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第100話:意固地で融通が利かなくて不器用で・前篇



「そっかー、テックも苦労していたんだ」


 と応接スペースで料理に舌鼓を打ちながらルアは答えてくれる。


 ちなみに俺のことについては詳細を伏せた上でルアと連絡を取ってくれたらしく、なら一緒に飯食べたいということになり、サプライズ演出をすることになったそうな。


「でもルアは凄いよ、ヒュレンにスカウトされるなんて」


「それについては、まあ、私の力じゃないからね、今はカテゴリー5、つまり最下層のクランなんだよね」


「ヒュレンって、どんな感じにクランを運営しているの?」


 ルアによると、ルーテがクラン長を務めるヒュレンをカテゴリー1の頂点として位置づけ、最下層はカテゴリー5のピラミッド式運営、ヒュレンのクラン旗の使用が認めらず、最下層のクラン旗を強制的に使われるそうな。


 んでカテゴリー5は正直ヒュレンとは名ばかりらしく、滅茶苦茶貧乏で、冒険だけだと食べていけない、だからアルバイトしている子も多いそうな。


「だから私はまずはカテゴリー4のクランに昇格するために頑張らないとって感じだね、テックは?」


「俺は公共クエストを頑張ってるよ、ギリアンさんには凄いお世話になってる」


「おお~、ギリアンさん、そうなんですか?」


「うむ、とにかく真面目にこなしていてな、冒険課の人達も褒めていたし、剣の腕前も良い、いずれはクラスDになると思うぞ」


「……へぇ」


「先日も、クラスCの魔物と遭遇したが、ちゃんと護衛対象を守り、出現時には共に冷静に逃げることができたぞ」


「クラスC? ひょっとしてトカゲ型ですか?」


「ああ、流石に知っているのか」


「…………」


「? さっきからどうした?」


「いえ、なんでも、テックは、今は何処に住んでいるの?」


「これもギリアンさんの厚意で、ここにずっと泊まらせてもらっているんだ」


「ええ~! 私の時はそんな事言ってくれなかったのに!」


「そ、それは、ルアが女の子だからだよ!」


 と同期の会話に花が咲く。


「素晴らしきは若さよ(*-ω-)ウンウン♪」 ←ギリアン


「……ギリアンさん親父臭い」


「うるさいよ、それでなルアよ、家賃を免除する代わりにテックに家事をやってくれているんだが」


「!!!」


 ルアは瞬時に察する。


「テック! 今度ごはん作って!」


「え?」


「ごはん!」


 と目をキラキラさせている。


 ああ、そうだ、思い出した、クラン組んでいた時に、料理を振舞う機会があって滅茶苦茶気に入ってくれていたんだよな。


「「ワクワク♬」」


「ギ、ギリアンさんまで、あ、あー、じゃあ明日の夕食作ってあげるよ、えっと、買い出しにもいかないと」


「よし! その時は一緒に行こうね!! 私も今日はここに泊まる!!」


「ええー!! 駄目だろ!! 何言ってんだよ!!」


 と二人は再び会話に花が咲く。


「素晴らしきは若さよ(*-ω-)ウンウン♪」 ←ギリアン



――翌日・ゼカナ表通り



「お待たせ~」


 と言って待ち合わせ場所にルアが現れた。


 今日は夕飯の買い出しの日、ルアはヒュレンの事務所から来るという事で、ここで待ち合わせとなった。


「ああ、いま、きたところだよ」


 う、ちょっと今の言葉、なんかドキドキした。


「って、俺と2人で大丈夫? その、か、彼氏とか聞いたら嫌な思いをするんじゃ」


「? そんなのいないよ、モテないの知ってるでしょ?」


「い、いや、そうかな、まあ、その、じゃあ、えっと、早速買い物に行こうか! 何か食べたいものある?」


 そんな俺の言葉にルアはにっこりと微笑むと。



「肉、肉汁滴る肉、出来れば強い系の魔物の肉、それを思いっきり食べたい」



「…………」


 そうだ、思い出した、アレはクランを組んでいた時だ。


 宿泊を伴う訓練で魔物をクラスFの魔物を狩った時「この魔物は血が美味い」とかで思いっきり絞って血だらけになりながら飲んでいて。



――「まじかよ」

――「可愛いのに」

――「絶対キスとかできねぇ」



 そんな感じで、俺以外の男クランメンバーが全員ドン引きしてたっけ。


 だけど俺は、その姿を見て……。


「テック?」


「あ、ああ! わかったよ、ギリアンさんからお金貰っているから!」


「へぇ、ギリアンさん貧乏なのに」


「貧乏というより、家計は俺がやってる感じ……」


「なるほど、凄い想像つく、というか私の時と一緒じゃん」


「あ、大家さんもそんなこと言ってた」


 と言いながら、表通りを歩く。


「さてさて、テック、肉屋なんだけど、私も出すからちょっと表通りのいい肉屋を」


「いや、そこもいいけど」



――裏通り



 人通りが多いメインストリートである表通りに出す事がステータスとは繰り返し述べたが、裏通りに出す店がレベルが低いかというとそうではない。


「裏通りはね人通りも少なくて、売り上げは表通りの店には及ばないけど、割と個性が強い店があってさ、確かギリアンさんのお気に入りの喫茶店もここにあるんだよ」


「へぇ、しかしギリアンさんもそうだけど、男って隠れ家的なところ本当に大好きだよね」


「まあね、ただ、あのギルドは、正直商売する気があるとは思えないんだけど」


「うん、まあ、道楽で冒険者やってる人だからね、でもそういうと怒るんだよね」


「でも優しくて面倒見がいい人だよね」


「私も干されてた時、助けてもらったなぁ」


 そんな会話をしながら歩を進めると目的の肉屋に辿り着く。


 ひっそりとした店構えだが……。


「行列が出来てる」


 とはルア。


「うん、ここの大将は若いんだけど肉の目利きが一流で、自分の気に入った肉しか競り落とさないから、どんな商品が並んでいるかはその日次第なんだよ」


「職人さんなんだね、1人でやってるんだ、人を雇えばもっと裁けると思うんだけど」


「保存方法にもこだわっているみたいで肉を他人に触らせたくないんだって、だから裏通りが自分に向いているとか言ってたよ」


「あのさ、テックはその話を何処で仕入れるの?」


「何処でって、本人だけど……」


「……テックってそういうところ凄いよね、全然人見知りしないというか」


「そう?」


 と話しながら順番が来た。


「やあ、テックさんじゃないか、っと、おや、へぇ」


 と隣にいるルアを見て意味ありげに微笑む。


「な、なんですか」


「いやいや、なんでも、野暮なことは聞きませんよ、今日はいつもの?」


「お願いします、若大将の目利きは信用しているからね」


「え? いつものって、おすすめの肉があるの? でも確か……」


「いいや、予算だけ大将に伝えてお任せって意味、外れ無しだよ、そんな訳で予算は銀貨1枚で」


「あ、私も出すので追加銀貨2枚でお任せで~」


 俺達の言葉にふふっと、大将は微笑む。


「毎度あり、ま、お祝いってことで少しおまけしておいたよ」


「い、いや、違うから、とと、友達……」


「はいはい、どうぞ仲良くお召し上がりください」


 と言いつつ肉屋を後にした。



――ギルド・ジョーギリアン



「「ガツガツガツ!!」」


 2人は夢中になってかき込んでいる。



「どうして! どうしてテックが焼くと美味しいの!?」←ギリアン

「実はテックってグルメ! 美味しいところ一杯知ってて! もう美味しい!!」←ルア

「うん! 料理の才能! まじでクラスS!!」←ギリアン

「付け合わせの野菜がまた美味い!」←ルア


 と俺が作った料理を夢中になって2人はかき込んでいる。


「そんな大したことはしてないですよ、少しの手間で変わるんだけですから」



「「その少し手間が凄いの!」」



 とモグモグと食べながら辺りを見渡すルア。


「というかよく見たら、ギルド内もめっちゃ綺麗になっていますね、水回りもピカピカ」


「それがさ、テックさ、家事万能なんだよ、マジで凄い」


「はーー、いや、学校時代から真面目で几帳面とか思っていたけど、ねえ、テック」


「な、なに?」


 というとルアは目を潤ませて顔を紅潮させながら。


「私、貴方の(作った料理の)事が忘れられないの」


 上目づかいでのたまった。


「食欲で言われてもね、というか口周りちゃんと拭きなよ、もう」


「なら嫁に来い」


「ええーーーー!!」


 そんな2人を「(・∀・)ニヤニヤ」しながら見てるギリアン。


 そんなほのぼのしている風景だったが……。


「あ、あのー、お二方、いいですか?」


「ん? どうした?」



 ゴゴゴゴゴゴ!!! ←ホヴァン



「買い物途中から後をつけてきて合流してきた、この方は?」


 そう指摘されて、ホヴァンはガシッと握手をする。


「はじめましてホヴァンと言います。一応言っておくけど、ルアちゃんは、俺の恋人(になるかもしれない可能性が微粒子レベルで存在する)だからな」


「いだだ!! ホヴァンさんって!! ギリアンさんの友人の!! あ、あの!? 彼氏なんですか!?」


「あーはいはい、無視してください、ただルアの追っかけだからこの人」←ギリアン





「はぁ、相変わらず滅茶苦茶うまかった」←ギリアン


「はぁ、久々目いっぱい食べた~!」←ルア


「けっ! 料理だけで落ちるとかルアちゃんそんな軽い女じゃない、まあ美味かったのは認めてやろう」←ホヴァン


「ど、どうも」


「そもそもな、家事ができる男というのは」


 と何やらホヴァンの説教が始まった、こ、この人はなんなんだろうか、ギリアンさんの友人で同じ戦闘職の冒険者ってことは、知っているけど、ギリアンさんの友達だから変わった人なのかな。



 その説教を受けているテックを意味ありげな表情で見つめるルア。



 隙を見た感じでルアはカグツチに話しかける。



「ギリアンさん」


「ん? どうした?」


「少し2人だけで話、良いですか? いつもの屋上で」





 前に述べたが、ギルドの倉庫は一部が改造されて屋上にテラスが設けられている。


 屋上で2人で移動するとルアが話しかけてくる。


「ギリアンさん、正直に聞きたいです、テックの評価はどうですか?」


 とそんなことを聞いてきた。


「……正直な評価?」


 なんだろう、わざわざ2人だけになって聞いてくることなのか、別に今じゃなくてもいいような気がするけど。


 うーん、でも元クランメンバーなんだよな、しかもルアからスカウトしたと聞いたし、となるとそっちの方が知っているじゃないかと思うが、今の評価を聞きたいのかな。


「さっき言ったとおりだぞ、まず出身の地方都市で剣の腕が認められたのは嘘じゃないだろう。現在戦闘職としての能力はクラスEの下位程度だが、まだ伸びる。ただ融通が利かないなぁ思うが、大した欠点でもないし、繰り返すが頑張ればクラスDにはなれるだろう」


 たかが公共クエスト、されど公共クエスト、塩漬けとか散々言われているが、なんのコネの無い冒険者がクエストをこなせる唯一の手段でもある。


 クエストには違いないからずっと続けていくとクラスも上がる。そして冒険者としての信用も積み重なってきて他のギルドからの依頼があったり食えるようになる、実はホヴァンはその例だったりする。


 ホヴァンも地方都市出身でなんのコネも無かったんだけど、テックみたいに冒険者で身を立てたいって気持ちが強く、信頼と実績を重ねて今では戦闘職としてはクラスD上位にまでなった。


 現在ホヴァンはドードだけじゃない、ハダのクエストも受注して楽しんでいる。


 雇う側のギルドだって、公共をクエストとはいえ真面目に積み重ねていけば「コイツやる気ある」「経験はあるから」と信頼を得て契約してくれたりするのだ。


「んで融通が利かないとは言ったがテックは何より真面目だ。だから都市役所の人の信用も少しづつ勝ち得ていて、美味しい公共クエストを斡旋してくれたりしている。都市役所側からすれば、公共クエストを真面目にたくさんこなしてくれる冒険者は得難い存在だ」


「…………」


 俺のそんな評価にルアは無言で驚いた顔をしていた。


「な、なんだよ、その顔、もっと評価が低いとか思ってた? 大人しい奴だけど戦闘職としての適性はあると思うぞ」


「いいえ、そういう意味じゃないです」


「じゃあ、どんな意味?」


「いえ「クラスSでも気づかないこと」ってあるんだなって、驚いたんです」


「……本当に俺に遠慮なくなったね」


「だからいいことですってば、うーーん」


 と悩むルア、そういえば、何だろう、その気づかないことが2人だけで話した理由なんだろうか。


 ルアはかなり悩んだ後に意を決したように口を開く。


「入学当時、私がテックをクランに誘ったって話は知ってますよね?」


「ああ、そういえばテックは「ルアは自分のことを買ってくれていた感じ」と言っていたぞ」


「はい、そのとおりです、バカな副クラン長が私の反対押し切ってクビにしてしまったんですけどね。ホント、口先だけの奴でした」


 と怒っている、ふむ、この様子を見ると本当にテックを買っていたのか。



 でも、その買い方に少し違和感があったのも事実だった。



「ルア、お前が言いたいのは剣術以外に買っていたものがあるということか?」


「はい、もちろん剣士としての腕も人柄も買っていましたが、それと同じぐらい買っていた事があって、偶然だけど見たんですよ」


 とルアの見た事、それを俺に話してくれた。


 その内容は……。



「……え? まじ?」



 と割と衝撃的な内容だった。


「うーーーーん、テックとクランを組んでいた時に、お互いの身の上を少し話した事もあって、だから尚更なんでかなって思うんですよね」


「……なるほど、これは確かに迂闊には言えないことだし、言ってはいけない事なのだろうな」


「ええ、だから相談をしようと思ったんですけど」



「なら確認をしなければならない、明日に本人に問いただす」



「え!? でも、それは!!」


「分かってる、テックのトライアウト資料ですら書いていなかったからな、決意は相当強いだろうよ」


「え!? あの時、女の胸と尻と足以外見ていたんですか!?」


「……見てたよ」


 Σ( ̄□ ̄|||) ←ルア


 こ、こいつは……。


「あのさ」


「なんでしょう?」


「もう俺に憧れてるとかないでしょ?」


「んーーー、それっていい意味だと思いますけど」


「いい意味って、なら、尊敬する冒険者は?」


「クォイラ嬢、ジウノアさんに、ファルちゃんです」


「俺だけいない!! なんか凄いあいつらに影響されているなって思ったら!!」


「クォイラ嬢は、支配者階級なのに全然偉ぶらないし、バリキャリって感じが大好きで、ジウノアさんは面倒見のいい姉御肌で、ファルちゃんは滅茶苦茶頭いいし、全員良い人で、友達になったんですよ」


「…………」


 女って凄いよね。


「あのギリアンさん」


「……なんだよ」


「テックと話すとき、私も同席したいです」


「…………」


 俺はすぐには答えない。


「駄目なんですか?」


「駄目っていうか、気が進まない」


「気が進まないって、どうして?」



「理由については多分だけど見当つくから」



「え?」


「んで、その理由が俺の睨んだとおりなら「女のお前」を同席させるのは気が進まない」


「なんですかそれ、ギリアンさんも私に遠慮なくなっていますよね」


「それはお互い様だ、けっけっけ」


「…………」


「…………」


「「シュシュシュシュシュ!!」」


 とお互いに拳を交えるのであった。


 結局、ルアの冒険者としての向上心を認める形で許可を出したのであった。



――1日後・ギルド屋上



【ほれほれ~、これがお望みの資料だよん】


 と魔法回線経由でファルから送られてきた資料を読む。


「流石に早いな……ふむ、これでルアの情報、裏付け取れたな」


【しかし男ってのは面倒だね~】


「気持ちはわかるがな、分かった、サンクス」


【はいはい~】


 とファルとの通信を終える。


 俺はギルドに戻ると、昨日の話のとおりギルドに来たルアとテックが何やら話し込んでいた。


「テック、いいか? 大事な話がある」


「え?」


 いきなりの真剣な様子に戸惑うテックを余所に、俺は応接スペースに座るように促すとテックの対面に座り、ルアは俺の横に座る。


「……えっと、その」


 不穏な空気だと思ったのか、しどろもどろになるが。


「まず、すまない、謝っておく」


 と俺は頭を下げて謝罪する。


「え? え?」


 という戸惑いの言葉は。


「っ! それ!」


 俺が提示した資料で顔が強張り、話の内容を理解する。


「これはお前の冒険者人生に関わる大事な事だ、だから色々と調べさせてもらった」


「…………」


 テックは、覚悟を決めた顔をする。




「結論から言う、お前、回復魔法使いだな?」




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