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第110話:満身創痍



――時は戻り・作戦説明時




「今回の作戦は毒殺です」


 俺は全員に告げる。


「人海戦術も使えない上に真っ向から立ち向かうには攻撃力が弱すぎる。ルアとホヴァンは戦闘職としては一人前ですが、傷は負わせられても致命傷は無理、クラスCとはそういう存在です」


「なれば、変則方法を採用しリスクを取るしかない。よってサラットさん、返し刃のついた武器と毒を注文できますか? 毒は強ければ強いほどいいです」


「武器は問題ない、俺が知る限りに最高の剣を用意する。だが毒は猛毒レベルなんだろう? そのレベルとなると市場流通はしていないぞ」


「となると教会ですか、テドンさんとシプラーさん交渉をよろしくお願いします」


「わかった、ここの司祭とは懇意にしている、手に入れよう」


「それとこれがクラスCのクエスト受注書です。後一つお願いがあるのですが、教会の交渉時にテックを一緒に連れて行って欲しいのですが」


「ああかまわんよ」


「テック、聞いていたな? 2人について行き、交渉術について勉強してこい」


「はい!」


「さて、次は各員配置完了後の実際の攻撃方法についてです。サラットさんが用意した武器を2本に毒を塗り込み、寝込みを襲う。その際は唯一のダメージを与えられる目を狙い思いっきり刺し、粘膜に直接毒を送り込みます。丈夫な魔物だからすぐに毒はまわらないと思いますが必ず限界が来る上に視界も奪える一石二鳥の策、さてルアとホヴァン」


「はい」

「おうさ」


「まず初撃で二つの目に刺さらなかった場合は撤退一択、相手の視覚が無事な状態で勝てる相手ではない。だが視覚を奪えば、相手はパニックになるし、激しく攻撃を仕掛けてくるだろうが、狙いが定まらないぶんまわしだ」


「そこは2人で連携を取りながら避けろ。相手の攻撃手段は噛むこと尻尾を振り回す事だから回避に専念、分かっていると思うが弱点の腹には潜り込むなよ、クラスCは馬鹿じゃない、誘って潰そうとしてくるからな」


「分かりました」

「おっけー」


「後衛はホヴァンとルアの動向を見ながら矢を放ってください。ダメージを与えるというよりも足止めに専念をしてください。相手にとっては軽い痛み程度ですが、視覚が潰された状態では、かなりイライラさせることが出来て、攻撃も散漫になる」


「「「「了解」」」」


「そしてテックはさっき言ったとおり、作戦時俺と一緒に行動。前衛と後衛は攻撃しっぱなしで消耗が激しいが、俺達も走りっぱなし魔法をかけっぱなしになる、だから絶対に俺から離れるなよ」


「はい!」


「今回で直接的に捨て駒となるのはルアとホヴァンの2名、初撃での失敗や交戦中にどちらかが食われた場合は指示を待たずに無条件撤退。先ほど言ったとおり、この魔物は食べている間は獲物に夢中になるから、その時は私の指示に従ってくれれば安全に撤退できます」


 とここで言葉を切り。



「後はクエスト実行まで知識と訓練で少しでも高める事、そして全員覚悟を決めてください、命を懸けるというのは、仲間を見捨てて逃げる覚悟も含まれますよ」




――現在




 しかし作戦は無事成功したものの、想像以上にタフだった、その点が反省だな。


 と今回の獲物をじっくりと眺め、


「トドメぐらいは俺がさすか」


 と俺は馬車から持ってきた槌で魔物の頭蓋骨を思いっきりかち割る、魔物はビクンと震えた後動かなくなり、これにて討伐完了。


 本当にぎりぎりだった、なんせ立っているのが俺だけだからな。


 さて、今回の討伐クエストの結果を見てみる。



:結果

 討伐完了・成功・勝利。


:損耗状況。


 前衛

  ホヴァン:重傷、意識無し、頭を強く打っており要精密検査

  ルア:重傷・あばら骨の骨折、内臓への損傷が懸念、要精密検査


 中衛

  俺:無傷

  テック:無傷、魔力消耗による失神。


 後衛

  テドン(弓):無傷・矢を放ったことによる疲労大

  キキイド(弓):無傷・矢を放ったことによる疲労大

  シプラー(弓):無傷・矢を放ったことによる疲労大

  サラット(支援):無傷・魔法消耗による疲労大



 備考

  現状、死亡者0ではあるが、予断は許されない状況。


  尚、予断を許さないとは負傷だけではなく、例えば今、クラスDの魔物が出てくれば全滅するまで消耗しているということ。


  ゲームでは戦って終わりだが、今からその危険と戦いながら勝利の後始末をしなければならない。


「やったかね、ギリアンさん」


 へとへとになりながらシダの面々が来た。


「はい、なんとか、さて、倒したばかりで消耗しきっていると思いますが、次へ行動へ移しますよ、テック」


「は、はい」


 先ほど復活したばかりのテック、まだ魔法は使えないが何とか歩いている。


「まず打ち合わせどおり、私が素材の剥ぎ取り及びコア回収を担当します。ここに残るのは俺とテック、目利き担当としてサラットさんです。この3人で活動中、別の魔物が出現した場合は私1人で対処します」


「そして他全員は馬車で帰投後、ルアとホヴァンは病院で精密検査を受ける為に修道院付属病院へ。他の御二方は疲労だけだと思いますが、全員検査を受けてください。もし可能ならルアは、精密検査後に世界ギルド支部へ報告を頼む、テドンさん、ルアが駄目な場合はよろしくお願いします」



 俺の指示にテドンが頷くが。


「それはいいが、ギリアンさん大丈夫なのか、相当な重さになるぞ」


「大丈夫です、それを見越して私はほぼ戦闘には不参加でした、見てのとおり無傷で疲労もほぼありません」


「分かった、じゃあ、後で落ち合おう」


 と俺達3人だけ除いた全員がその場を後にした。


「さてテック、解体やるぞ、教えてやるからな、クラスCなんて解体したことないだろうから貴重な経験だろう」


「は、はい!」


 と俺の指導の下、テックは解体作業を開始する。


 この魔物の素材は、なんといってもその防御力の要である革と10トンの咬合力で傷一つ付かない歯だ。革は防具に、歯は武器に使われ、一般の冒険者では中々手が出ない、それこそ有力冒険者御用達の高級品になる。


「うっ」


 血と内臓の匂いで口元を抑えるテック。ゴブリンは割と平気そうだったけど、これだけ巨大だと量も凄いからな、動いていたから熱を持っているし。


「ほれほれ、魔物戦では解体は必要スキルだぞ~」


 と指導しながらテックを顔色が青いまま解体作業を進めていく。


「凄い! こんな上物見たことがない!」


 と一方で革を見ながら目を輝かせるサラットさん。


「なあギリアンさん、これはぜひうちで扱ってみたいが」


「ふふっ、それは報酬分配の時に話しましょう、それにしても毒をかませてしまったので内臓と肉は全部だめになってしまったのが惜しいですね」


 これは食用の肉としても高く売れるが、それも贅沢は言ってられない。


 まあ血肉は放置すれば土に還るからな。


 こうやって、徐々に解体を続け、革を剥ぎ歯を全て抜き取り……。


「凄いな、リュックが満杯になった」


 よいしょっと、素材が入ったリュックを背負う。


「大丈夫かい?」


「思ったより重くないです、さて、テック」


「は、はい」


「ん? どうした? 疲れているのか?」


「疲れてなんていません!」


「よし、周囲の警戒を頼む、この帰りの道程のみお前は剣士として振舞え、サラットさんは、俺の傍を離れないでくださいね~」


 と帰還するべく行軍を開始したが。



――ゼカナ都市



「え?」


 帰投後、リュックをすぐにギルドに置いた後、急いで病院に向かい待合室でルアと話した時……。



「ホヴァンさん、脳に異常があるって……」



 と言い放った。




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