第109話:魔物討伐・後半
後衛に視線を移すと、シダの面々は辛そうに矢をつがえているのが見て取れた。
回復魔法は万能ではない。
例えが難しいが、実戦ではHPが常時減少して回復でHPが回復するが、それが追い付かないという表現が一番適切か。
(くそう! まだか!!)
魔物へ視線を移すが、まだ魔物のパフォーマンスが落ちない。
矢は徐々にパラパラと降る雨のようになってきて、、、、、。
(って、矢の勢いが弱くなり過ぎていないか?)
俺は商会長さんに視線を送り、それに気が付いた指定の合図を受ける。
(サラットさんが落ちたか!)
魔法使いの疲労の限界、当たり前ではあるが疲労は魔法使いにも蓄積し、限界を迎えれば魔法を放てなくなる。
この矢の威力では、後衛が後衛の役割を果たせなくなる。
となると、、。
その負荷は一気に前衛が負う事になる。
「グォォアア!!」
と攻撃が弱くなったことを察知し、魔物が徐々に前に出始める。
「テック! 後衛は最悪生き残ることができる! 前衛補佐を徹底するぞ!」
「…………」
答えの代わりにドサッと音がしたので振り向くと。
テックも失神していた。
「ぐっ!」
全力で走って全力で魔法をかけて、休憩は一切なし。
俺は急いでテックを担ぎ上げると、安全な場所に寝かせて中衛ポイントに戻る。
「ホヴァンさん!! 攻撃来ます!!」
と前衛では指揮の下、ホヴァンが必死の形相で回避している。
既に、弓矢は一本が時々来る程度で魔物は意にも介さなくなっている。
「…………」
この状況は既に詰んでいるんじゃないか。
(あ……)
その時は唐突に来た。
魔物の攻撃の初動動作。
しかしルアは気が付いていない。
既に魔物は最初こそパニックに陥ったものの、今では見えないなりに冷静に対応していている。
だから魔物は、位置にあたりをつけて大口を開けて迫る。
その場所にはホヴァンがいた。
ここでようやく、ホヴァンは自分への攻撃に気が付いた。
「…………」
その時、何かを悟ったかのような表情を見せたホヴァン。
防御動作は無意味、瞬時に回避動作を始める。
ホヴァンは冷静だった、せめて致命傷を避けるべく手と足の犠牲を承知で、胴体は噛み千切られないように避けようとしている。
そう、1%でも高い可能性を……。
駄目だ間に合わない……。
だから俺は、加速してホヴァンの胴体に腕をかませるかたちで弾き飛ばした。
次の瞬間の魔物の攻撃は空ぶり。
ホヴァンは弾き飛ばした衝撃で20メートルは吹っ飛ばされて宙を舞い。
地面にたたきつけられて後頭部を強打。
「…………」
ホヴァンは薄目をあけて口を半開きにして失神している。
ぐっ……。
間に合う為には力を少し開放するしかなかった。
魔物はホヴァンが飛ばされたことも分かるのか、今度はルアの方向を向いた時。
よろよろと初めて動きが鈍くなった。
「ルア!!! 10秒だ!!! 死に物狂いで1人で持ちこたえろ!!!」
絶叫に近い形でルアに指示を送る。
「了解!! さあこっちこい!!!!」
と攻撃して1人で対峙する。
俺は急いでホヴァンを担ぎ、テックと同様に安全地帯へ隠し。
振り向いた先に、ルアの動きは明らかに鈍っていて。
「はぁっ!!」
と噛みつきはかろうじて避けたものの、次の魔物の体をひねる動作に対して理解と判断が遅れて。
「がふっ!!」
尻尾で弾き飛ばされた。
5メートルは吹っ飛ばされて地面を叩きつけながら転がり、それでも負けてなるものかと起き上がるが。
「っ!!」
わき腹を抑えて、痛みを堪えきれず、膝を地面についた。
(アバラが折れたか!)
現在、既に矢も途絶えて、テック、ホヴァンが落ちて、ルアも事実上使い物にならない。
(ふぅ……)
この魔物は、前に述べたが逃げるのは簡単だ。
しょうがない、撤退と思った時だった。
「~ウゥ~ゥゥ」
と魔物はうめき声を上げて攻撃の反動で体を支えきれずフラフラになると。
ドスンと地面に倒れた。
「…………」
そのままピクリとも動かない。
俺は、ゆっくりと近づく、まだ息を感じるが瀕死の状況。
呼吸以外は体は動かせない様子。
「……ふう」
危なかった、やっと効いたか。
今回の俺が建てた作戦は。
毒殺だ。




