面倒見のいいおっちゃんで、独立した今でも面倒を見てくれる。


 クラスC以上の冒険者は所属していないけど、その人柄に惹かれて地元密着型のクラスDからは絶大な信頼を寄せられている。


「てなわけでルード、負けた分を補填するべく小遣い稼ぎがしたいんだが」


「小遣い稼ぎ? ああ、ならいいのがあるぜ」


 冒険の依頼主について。


 憲兵が捜査の過程上冒険者を雇う事はままある。


 何故かというと、憲兵は日本の警察と一緒で、違法の捜査が出来ない。正確には証拠や情報を違法で収集すると後で糾弾されてしまうのだ。


 とはいえ綺麗事で物事は進まないのは何処も一緒、そんな時こそ制約のない冒険者の出番な訳だが、憲兵の依頼は治安維持に関わることは多く、クラスDには本来依頼されない。


 普通憲兵からの依頼はクラスC以上でかつ憲兵の信用が必要なのだ。


 んで今のルードとの会話を聞いてのとおり、何回か依頼を貰っている。


 ルード自身も何勘づいている様子はあるが、特に突っ込まれる様子はない、中々に切れ者で面白い奴だ。


 ちなみに憲兵の依頼が俺にとっても都合がよい。


 何故なら憲兵の依頼には秘匿依頼が必ず課せられるということだ。


 秘匿依頼。


 前にも触れたが「冒険者が当該クエストに従事していること自体が秘匿される」ということ。


 ルードは酒を飲みながら話し始める。


「ガクツチ、お前のところの近くに飲み屋があるだろ? あの看板も出していないやつ」


「ああ、アレって確かマフィアが経営しているぼったくり、、、」


 とここで俺はニヤリと笑う。


「なーるほど」


「そのとおり、今あの店を経営しているマフィア幹部を今追っかけていてな、拘束するのに丁度いい罪名が欲しいんだ」


 とここでホヴァンも乗ってくる。


「ルード、この話俺も一枚噛むぜ、あの店、この間知り合いも被害に遭ってムカついていてな」


「ありがとな、お前ら2人なら心強い」


「んで報酬は?」


「2人となるとクラスD下位の報酬になって申し訳ないが」


「いいぜ、充分だ」


「よっしゃ、でも飲み屋か、ガクツチ下戸だろ? 大丈夫か?」


「別に飲まなくたって、たらふく食べるさ」


 俺とホヴァンの会話にルードは笑うが、真面目な顔になる。



「ホヴァンの友人だけじゃない、被害者も結構出ていてな、だからそいつらの分まで派手に頼むぜ」



後半へ続く


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