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第108話:魔物討伐・前半


――魔物の住処近くの安全地帯・夜



「寝てから2時間経過、昼間に順調に狩りを終えて空腹ではなく、寝息を立てているから嘘寝ではないと思料」


 ルアを伝令に出し、夕暮れに出発したテドンさん達と安全地帯にて合流地点に馬車に置き、巣で寝ている魔物を確認した後、再びメンバーと合流する。


「さて、現時刻より討伐開始、シダのメンバーはここで攻撃準備を願います」


 と指示すると3人の弓兵は弓をつがえて、サラットさんはバフ・デバフ魔法の準備をする。


 俺達前衛中衛4人はゆっくりと歩を進め、中衛ポイントで俺とテックは歩を止める。


「ルア、ホヴァン」


 ルアとホヴァンが無言で頷くと、俺とテックと別れて、そのまま2人が歩いていく。


 ホヴァンとルアが持っているもの。



 これは、サラットさんが特注してくれた返し刃のついた短剣だ。



 大丈夫だ、何回も確認した、寝ている兆候も全て報告書のとおりだ。


 2人はゆっくりと巣穴に近づいていく。


「…………」


 この時間で巣穴に潜りこみ寝るのは過去の討伐報告書でもそうだったし、この三日間の斥候結果でも変わらなかった。


 巣穴以外だと寝たふりをして獲物を待つ狩猟法を含めたルーティーン、日常行動に付随した異常行動、全てなかった。



 だがそれは今回も寝ているという保証にはならない。



 繰り返すとおり生物は気まぐれだ、今日は時間と場所を変えて巣穴で狩りをするのかもしない、夜更かしだってするかもしれない。


 気配を消しての足運びは流石の2人だったが、巣穴は相手の絶対的テリトリー、この万が一があった場合、絶体絶命だ、嘘寝だった場合少なくともどちらかが死ぬ。


(いや、考えるな、後を託したんだ)


 巣穴に入り、ゆっくり気配を伺いながら歩いて近づく。


 本番は一回だけだ。


 攻撃失敗した場合、若しくはルア、ホヴァンが食われた場合は撤退指示を出す、その為に俺は巣穴の前に陣取り気配をずっと伺っている。


 少しづつ歩き、もう少しで射程距離に入る、、、、。


 2人は合わせて射程距離に入り。



 一斉に飛び上がり、、、。



 タイミングを合わせて、短剣を、、。




 一度に瞼の隙間から両目に突き刺した!



「……グァアアァァァァ!!!」


 ホヴァンとルアは即座に撤退した後、一瞬遅れて凄まじい咆哮が響く。


「よし!!」


 興奮して思わず声が出た。


 ホヴァンとルアが巣穴から出ると同時に、魔物が出てくる。


「後衛!!」


 という俺の叫び声で、シダの3人が一斉に矢を放つ!


「ッ! グゥ!!」


 視界が奪われても攻撃されたことは分かり、応戦するために巣穴から出たものの、矢の攻撃を受けて、驚いて巣穴に半身を出す形で戻る。


「「「はっ! はっ!」」」


 とシダのメンバーは矢が絶えないようにタイミングを少しずらしながらひたすら打ち続ける。


 横でバフをかけているとはいえ、防御力特化の魔物相手に大したダメージは与えられない、だが視界を失われた状態だと、次に何か来るかもしれないという恐怖心を引き起こし、煩わしいことには変わりはない。


 だがクラスCともなれば対応力もある。


 弓での攻撃に魔物が徐々に慣れてきて体を出し始めたところで。


「こっちだ魔物!!」


 とホヴァンが大きな声を出して剣で足を攻撃、防御力特化であるがクラスDの近接攻撃を受ければ足を痛そうに上げる。


「こっちこっち!!」


 と今度は反対方向ではルアが大声を出しておびき寄せて槍の三連撃。


「ッ!! オオオォォ!!」


 反撃とばかりに耳を塞ぎたくなるほどの凄まじい咆哮が木霊する。


 それにひるまず交互に挑発を繰り返すルアとホヴァン、魔物は攻撃をするたびに顔を歪ませてる。


 固いとはいえ、ホヴァンもルアもクラスD上位の戦闘力を持つ、全く効かない訳じゃない。


 だが、当然に。


「テック! 俺と来い!!」


「はい!!」


 コンマ数秒でも気を抜けば死ぬ状況は疲労もすさまじい、俺とテックは、まずホヴァンがおびき寄せている隙にルアに駆け寄る。


 ルアは臨戦態勢を解除しないまま、膝を地面につき、身体を休ませる体勢を取る。


「触るよ!!」


 とテックの言葉と共に腰に両手を添える形で回復魔法を付与する。


 テックには今回の討伐に向けて回復魔法修行の徹底をしてもらった。


 とはいえ俺自身魔法については専門外で、自己申告以外把握する手段がなく、修道院に確認したいが信徒たちの情報は教えてもらえないのだ、だが。


「わお! 相変わらず凄い、体が軽くなった!」


 そう、実際に何回かルアやホヴァンにかけてもらったのだが効果あり、ルアは戦い始めた時と同様に、そのまま再び前衛に戻り。


「はぁ!」


 と槍で足元を攻撃、そして。


「テック! 頼む!」


 俺達が指定したポイントで今度はホヴァンが待機し、同じように腰に手を当てて回復魔法を施す。


「おお! やっぱすげーな! よっしゃ!!」


 とホヴァンも再び前衛に戻る。


「次は後衛だ!」


 と走り、今度はシダの弓兵に回復魔法を施す。


 疲労。


 世界の頂点を取るような運動能力を持つ人物にも例外なく発生し、パフォーマンスが落ちる。


 だからこそ、パフォーマンスを維持しできる支援系の魔法使いの需要がなぜ高いか理解していただけたと思う。だからこそ回復魔法は使えるだけで、国内最高峰のノバルティス冒険者学校と言えど即合格、特別枠に入れるのだ。


 俺達中衛は、前衛を中心に回復魔法をかけ続ける生命線だ。


 戦闘中の俺の任務はテックの護衛、回復魔法をかけている時は無防備だから、魔物の攻撃が来ないように見張る。


 そして現時点、戦闘開始から今までパフォーマンスは全く落ちていない。


 ルアとホヴァンの前衛、そしてシダの後衛は素晴らしい連携を発揮し、魔物はずっと苦戦している。


 よってこの時点では作戦は順調ともいえる。


「…………」


 だが、、、。





 魔物のパフォーマンスも落ちていない。





 俺は少し焦り始めていた。




 そしてその焦りは、現実の形となって表れる。




(矢の勢いが弱くなってきてる!)




 兆候は最初に後衛に現れ始めた。




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