第1話:クラスS冒険者、それは次元を超えし者
――ルザアット公国
公爵を頂点に貴族が統治する世界の強国が一つ。
その公国のメインストリートは観衆で溢れかえっていた。
その大通りを主役を乗せた大きな馬車が通り、大観衆が沸き返る。
馬車の上からは大観衆の声援にこたえる冒険者がいた。
冒険者。
ギルドからのクエストを受注して、クリアして報酬を得る者たちの総称。
世界中にいる冒険者にとっての最高の栄誉、それは。
クラスSの冒険者になる事だ。
クラスS。
――次元を超えし者。
そう称えられる、世界で僅か9人しか与えられていない最高位冒険者。
今声援にこたえる彼は、その中の1人であり、ルザアット王国の英雄だ。
クラスS冒険者は、全てを手に入れる。
「数々の功績が認められて、ついに公爵が子爵に叙するってさ!」
「公爵閣下のお気に入りって話だからな!」
地位と、、、。
「ついに公国勲一等褒章だとよ!」
「歴代でたった13人しか叙勲されていない、国民最高の勲章じゃないか!」
名誉と、、、、。
「あんな美人の仲間に囲まれて羨ましい限りだ、あの女の仲間、全員自分の女にしているんだとよ」
「それだけじゃないぜ、数々の国の美女と浮名を流してるってさ!」
女と、、、、。
「しかも、公国の資産ランキング第17位、外国にも含めて豪邸を15も持っているってさ」
「年収も庶民の数千倍か、羨ましい限りだ!」
金、、、、、。
男として生を受けたら望むもの、その全てを手に入れる者。
そう、この物語は、、、。
――公国・裏通り
「いい加減溜まった家賃払えや!! 何カ月待ってると思ってんだ!!」
「大家さん、もうちょっと待ってて! 収入のアテがあるの!!」
「どうせ馬だろ? だから馬は辞めろって何度も言ってるだろがい!」
「大丈夫! 馬じゃないよ! 俺こう見えてもギルド経営者としてはヘボだけど凄腕の冒険者で」
「やかましいわ! この万年クラスD冒険者で何をとち狂ったのかギルド経営にまで手を出して!!」
「俺ここ追い出されたら行くところないんだよーー!!」
そう、これは、そんなクラスD冒険者、ガグツチ・ミナトが主人公の物語。
:用語解説:
・ルザアット公国・
公爵を頂点に貴族が統治する国。
主人公であるガクツチ・ミナトは、公国の主要都市の一つの裏通りに冒険者ギルドを構えている。